研究課題/領域番号 |
24560277
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
古屋 治 東京都市大学, 工学部, 准教授 (00290726)
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キーワード | 実プラントモデル化 / 実プラント試験体設計・製作 / 破壊メカニズム検証 / 耐震安全性向上技術の在り方 |
研究概要 |
東日本大震災では,多くの構造減衰が低い鉄骨構造で建造された産業施設において,東北地方太平洋沖地震の特徴の一つである長継続時間での地震入力から天吊り形式の機器・配管の被害が多発し産業施設の機能が停止する事態を生じた.このため,天吊り形式の機器・配管被害の被害様式の分類と発生メカニズムの解明,および,その耐震健全性の向上のための在り方を明らかにすることは産業施設の生産等施設機能の継続性や耐震健全性を担保するうえで極めて重要かつ急務となっている. 平成24年度は,天吊り形式の機器・配管について現状規格/基準,取り付け・支持方法等の調査・整理,東日本大震災での被害様式の分類,解析モデルを用いた非線形時刻歴応答・周波数応答解析を実施した.また,1/4縮尺モデルにて天吊り型機器・配管耐震性評価試験体を設計・製作し,振動加振装置により被害メカニズム解明のための振動実験を実施した. 平成25年度では,昨年度の結果を踏まえて,天吊り形式の機器・配管の耐震性向上手法の在り方を検討した.ここでは,1/4縮尺モデル振動試験から得られた知見を活用して実機試験体の設計を計画した.特に,現実に即した観点で被害メカニズムが検証し得るよう,東日本大震災において実際に被災したプラントを対象として,再度,被害調査および試験実施時の具体的な建屋振動性状や吊り構造物の配置状況などを綿密に調査し,入手した建屋設計解析書や設備図面等から,高さ4m,奥行き・幅方向約3mの試験体を設計製作した.また,実際の被害を模擬するため,モデルプラント近傍の観測地震波を用いて試験時の地震波を作成し振動試験を実施した. 結果として,実際の吊り形式の機械構造物の被害メカニズムを実規模レベルでの試験体から検証し,被害メカニズムを明らかにするとともに,その耐震性向上対策の方向性の在り方を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究2年目では, 初年度の検討を踏まえて実機試験体の設計・製作を行い,特に1年目で検討した耐震性向上におけるキー要素となる部分について,今後の解析モデル,設計手法などにも大きく影響するためできるだけ実機レベルにて具現化するよう配慮することとした.結果として,実機レベルの試験体を用いて現実に即した観点で被害メカニズムが検証し得るよう,東日本大震災において実際に被災したプラントを対象として,試験実施時のモデルプラントとしての具体的な建屋振動性状や吊り構造物の配置状況などを綿密に調査し,入手した建屋設計解析書や設備図面等から,高さ4m,奥行き・幅方向約3mの試験体を設計製作した.また,実際の被害を模擬するため,モデルプラント近傍の観測地震波を用いて試験時の地震波を作成し準備し振動試験を実施した.これにより,実際の被害メカニズムを検証できたばかりでなく,被害軽減のための耐震安全性向上対策についての方向性の在り方についても確認することができた.
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今後の研究の推進方策 |
研究3年目では,天吊り形式の機器・配管の耐震性向上手法の在り方の明示・成果公表を計画している.また,計画では,実験等に関しては,基本的に2年間で終了し,事後解析を含む評価・まとめを最終年度にて行い,迅速に研究成果を論文投稿や講演,セミナーなどを通じて迅速に公表することとした.しかしながら,2年目で検討し,設計・製作した実機型試験体を用いた天吊り形式の機器・配管の耐震性向上手法の在り方の実証試験を実施した上で対策技術の在り方を提示することが重要と判断し,再度,実機型試験体を用いた振動試験を必要最小限の加振項目で実施する.また,当該結果を踏まえて結果をまとめ投稿やセミナーでの公表を計画する.
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次年度の研究費の使用計画 |
天吊り形式の機器・配管の耐震性向上手法の在り方の検討として,実機試験体を用いた対策技術の方向性の実証試験による検証が重要と判断したことから,当初予定していた国際会議への参加を次年度に移行することで試験費用を捻出し得るよう検討した. 天吊り形式の機器・配管の耐震性向上手法の在り方を実証するため,実機試験体を用いた振動台実験から対策技術の検討を行い,設計手法等にも活用可能な実機レベルでの知見を得る.また,結果を国際会議にて報告する.
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