研究課題/領域番号 |
24560283
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
渡辺 美知子 北見工業大学, 工学部, 准教授 (50509289)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 人工生命 / 物理エンジン / 人工ニューラルネットワーク(ANN) / 遺伝的アルゴリズム(GA) / 自律行動 / 協調行動 / 機械学習 |
研究概要 |
これ迄の研究は,人工魚が胴体をくねらせることにより遊泳する魚モデル,足の運びの位相を伝搬することで歩行を可能にする多足歩行モデルなど単一タスク単一行動の獲得実験である.これらの生物は,遊泳あるいは歩行という単一のタスクを実現するニューロイボリューションの結果である. 本研究では,単に遊泳という一つの行動獲得を行うのではなく,遊泳であっても身体の泳動,推進力を利用した単なる慣性による前進,ヒレによる遊泳,等の複数の行動を自身と環境の状況に合わせて選択しながら行動する複雑な行動獲得を目指すものである.一つ一つの単一のプリミティブな行動をビヘイビアシンプルと名付ける.ビヘイビアコンポーズドは,ビヘイビアシンプルを複雑に組み合わせた複合行動といえる.ビヘイビアコンポーズドを実現するには,ビヘイビアシンプルをニューロイボリューションで獲得する必要がある.その上で,スイッチングニューロンをニューロイボリューション(EANN)で学習・進化させる.スイッチングニューロンは,各EANNへの選択プライオリティを出力するように学習が行われる. 本年度は,このような概念と階層型EANNが複合行動の獲得に有効であるかを二足歩行や四足歩行の人工生物モデルを用いて検証した.このような学習法は計算時間の増大が考えられるが,最近のビヘイビアシンプルの行動獲得の実験では,ビヘイビアコンポーズドを実現するANN構造を用いた時に,不完全な学習でもビヘイビアコンポーズドが実現可能なことが分かりかけてきている.逆に,ビヘイビアコンポーズドの構成を行った方が,単一な行動獲得を行うよりも早く学習が終えることも判明してきている.これはローカルミニマム(評価関数の極小値)の組合せでも行動獲得ができる新しい成果でもある.こうしたことも含めてビヘイビアコンポーズドの方法論の有効性を二足歩行や四足歩行の人工生物モデルで検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究では,三次元物理空間内に四足歩行の人工犬をモデリングし,1)この犬モデルの体重を支えながら四足で立っている状態,2)身体のバランスを崩さずに歩行行動をしている状態,3)身体のバランスを崩して地面に転んだ状態,4)転んだ状態から起き上がって四足で立っている状態,5)リラックスして地面に寝転がっている状態から起き上がって四足で立っている状態,6)四足歩行で自律的に目的地へ向かって歩行する状態などの単一タスク実現するためにニューロイボリューションで行動獲得を行った.ここで獲得された単一のプリミティブな行動をビヘイビアシンプルとし,これらを複雑に組み合わせることで複合行動が得られるビヘイビアコンポーズドが構成される.その結果,犬モデルが地面から立ち上がって,目的地に向かって歩き,途中で転んで,再び起き上がり,再び目的地へ向かって歩き,最終的に目的地へ到着するなどの行動獲得が実現可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
生物は,体内に何らかのリズム生成機構を持っていることが知られている.これ迄の二ユーロイボリューションによって獲得される人工生物の行動には,周期関数となる出力が得られる結果が殆どである.これらの経験を踏まえて,あらかじめリズムの生成を行う人工ニューラルネットワークを従来のコントローラとして使用している人工ニューラルネットワークと組合せ,その両者を同時にニューロイボリューションで学習させる新しいコントローラの導入が可能であることが予想される. 24年度の研究を引き続き行うと同時に,セントラルパターンジェネレータ(CPG)とニューラルネットワークをユニット化した,リズム生成をもつニューロコントローラの実現を試みる. CPGの結合ウエイトは多くの研究では予め決められたものを使用するが,本研究ではCPGの結合ウエイトの大きさもニューロイボリューションによって学習する点が独創的である. このようなCPGをもつニューロユニットを組み込むことによりビヘイビアシンプルの行動獲得の学習時間が短縮されることが期待され,同時に,よりスムーズな行動の獲得が行われることを検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費 400,000円 日本機械学会ロボットメカトロニクス講演会(ROBOMEC2013),2013年度精密工学会秋季大会,計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(SI2013),情報処理北海道シンポジウム2013 人件費・謝金 100,000円 外国語論文校閲 その他 100,000円 研究成果投稿料 H24年度の研究経費は,備品の物理演算高速制御装置が予定額より数万円下回ったために残額が生じた.この残額は,本年度の各学会参加のための旅費として使用する予定である.
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