研究課題/領域番号 |
24560279
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
川島 豪 神奈川工科大学, 工学部, 教授 (70186089)
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キーワード | 機械力学・制御 / 衝撃制御 / 乗員保護装置 / 幼児用補助装置 / 衝撃緩和 / 振り子 / 倒立振り子 / 衝突実験装置 |
研究概要 |
車に乗せられている幼児の安全確保のため、振り子式のチャイルドベッドを倒立振り子のようにアームで支え、そのアームの回転減衰をセミアクティブ制御で調整することにより、衝突時の幼児に作用する衝撃力を許容値以下に抑える安全装置の開発が最終目的であり、本研究の目的は数値シミュレーションにより基礎的なデータを集めて設計指針を得ると供に、模型実験によりその有用性を確認することである。衝突初期に衝撃力を緩和できる振り子式の特徴と動き出し難さから寝台の移動距離を抑えることのできる倒立振り子式の特徴を併せ持つ点、車上の装置であることから充分なエネルギー供給が得にくい状況を考慮してセミアクティブ制御により衝撃力を緩和する点が提案する装置の特徴である。 本年度の研究実施計画に対して以下の成果を得た。 1.本研究の特徴である衝突という0.1s程度の短時間での制御を実現するため、セミアクティブ衝撃制御用アクチュエータを製作し、0.001s以内の遅れで応答することを確認した。アクチュエータの駆動装置に関しては、電流形の超磁歪アクチュエータと電圧型の積層セラミックアクチュエータを用いて予備実験し、もろいが応答が安定している積層セラミックアクチュエータを用いることとした。機構に関しては、大きな制動力を得ることのできるディスクブレーキシステムと高速な応答が期待できるガイアドライブ機構(ローラを斜めに配置することで静摩擦から動摩擦に滑らかに移行できる特徴を有する)を用いて予備実験し、ディスクブレーキシステムを用いることとした。 2.衝突実験装置における台車の振動を抑えるため、走行路が平面となるよう切削してみたが効果は得られなかった。そこで、加速後すぐに減速する運転パターンにより振動が発達する前に実験することとした。 3.数値シミュレーションにより得られた知見を、国内会議やホームページで公表し、論文に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度までの研究実施計画に対する達成度は下記のとおりである。 1.衝突の際、幼児の背中に衝撃力を作用させることで体が複雑に曲がることを防ぎ、衝撃力を零から徐々に増加させて一定値に抑えることのできる振り子・倒立振り子併用式チャイルドベッドを提案し、スライディングモード制御理論を適用してそのセミアクティブ制御システムを開発した。この計画は予定通り達成されている。 2.衝突を模擬した数値シミュレーションにより、実物大の振り子・倒立振り子併用式チャイルドベッドおよび制御システムの有効性を、車内で寝台が移動できる距離を考慮しながら確認し、設計指針を得ている。さらに、実験模型のシミュレーションにより模型のパラメータに関する指針も得ており、この計画も予定通り達成されている。 3.提案しているチャイルドベッドの有効性を模型実験により確認するため、本学自動車工学センターにある衝突実験設備の走路(20 m)に設置されているリニア誘導モータに関する制御システムを構築し、10 kgの錘を載せた総質量約35 kgの台車を加速後に-11.7 m/s2で急減速させられること、同条件での減速実験を繰り返し実施できることを確認しており、この計画もほぼ予定通り達成されている。台車をアルミ材で製作することで軽量化でき、ほぼ目標の減速度を達成できたが、台車上での上下振動を測定したところ500 m/s2以上の加速度が確認され、加速直後に減速する運転パターンにより振動を抑えることとした。防振対策のため、実験模型を搭載する台車の製作が遅れており、この点で達成度がやや遅れている。 4.数値シミュレーションにより得られた知見を国際会議、国内会議で発表し、さらに論文として投稿するとともに成果の一部は簡単ではあるがホームページで公表しており、この計画もほぼ予定通り達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には申請書通りの計画で研究を推進していくが、台車の防振対策を計画に追加する。 1.本研究の特徴である衝突という0.1s程度の短時間での制御を実現するため、25年度に開発した0.001s以内の遅れで応答するセミアクティブアクチュエータを用いて、数値シミュレーションにより有効性を確認した振り子・倒立振り子併用式チャイルドベッドの模型および制御システムを製作する。そして実験を実施し、提案するチャイルドベッドの有効性を確認する。 2.衝突実験装置の防振に関して、レールの新設を含めて検討することを26年度の計画に加える。安定した実験が実現できない場合は、車の底に取り付けられているアルミ板とLIMとの空隙を一定に保つ必要から台車にサスペンションを取付けられないため、台車上に載せる防振装置を検討する。 3.得られた成果を国内外の会議で発表、および論文として投稿すると共にホームページを充実していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
5月から研究補助者の募集を開始したが、適任者がおらず研究補助者の決定が12月中旬になり、人件費・謝金の使用額が計画より少なくなったため、次年度使用額が生じた。 研究補助者に継続して実験模型の製作を補助してもらい実験模型の製作を計画通り進めるため、次年度分の人件費・謝金に加算して使用する。
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