研究課題/領域番号 |
24560277
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
古屋 治 東京都市大学, 工学部, 准教授 (00290726)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 耐震 / 機器・配管 / 地震被害 / 天吊り形式 / 解析 / 実験 |
研究概要 |
東日本大震災では、多くの構造減衰が低い鉄骨構造で建造された産業施設において、東北地方太平洋沖地震の特徴の一つである長継続時間での地震入力から天吊り形式の機器・配管の被害が多発し産業施設の機能が停止する事態を生じた。このため、天吊り形式の機器・配管被害の被害様式の分類と発生メカニズムの解明、および、その耐震健全性の向上のための在り方を明らかにすることは産業施設の生産等施設機能の継続性や耐震健全性を担保するうえで極めて重要かつ急務となっている。 本研究では、次のような7つのステップで研究を展開し、最終的に、天吊り形式の機器・配管の耐震健全性向上のための在り方を迅速に明らかにすることを目的とする。 1.現状の天吊り形式の機器・配管の支持方法の調査と整理、2.東日本大震災での被害様式の分類、3.現状の耐震性および被害発生メカニズムの解析的・実験的検討、4.耐震補強・制振構造化等レトロフィットを含む耐震性向上手法の方向についての検討、5.実機レベル試験体の設計・製作、6.要素試験と振動台試験による性能評価、7.天吊り形式の機器・配管の耐震性向上手法の在り方の明示。 研究初年度は、1~3の実施を計画し、まず、天吊り形式の機器・配管について現状の規格/基準、取り付け方法や支持方法等の調査・整理を進め、次に、東日本大震災での被害様式を分類した。その後、分類された被害様式に即して評価条件を設定しメカニズムを解明するため、完全弾塑性型履歴復元力特性、および、バイリニア型復元力特性モデルを有する解析モデルを検討し、時刻歴応答解析、および、周波数応答解析から被災状況のシミュレーションを実施した。また、実験的側面として、1/4縮尺モデルにて、天吊り型機器・配管耐震性評価試験体を設計・製作し、油圧サーボアクチュエータを用いた振動加振装置により、被害メカニズム解明のための振動実験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度は、天吊り形式の機器・配管における規格/基準等の調査・整理、被害様式の分類を進め、次に、被害メカニズムを解明することを主目的として、時刻歴応答解析、および、周波数応答解析からシミュレーションを実施した。その結果を踏まえて、1/4縮尺モデルでの天吊り型機器・配管耐震性評価試験体を設計・製作したが、本試験体の設計の検討に時間を要したため、試験計画にやや遅れが生じた。しかしながら、製作した試験体は、今後の研究の展開に大きく貢献し得るものとなった。
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今後の研究の推進方策 |
研究の2年目では、天吊り形式の機器・配管の耐震性向上手法の在り方の検討を実施する。ここでは、現在、やや遅れている振動試験の実施とその評価を進め、得られた知見を活用して実機試験体の設計・製作を計画している。このため、特に1年目で検討した耐震性向上におけるキー要素となる部分については,今後の解析モデル,設計手法などにも大きく影響するためできるだけ実機レベルにて具現化するよう配慮する.試験体については,耐震補強形式と制振形式の2種類を検討する.ただし,いずれの場合も実用時を考慮し過度な補強や減衰付加にならぬよう現実的な観点で試験体を設計する.また,対象となる機器・配管への入力波も建築構造物の応答を介して入力されるはり部の応答波となることから,当該波形を模擬した人工波を作成し耐震性能を評価することで常に現実に即した観点での検討を継続的に行い性能評価試験より天吊り形式の機器・配管の在り方を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の2年目では、実機型試験体による振動試験からの被害メカニズムの検証と、耐震補強形式と制振形式の2種類による耐震安全性の向上に関する検討を計画している。このため、研究初年度での試験体製作費における予算申請時の計画費と実費との差額から生じた次年度繰越金とともに,2年目の予算の多くは、試験体の設計・製作費として計上する。また、研究の報告と耐震対策技術に関する研究の動向、および、専門家とのディスカッションを目的とした学会参加を計画する。さらに、研究成果の投稿を予定しており、その費用を計上している。
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