本研究の目的は,制御系の性能保証のための新しい解析的手法を開発し,実用的な非線形制御系への適用例からその有用性を評価することである.平成27年度はシステムの可制御領域によって制御系の性能を保証できる範囲を特定する手法を開発した.可制御領域の外部からはどのような入力を用いても安定な平衡点に戻ることはできず,可制御領域内であればたとえシステムが不安定な状態でも最適入力を用いることによって安定な平衡点に戻ることができるという意味で,可制御領域の大きさが制御系の性能を保証できる能力を示すことになる. 非線形制御系の可制御領域を求める数値計算手法として,安定な平衡点から出発する逆時間トラジェクトリの終端値ノルムを最大化する非線形最適制御に基づく手法を考案し,その実用性・有効性を検討した. この手法を用いて,従来は明確に区別されていなかった制御方式(どの入力チャンネルを制御に用いるか)と制御アルゴリズム(与えられた入力チャンネルの制御入力をどのように決定するか)の制御性能の違いを理論的に明らかにした.具体的には車両運動制御系を対象とし,前輪舵角入力に加えて後輪舵角を入力として用いる制御方式,前輪舵角に加えて左右輪の前後力差によるモーメントを入力として用いる方式などの各種制御方式の理論的な制御限界を求め,それぞれの制御方式が車両運動性能の向上に及ぼす影響を検証した.
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