研究課題/領域番号 |
24560291
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
佐々木 実 岐阜大学, 工学部, 教授 (20183379)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高分子アクチュエータ / 高精度制御 / IPMC / モデル化 / CFRP |
研究概要 |
平成24年度実績 脱水銀メッキIPMC の作製・変形理論構築とその性能評価 発生力が高いIPMC を作製するために、剛性の高いIPMC用高分子基板材料を作製する必要がある.このため、イオン交換樹脂をマトリックス高分子に埋め込んだ基板材料を作製し、この高分子基板材料の上下面を銀メッキしてIPMC 試料は作製した.このIPMC 試料は剛性が高いがゆえに発生力はSelemion CMV やNafion タイプのIPMC より大きいと考えられるが,その分屈曲曲率が低下してしまっている可能性がある.従って作製したIPMC 試料に電圧を印加し,電流,試料の曲率変形の経時変化を調べ,電荷と曲率変形の比例関係が保たれているかを検討した.作製したIPMC を実用的アクチュエータとして利用するには,電気的入力に対する,屈曲曲率や発生力等の出力の関係がどのようになっているかを理論的に解明する必要があり、出力は単に電気的入力にのみ依存するのではなく,IPMC 作製に用いた材料物性にも依存する.電気的入力と屈曲や発生力等の出力の関係を材料物性を考慮して包括的な理論付けを行い、モデル化を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,IPMCの電気的入力に対する変形応答出力を入出力データからシステム同定によって動特性のモデル化を行った.さらにそのモデルに基づき、制御系の検討を行った.得られた結果を要約すると以下のようになる. ・基礎実験からNafion IPMCアクチュエータの電気特性と動特性を解析し,印加電流に対するNafion IPMCの曲率の振る舞いから,Nafion IPMCの屈曲は総賦与電荷量に大きく依存している事が示された. ・入出力データに基づき、時間領域でシステム同定することでモデル化を行い,Nafion IPMCの動特性を捉えた数式モデルを作成した. ・実験により数式モデルの妥当性について検証をおこなった. ・数式モデルに基づき制御系の検討を行った. 以上のことより本研究は、当初計画と比較しておおむね順調に進展しているものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
(B)ラミネートタイプアクチュエータの作製・理論構築と性能評価 ラミネートタイプアクチュエータは互いに熱膨張率が異なる高分子板を接着し,これに形状固定の役割を果たすSMP を接着して作製する.低熱膨張率高分子材料としてはCFRP が最適であり、CFRP はカーボンファイバーを含むため,電圧印加により変形誘起に必要な熱発生が可能であるという利点がある.高熱膨張率高分子材料としては,PVC を用いる.作製予定のラミネートタイプアクチュエータはCFRP/PVC/SMP の三層構造を持つが,本研究ではポリウレタンを使う.ポリウレタンは主にハードセグメントとソフトセグメント二種の高分子鎖からなり,その弾性率やTg 等の性質をハードセグメント量とソフトセグメント量の比や,ソフトセグメント原料の分子量調整により制御可能である.従って,ポリウレタンを使うことで,望ましい性質をもつSMP を得ることが期待される.CFRP/PVC/SMP 三層ラミネートを作製し,その変形挙動や発生力に関する測定検討を行う.特に三層ラミネートはCFRP のジュール熱発生によって変形するため,電流や温度の測定を正確に行い,変形挙動の解析を行う.IPMC の場合と同様に電気的入力に対する,屈曲曲率や発生力等の出力の関係がどのようになっているかを材料物性を考慮して包括的に理論付けする. 三層ラミネートは電気駆動型のアクチュエータではあるが,電気エネルギーが変換した「熱エネルギー」が直接的な変形誘起の要因である.三層ラミネートの温度は外部環境の影響を鋭敏に受けると考えられる.従って,正確な変形制御を行うためにはこのような様々なファクターを考慮した包括的な理論の構築が必須である.またこのような包括的理論を基により所望の性質に近い三層ラミネートアクチュエータを設計することが可能になるものと考えられる.
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次年度の研究費の使用計画 |
25 年度はアクチュエータの特性評価のためにFFT アナライザを購入予定である.また、25 年度以降は測定機器を24・25 年度に購入しているため、使途は薬品や解析用ソフトウェアの保守料金やコントローラの電子部品等の消耗品がメインとなる.「実験用消耗品」が24 年度のほぼ半額になるのは、実験系を組む際の消耗品を24 年度に購入しているため、25 年度以降はその購入の必要が無いからである.また、全体を通して調査研究・情報収集、成果発表のための旅費、投稿料、学会登録費、実験補助の謝金が必要となる.
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