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2012 年度 実施状況報告書

MRI騒音低減のためのヘッドマウント型アクティブ消音システムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 24560280
研究種目

基盤研究(C)

研究機関関西大学

研究代表者

梶川 嘉延  関西大学, システム理工学部, 教授 (30268312)

研究分担者 棟安 実治  関西大学, システム理工学部, 教授 (30229942)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードアクティブノイズコントロール / MRI / ヘッドマウント型 / 騒音対策 / 能動騒音制御 / 主観評価実験
研究概要

MRIはその撮像の際に静磁場中に配置された傾斜磁場コイルに電流の緩急を与えるため,ローレンツ力により傾斜磁場コイルが振動し,その結果非常に音圧レベルの高い騒音が発生することが知られている.実際,MRI装置による検査を受ける際には患者は耳栓やイヤープロテクタの装着を余儀なくされる.この場合,患者と医療スタッフとの肉声によるコミュニケーションは困難になるとともに,耳への圧迫感など肉体的な影響も無視できない.また,MRI装置の操作に関わる医療スタッフは多くの場合,耳栓やイヤープロテクタなどの装着の不便さのため聴覚保護の対策を十分に取らずに長時間活動するため,患者に比べてそのリスクは高いといえる.よって,MRI装置における騒音対策も急務であるといえる.
そこで,本研究課題では医療スタッフのためのANCシステムの構築を検討している.具体的には,MRI騒音環境下において医療スタッフ間の肉声による対話を実現するため,ヘッドマウント型の構成を提案した.その結果,500-2500 Hzの帯域において30 dB程度の消音に実際のMRI室内で成功するとともに,肉声による音声対話の可能性も主観評価実験を通じて実証した.しかし,MRI装置は設置されている部屋の外部から操作されることが多いため,MRI室内外間での音声対話も必要となる.そこで,MRI室内外での音声通信機能をヘッドマウント型ANCシステムに導入することについても検討した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

MRI騒音を低減するためのヘッドマウント型ANCシステムにMRI室内外間の音声通信機能を付与したシステムについて検討を行った.具体的には,ヘッドマウント型ANCシステムにおける誤差マイクロホンと二次音源を音声通信のためのインタフェースとしても利用した.この場合,室外からの音声が誤差マイクロホンを介して室外に帰還するため,エコーキャンセラの概念に基づくAudio-Integrated ANCの構成を利用した.さらに,ANCにより消音しきれなかった騒音と室内の音声とを分離するために線形予測フィルタも導入した.すなわち,MRI騒音と音声との自己相関の性質の違いに着目し,線形予測フィルタの遅延量を適切に設定することで,室内音声と残差騒音との分離を実現した.
そして,実際のMRI室における騒音低減実験ならびに音声と消し残った騒音との分離性能に関する実験を行った.その結果,MRI騒音を約20dB低減するとともに,消し残った騒音と音声を分離できることを実証した.さらに,提案システムを用いることでMRI室内外での音声対話が円滑になるかどうかを主観評価実験を通じて検討を行った.その結果,提案システムを用いることで単音節明瞭度を30%以上改善できることがわかった.

今後の研究の推進方策

今後は以下の点について検討を行う必要がある.まず,消し残ったMRI騒音と音声をより精度よく分離できる線形予測フィルタのパラメータに関して検討する必要がある.また,インパルス性の騒音が消音できていないため数秒の周期でインパルス音が聞こえてしまうという問題が残されている.そこで,インパルス性の騒音を消音できるようにするためにアルゴリズムを改良することと,ANCの構成をフィードバックとフィードフォワードを併用したハイブリッド型に修正する必要がある.これを実現するためには参照マイクロホンと二次音源を極限までに近づける必要があるため,オーバーサンプリング技術の導入などを検討する必要がある.さらに,提案システムのワイヤレス化ならびにポータブル化についても検討する予定である.

次年度の研究費の使用計画

次年度の研究課題を遂行する上でより早い信号処理プロセッサの導入は必要不可欠であると考えられる.ただし,現状のシステムでどの程度まで処理速度をあげられるか十分に検討した上で,必要に応じて導入を検討する.また,今年度の研究成果を国内外の学会で発表することも重要であると考えられるため,積極的に学会での発表を行う必要がある.そこで,そのような経費に利用したいと考えている.また,次年度への繰越金が生じた理由としては,保有する機材で十分な検討できたことで物品費が本年度は不要となったためである.次年度は処理速度の向上のため,この繰越金を利用する予定である.

