研究課題/領域番号 |
24560274
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
押野谷 康雄 東海大学, 工学部, 教授 (70233533)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 極薄鋼板 / エッジ / 電磁吸引力 / 磁界解析 / 非接触把持 / 電磁石 / 最適配置 / 高速搬送 |
研究概要 |
1.極薄鋼板エッジ部に対する電磁吸引力印加時の理論モデルの構築と極薄鋼板の動的挙動の解明 極薄鋼板はエッジ部に電磁力を印加させた状態で浮上・搬送させることを目的としている。四辺自由端鋼板の寸法や材質が明らかな場合,たわみなどは理論的に決定できる。しかしエッジ部が電磁力によって拘束された理論モデルの構築には,エッジ部の境界条件を磁場解析によって明らかにする必要がある。その解析には磁場解析ソフトJMAGを用いる。さらに,極薄鋼板を搬送する際,走行状態では外乱(高速搬送時のフレームからの振動,空気抵抗など)の影響から,剛体運動,弾性振動が発生する。そこで本年度は境界条件を考慮した理論モデルの構築と走行を模擬した動的挙動の解明を行った。 2. エッジ部非接触把持機構の設計・製作 (1)エッジ部把持機構 現在の準備段階では非接触把持する機構は固定式であるため,設置位置による振動抑制,浮上安定性の向上に関する詳細な検討ができない。そこでエッジ部に電磁力を印加する電磁石・センサユニットをエッジ部 x ,y方向の任意の位置に移動可能とする機構を製作した。(2)制御系 上記ユニットの位置決め及び電磁石制御電圧のフィードバック制御はレーザセンサ,電磁石,AD/DA変換器,DSP,制御用パソコンを使用した。(3)面内振動の検出 エッジ部把持による極薄鋼板面内方向の制御性能を検討するために,その変位を多点検出するためレーザ式センサを設置した。 3.浮上実験の実施 本年度は,板厚0.1~0.3mmの範囲の鋼板に対して基礎的な把持・浮上実験を実施しデータを収集,評価した。浮上用・エッジ用電磁石の制御電圧は最適制御理論によって導出した。外乱として浮上用以外の電磁石からの非接触な力や,電源ノイズ等を想定した電気的な外乱を準備,入力した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では板厚を0.1~0.3mmの範囲としているが0.1 mmのような極めて薄い鋼板では実験的検討が計画通り進まない可能性があった。しかし0.3mmの薄鋼板から検討を開始し,極薄鋼板へ段階的に移行していくことで計画を進め,実験困難な板厚の領域ではまず数値計算によって制御効果を推定・評価し,板厚0.18mmまでの極薄鋼板にて検討を行うことができた。よって、当初の計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1.浮上用電磁石とエッジ部用電磁石配置の最適化 前年度の理論モデル構築と動的挙動の解析結果を踏まえ,すべての電磁石(浮上、エッジ部)の位置と個数に関する最適化を行う。最適化には遺伝的アルゴリズムを使用し,動的応答の数値解析を繰り返すことで,電磁石の最適配置,個数を探索する。また,極薄鋼板の領域では対象が軽くなるため,エッジ部の非接触把持力のみによって鋼板そのものの支持が可能となることが予想される。そこで,浮上用とエッジ部用吸引力配分の最適化を行い,0.1 mm程度の板厚では浮上用電磁石を使用せず,エッジ部吸引力のみにて把持・浮上する方法を明らかにする。 2.制御対象のパラメータ変化に対する頑強なコントローラの設計 実機工程においては厚さなどの違う鋼板を搬送することが考えられ,制御対象である極薄鋼板の厚さ,剛性などのパラメータや境界条件の変動に対してロバストな制御理論の適用が求められる。厚さ0.3 mmの薄鋼板に対して制御効果を確認しているμ-シンセシスやスライディングモード制御理論を本制御システムに適用し,ロバスト性に関して実験的に検証する。 3.高速搬送実験の実施 実機工程における高速搬送開始時と停止時を想定した加減速状態での振動抑制性能に関して実験的検討を行い,磁気浮上極薄鋼板に対する非接触把持機構の有効性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
極薄鋼板の振動モードを詳細に検討するため、インパルスハンマを新規に購入する予定である。また、平成24年度から平成25年度へ助成金の繰越が発生したが、これは消耗品が当初の計画ほど支出しないで済んだためである。
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