研究課題/領域番号 |
24560278
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
松岡 太一 明治大学, 理工学部, 講師 (80360189)
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研究分担者 |
平元 和彦 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (00261652)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 機械力学・制御 / 制振 / 制御工学 / 免震 / 耐震 / ダンピング |
研究概要 |
振動抑制装置(セミアクティブダンパ)は,制御時に信号を送ってから機械的性質が変わるまで立ち上がり時間の遅れが必ず生じる.本研究では,この機械的な時間遅れの改善を目的に,電磁抵抗型セミアクティブダンパを開発し,係数励振を利用することでメカニカルに改善を図るものである.2012年度は,まず電磁抵抗型セミアクティブダンパの減衰力理論式から小規模モデルの設計パラメータを決定し試作装置を製作した.リレー回路を用いたコントローラを応用し,加振実験によって装置単体の抵抗力特性および時間遅れを調べた.なお,装置の製作は研究代表者と本学院生および学生が当学内工作工場において,および実験は同院生および同学生が担当した.直流モータに代わって,三相ブラシレスモータ,同期・非同期交流モータを試したがどれもあまり変化が見られなかった.加えて,発電機端子間の電流値を外部信号(コンピュータからの電圧値)によって変化させて,回路の抵抗値を変化させるリレー回路を製作した.それによって,ダンパの減衰係数を変えることが確認できた.交流モータから出力される電圧量は,正弦波状になるため,その平滑化にコンデンサ(二次系となるため時間遅れはさらに増加すると予想されたため)を使わずに係数励振を試みた.次の段階として,抵抗力測定実験を行った.ダンパおよびコントローラが目標通りの応答感度を実現するかを確かめるために,三角波加振においてON/OFF制御時の抵抗力の時間遅れを測定した.また正弦波状変位を加え,そのときの荷重と変位の履歴曲線を測定し,減衰係数を調べた.また,シミュレーションとして時間遅れを考慮した一自遅れ系に本システムが取り付けられた場合の数値計算を行った.制御手法は分担研究者と共に協議した.それらの結果を検討した結果,既存の方法よりある程度の改善が図られたことを確かめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画において、装置の設計、製作および時間遅れ測定実験は終えている.またそれらの結果から,各種モータの試行やリレー回路方式などから,時間遅れに関して概ね予想通りの結果が得られているので,順調に進展していると言える.しかし,まだ時間遅れの抜本的な改善に向けて,係数励振を用いた方法は,数度実験は行っているものの,理論通りの結果が得らず,試行錯誤の段階であり,初期の計画においては満足のいく結果ではない.
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今後の研究の推進方策 |
2013年度は初年度の実験およびシミュレーション結果から,制御理論を検討した上で実際に一自由度振動系に本装置を取り付けて振動実験および解析を行う.時間遅れについて所定の性能が得られない場合は,当該年度も引き続いてモータの選定と係数励振の活用方法(振動数など)を試行する.本システムの有効性および実現可能性を確かめるために,三次元振動台(当大学振動実験解析棟内)を用いて,本システムを取り付けた小規模な一自由度振動モデルの地震応答実験を行う.実地震波(代表的な地震波4種類程度)を入力し,加速度および変位を測定する.得られたセンサ信号はデジタルシグナルプロセッサを介してコントローラにフィードバックされる.制御手法についてはシミュレーションで用いた手法(前述の二値切替制御など)を使う.また,地震波の最大入力加速度を変えて比較検討する.解析は有限要素法や数値演算ソフトウェアを用いて数値計算を行う.それらの値を実験結果と比較し,その誤差はおよそ10%以内を目標とする.その際に簡略化したモデルを用いた場合と実モデルとの誤差を検証する.また,FFT アナライザーで時間遅れおよび応答スペクトルを測定し,本システムの性能評価を行う.主な問題点は①実現可能性について(耐荷重の大型化)②制御理論の実モデルへの適用について(任意の抵抗値に設定した場合)③他対象物への応用(一自由度モデル以外ではどうか)の解決策、を模索する.最終年度に向けての展開として,実際の構造物パラメータを用いた数値シミュレーションを行い,可能であれば実大三層構造物を用いた振動試験を行いたい.当該年度は,本学学生および大学院生と共同で行う.分担研究者には主にシミュレーションを担当する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に購入するはずであった消耗品費(材料)のうち,余材で充当した分および複数個購入予定であった部品の削減によって残余金が生じた.そのため繰越分については2013年度に購入予定である消耗品費に無駄の無いように充当する予定である。
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