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Application of Simultaneous Equations Method to ANC System with Non-minimum Phase Secondary Path2012

    • 著者名/発表者名
      K. Fujii, K. Kashihara, I. Wakabayashi, M. Muneyasu and M. Morimoto
    • 雑誌名

      IEICE Trans. Fundamentals

      巻: E95-A ページ: 1109-1116

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Two-channel Adaptive Algorithm for Active Noise Control System Using Simultaneous Equations Method2012

    • 著者名/発表者名
      K. Fujii, Y. Okamoto, M. Itoh, M. Muneyasu and M. Morimoto
    • 雑誌名

      Acoustical Science and Technology

      巻: 33 ページ: 339-347

    • DOI

      10.1250/ast.33.339

    • 査読あり
  • [学会発表] Adaptive Feedback Active Noise Control with Virtual Sensing2013

    • 著者名/発表者名
      N. Miyazaki, Y. Kajikawa
    • 学会等名
      20th International Congress on Sound and Vibration
    • 発表場所
      Bangkok, Thailand
    • 年月日
      20130707-20130711
  • [学会発表] Adaptive Feedback ANC System Using Virtual Microphones2013

    • 著者名/発表者名
      N. Miyazaki, Y. Kajikawa
    • 学会等名
      The 38th International Conference on Acoustics, Speech, and Signal Processing
    • 発表場所
      Vancouver, Canada
    • 年月日
      20130526-20130531
  • [学会発表] 音声通信による対話を目的としたヘッドマウント型ANCシステム2013

    • 著者名/発表者名
      山川航平,梶川嘉延
    • 学会等名
      電子情報通信学会信号処理研究会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      20130502-20130502
  • [学会発表] 音声通信機能を付与したヘッドマウント型ANCシステム2013

    • 著者名/発表者名
      山川航平,梶川嘉延
    • 学会等名
      日本音響学会2013年春季研究発表会
    • 発表場所
      東京工科大学
    • 年月日
      20130313-20130315
  • [学会発表] フィードフォワード型 ANCにおける帰還系の同定法に関する検討2013

    • 著者名/発表者名
      酒井龍矢,岩松祐輔,藤井健作,棟安実治,森本雅和
    • 学会等名
      電子情報通信学会応用音響研究会
    • 発表場所
      同志社大学
    • 年月日
      20130117-20130118
  • [学会発表] Recent Advances on Active Noise Control: Open Issues and Innovative Applications2012

    • 著者名/発表者名
      Y. Kajikawa, W.-S. Gan, S. M. Kuo
    • 学会等名
      Asia-Pacific Signal and Information Processing Association 2010 Annual Summit and Conference
    • 発表場所
      Hollywood, USA
    • 年月日
      20121203-20121206
    • 招待講演
  • [学会発表] 周波数領域マルチチャ ネルシステム同定アルゴリズムの提案2012

    • 著者名/発表者名
      横谷祥史,酒井龍矢,藤井健作,棟安実治,森本雅和
    • 学会等名
      電子情報通信学会応用音響研究会
    • 発表場所
      大分大学
    • 年月日
      20121116-20121117
  • [学会発表] Detection of Road Boundaries Using Hyperbolic Road Model2012

    • 著者名/発表者名
      M. Nishida and M. Muneyasu
    • 学会等名
      2012 International Symposium on Intelligent Signal Processing and Communication Systems
    • 発表場所
      New Taipei City, Taiwan
    • 年月日
      20121104-20121107
  • [学会発表] バーチャルマイクロホンを用いたANCシステムのMR騒音に対する有効性の検討2012

    • 著者名/発表者名
      宮崎信浩,梶川嘉延
    • 学会等名
      日本音響学会2012年秋季研究発表会
    • 発表場所
      信州大学
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] 周波数領域マルチチャ ネルシステム同定アルゴリズムの提案2012

    • 著者名/発表者名
      藤井健作,横谷祥史,酒井龍矢,棟安実治,森本雅和
    • 学会等名
      電子情報通信学会2012年基礎・境界ソサイエティ大会
    • 発表場所
      富山大学
    • 年月日
      20120911-20120914
  • [学会発表] バーチャルマイクロホンを用いたフィードバックANCシステムに関する検討2012

    • 著者名/発表者名
      宮崎信浩,梶川嘉延
    • 学会等名
      電子情報通信学会応用音響研究会
    • 発表場所
      大阪大学
    • 年月日
      20120524-20120525
  • [図書] 製品音の快音技術2012

    • 著者名/発表者名
      岩宮眞一郎,高田正幸(監修),執筆者多数
    • 総ページ数
      559ページ(担当10ページ)
    • 出版者
      S&T出版

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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