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2013 年度 実施状況報告書

非線形制御系の安全性確保に向けた新しい解析的検証手法の開発とその展開

研究課題

研究課題/領域番号 24560276
研究機関日本大学

研究代表者

堀内 伸一郎  日本大学, 理工学部, 教授 (30181522)

キーワード機械力学・制御 / 制御系検証 / 車両運動制御
研究概要

本研究の目的は,制御系の性能保証のための新しい解析的手法を開発し,実際的な非線形制御系への適用例からその有用性を評価することである.そのため,新たなアプローチとして上限と加減をもつ区間の演算である区間解析を制御系の性能補償に適用し,制御系の性能が補償できるシステムパラメタの範囲を区間解析の逆問題として求めることを検討した.逆問題は順問題を繰り返し解くことにより解くことができることに着目し,bisection法を応用したアルゴリズムを開発した.
昨年度までの検討で区間解析の逆問題を解くアルゴリズムの開発およびアルゴリズムの性能を検証するため,例題的な簡単な線形制御系の性能が補償できるパラメタの範囲を求めるための具体的な適用を試みた.その結果,開発したアルゴリズムは計算効率の面で問題があり,パラメタ数が多くなると指数関数的に計算時間が長くなるという問題があることがわかり,変動パラメタの数が多くなる実際的な複雑システムへの適用は困難であることが判明した.また,リアプノフ関数によって安定性を保証できるパラメタの範囲を求めることも試みたが,得られた結果は非常の保守的で実際的な応用には適さないことがわかった.
そこで,新たな方法として非線形システムの安定な原点から出発する逆時間トラジェクトリを最大化することにより,順時間システムが利用可能範囲の入力を用いて安定な原点に復帰できる領域を性能保証の指標とする手法を考案した.この範囲外の点からはいかなる入力を用いても安定な原点に復帰できないので,このようなグリッド上の点で囲まれた領域は制御系の性能を補償できる指標となりうる.
以上の研究成果の一端は,1件の国際学会発表として発表した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

「研究実績の概要」で述べたように,考案した区間解析の逆解法アルゴリズムは計算効率の面で問題があることがわかったため,新たな方法として非線形システムの安定な原点から出発する「逆時間トラジェクトリ」を最大化することにより,順時間システムが利用可能範囲の入力を用いて安定な原点に復帰できる領域を求める手法を考案した.
この方法は非線形システムの安定な原点から放射状のグリッドを作成し,この放射状グリッド上で原点から到達できる逆時間システムの距離を最大化するような制御入力を求めるものである.各グリッド上で求めた最大距離の点を連ねた範囲は許容された入力を用いて安定な原点に復帰できる領域の境界線を示す.したがって.システムが外乱等によってこの境界線の外まで乱されると,どのように入力を制御してもシステムを安定な平衡状態に復帰させる事はできない.より大きな領域は安定な平衡状態に戻すことのできる範囲が広いことを意味するので,この領域の大きさはシステムの制御性能を評価する1つの指標と見なす事ができる.
この方法を車両運動制御系の評価に用い,前輪アクティブ操舵,前後輪アクティブ操舵,各輪のトルク制御など各種の制御方式の性能を比較した.その結果,前輪アクティブ制御や前後輪アクティブ制御は非線形領域では制御効果が低く,最も制御効果が高いのは各輪のトルク制御と前輪アクティブ制御の組み合わせであることが明らかとなった.
また,この方法は制御系の性能(制御アルゴリズムの性能)と制御方式(舵角,駆動・制動トルクなどの中からどの入力を用いて制御するか)を区別して評価できることが大きな特徴である.

今後の研究の推進方策

「現在までの達成度」で述べたように「逆時間トラジェクトリ」にもとづく制御可能領域の計算法が確立した.この方法は状態平面の原点を始点とする放射状グリッド上で,システムの逆時間応答の距離を最大化するという一種の最適化問題であり,非常に広い応用範囲をもつと考えられる,
そこで,車両運動制御への更なる応用例として,制御方式だけではなく各種の制御アルゴリズムの性能を比較する予定である.従来の評価法では制御方式と制御アルゴリズムの性能を区別して取り扱うことはできなかった.どのような制御アルゴリズムを用いても,制御方式の限界を超えることはあできないので,提案する手法によって制御方式の限界に対する制御アルゴリズムの制御可能領域を比較することにより,各種制御アルゴリズムの性能を統一的に評価できる.
具体的には後輪アクティブ操舵でも,前輪舵角比例後輪操舵,ヨーレイト比例後輪操舵,横すべり角ゼロ化制御など各種の制御アルゴリズムが提案されており,各輪のトルク制御についても同様に各種のアルゴリズムが提案されている.これらのアルゴリズムを解析的・統一的に評価し,制御方式の限界と制御アルゴリズムの性能の関係を明らかにすることが今後の研究方針である.

次年度の研究費の使用計画

「現在までの達成度」で述べたように,区間解析による制御系検証には問題点があったため,逆時間トラジェクトリによる制御可能領域を求めることによって制御系を検証する方法を用いることにした.このため,当初の予定より達成度が遅れており,そのため設備備品費等に未使用分があった.
物品費として,逆時間トラジェクトリを計算するための高性能ワークステーション,学会発表用のノートパソコン,データ整理のためのグラフ作成ソフト,車両運動シミュレーション用のCarMakerの購入費用を計上する,
旅費として.学会発表用の海外出張旅費および国内出張旅費,欧米での研究動向調査のための海外出張旅費を計上する.
人件費として,ネイティブによる英文論文添削料,その他として学会論文投稿料を計上する.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 自動車における自動運転技術の動向2013

    • 著者名/発表者名
      堀内伸一郎
    • 雑誌名

      防衛技術ジャーナル

      巻: 386号 ページ: 4-13

  • [学会発表] Controllability Region Analysis For Simplified Vehicle Dynamics Based on Trajectory Reversing Approach2013

    • 著者名/発表者名
      Shinichiro Horiuchi
    • 学会等名
      23rd International Symposium on Dynamics of Vehicles on Roads and on Tracks
    • 発表場所
      Quindao,China
    • 年月日
      20130819-20130823

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公開日: 2015-05-28  

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