研究課題/領域番号 |
24560279
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
川島 豪 神奈川工科大学, 工学部, 教授 (70186089)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 機械力学・制御 / 衝撃制御 / 乗員保護装置 / 幼児用補助装置 / 衝撃緩和 / 振り子 / 倒立振り子 / 衝突実験装置 |
研究実績の概要 |
車に乗せられている幼児の安全確保のため、振り子式のチャイルドベッドを倒立振り子のようにアームで支え、そのアームの回転減衰をセミアクティブ制御で調整することにより、衝突時の幼児に作用する衝撃力を許容値以下に抑える安全装置の開発が最終目的であり、本研究の目的は数値シミュレーションにより基礎的なデータを集めて設計指針を得ると供に、模型実験によりその有用性を確認することである。衝突初期に衝撃力を緩和できる振り子式の特徴と動き出し難さから寝台の移動距離を抑えることのできる倒立振り子式の特徴を併せ持つ点、車上の装置であることから充分なエネルギー供給が得にくい状況を考慮してセミアクティブ制御により衝撃力を緩和する点が提案する装置の特徴である。 昨年度までに、振り子・倒立振り子式チャイルドベッドとその制御則を提案、有効性をシミュレーションにより確認し、模型実験用の衝突実験装置およびセミアクティブ制御用のアクチュエータの開発に着手した。本年度は、研究実施計画に対して以下の成果を得た。 1.本研究の特徴である衝突という0.1s程度の短時間での制御を実現するため、積層圧電アクチュエータにより自転車用ディスクブレーキを駆動する模型実験用アクチュエータを製作し、0.001s以内の遅れで応答することを確認した。また、チャイルドベッド模型を完成させ、ベッドが動くことでベッドに作用する加速度が減少することを実験により確認した。 2.衝突実験装置に関して、高速度カメラによる撮影等により台車の振動の原因を調べ、加速後すぐに減速する運転パターンによる振動低減効果を確認するとともに、搭載するアンプなどの精密機器を防振支持するなどの振動対策を実施した。 3.数値シミュレーションにより得られた知見を、国際会議で発表し、日本機械学会の英文ジャーナルに投稿するとともに、実験風景等をホームページに公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度までの研究目的に対する達成度は下記のとおりである。 1.衝突の際、幼児の背中に衝撃力を作用させることで体が複雑に曲がることを防ぎ、衝撃力を零から徐々に増加させて一定値に抑えることのできる振り子・倒立振り子併用式チャイルドベッド、およびそのセミアクティブ制御則を提案した。この計画は予定通り達成されている。 2.衝突を模擬した数値シミュレーションにより、実物大の振り子・倒立振り子併用式チャイルドベッドおよび制御則の有効性を、車内で寝台が移動できる距離を考慮しながら確認し、設計指針を得た。さらに、実験模型のシミュレーションにより模型のパラメータに関する指針も得ており、この計画も予定通り達成されている。 3.提案しているチャイルドベッドの有効性を確認する模型実験に関して、本学自動車工学センターにある衝突実験設備の走路(20 m)に設置されているリニア誘導モータの制御システムを構築してチャイルドベッド模型を搭載した台車を3.8 m/sの速度から15.6 m/s2で急減速させられることを確認した。アンプの関係から制御力不足の問題が残されているものの積層圧電アクチュエータにより自転車用ディスクブレーキを駆動する模型実験用アクチュエータを製作し、チャイルドベッド模型を完成させており、これらに関してはほぼ予定通り達成されている。そして、製作した模型を衝突実験装置の走路で走行させ、ベッドが動くことでベッドに作用する加速度が減少することを実験により確認した。しかし台車の振動およびノイズ対策等により制御実験が遅れており、この点で達成度がやや遅れている。 4.数値シミュレーションにより得られた知見を国際会議、国内会議で発表し、さらに論文として投稿するとともに成果の一部はホームページで公表しており、この計画もほぼ予定通り達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には申請書通りの計画で研究を推進していくが、遅れている制御実験を重点に推進していく。 1.本研究の特徴である衝突という0.1s程度の短時間での制御効果を確認するため、本学自動車工学センターにある衝突実験設備の走路で製作した実験模型を走行させ、制御実験を実施する。ある程度の成果が得られたのちは、台車にクラッシャブルゾーンを設置して平成28年度の研究実施計画である実際に衝突実験装置の衝突壁に衝突させる実験を実施し、提案している振り子・倒立振り子併用式チャイルドベッドの有効性を確認する。 2.スライディングモード制御理論を適用して開発した制御則は、倒立振り子アームの角変位をベースに制御する方式であるが、より効果的にベッドの加速度を徐々に大きくして一定値に留める制御を実現するため、加速度制御を適用した制御則の開発を試み、その性能を数値シミュレーションにより確認することを計画に追加する。 3.得られた成果を国内外の会議で発表、および論文として投稿すると共にホームページを充実していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
制御実験がやや遅れており、制御用アクチュエータおよび実験模型の改造費に次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
やや遅れている制御実験を推進して計画通り進めるため、次年度分の消耗品費に加算して使用する。
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備考 |
ホームページに実験風景のショートムービーを掲載しています。
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