研究概要 |
湿原保全のためのフィールド調査は人手で行われており,大変な労力と時間を要する.我々は,湿原特有の丈長植物の密生地を,湿地に埋没することなく,草をなぎ倒さずに進める機構として,二重螺旋推進機構を提案している.この機構の実現には螺旋パイプの外周を保持しながら回転させる仕組みが必要であるが,回転中の螺旋パイプの姿勢変動や動力伝達におけるすべりなどの課題があった.本研究では,これらの課題を解決するための回転機構の研究開発が目的である. 今年度は,前年度に試作した既存の螺旋パイプ回転装置による実験結果の解析を行った.この装置は螺旋パイプの外周を近接した3点でグリップし,そのうち1点を駆動輪として螺旋に回転トルクを与えている.螺旋パイプの片側を持ち上げたとき,螺旋パイプの他端は地面に接する構成(構成A),回転装置と同構造の支持装置とにより螺旋パイプを持ち上げ,地面に接すること無く回転する構成(構成B)について,運動学モデルを構築した. 当初は構成A,Bについて,力学シミュレーションソフトウエアを使用して解析する予定であったが,実システムにおける考察を優先し,モーションキャプチャーシステムを用いて螺旋パイプの運動を計測することにした.モーションキャプチャは光を反射する球形のマーカーを複数のカメラで撮影し,その三次元的な位置を瞬時に計算する装置である.螺旋パイプの特定の場所にマーカーを3つ工夫して取り付けることで,螺旋パイプの位置と姿勢を計測する手法を確立した. 室内実験での結果,構成が簡単で軽量である構成Aは,地面との接触状態により,螺旋パイプ姿勢が変動したが,回転自体は可能であった.構成Bは構成Aに比べて姿勢変動は少ないが,螺旋の形状誤差に起因する姿勢の傾きが生じることがわかった.以上により螺旋パイプの姿勢維持機構とアクチュエータの動力伝達機構の動的な配置について知見が得られた.
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