研究課題/領域番号 |
24560292
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
井上 吉弘 岐阜大学, 工学部, 准教授 (00176455)
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研究分担者 |
佐々木 実 岐阜大学, 工学部, 教授 (20183379)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 円管噴流 / 臨界レイノルズ数 |
研究概要 |
これまでに,作動流体を水とした絞り部まわりの模型装置を用い,流れの可視化実験とセンサ開発を行ってきた。実験装置の諸寸法は,絞り孔径d = 6 mm,円管内径D = 38 mm,円管長L = 270 mmであり,絞り孔径と噴出速度に基づくレイノルズ数Rejを500 ~ 1200として実験を行った。おもな実験技術は次のとおりである。(1) 実験水槽:攪乱を極力低く抑えた等温作動水の供給,(2) 脈動発生装置:絞り部上流でインパルス的あるいは正弦波的攪乱の印加,(3) 流れの可視化:蛍光染料画像のハイスピードビデオカメラ撮影,(4) 熱線センサ:絞り部下流の管断面に張り渡した熱線による流れの積分情報の取得。熱線センサには,銅線直径0.02 mm,平均皮膜厚さ0.003 mmのマグネットワイヤを用いた。 流れの可視化観察から,Rej = 600までの低レイノルズ数領域では,噴出流体は概ねコラム状に流下し,Rej = 750ではx/d = 20近傍で流れが不安定化し,コラム先端が左右に揺動し始め,x/d > 28でコラムが破断する。ビデオ撮影画像の解析の結果,本流れ場の臨界レイノルズ数はRej = 700前後となることが分かった。そして,臨界レイノルズ数域における流れの変化を,x/d=20の位置に張り渡した熱線センサによって測定した。出力信号として瞬時の熱線加熱電流を測定し,レイノルズ分解により変動成分を抽出し比較した。Rej = 675までは出力波形の変動幅は小さく,Rej = 700において間欠的な変動波形が現れ,Rej = 750ではほぼ全時間にわたって乱れた波形となることが分かった。変動幅が小さい時刻は,噴流コラムが準安定的に存在する流れ状態にあり,高変動幅の時刻は,噴流コラムが崩壊した状態に対応するものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,超精密加工機械の軸受装置として流体静圧軸受を利用することを前提として,その低振動化に取り組むものである。振動変位の発生要因には,次のものが考えられる。(1) 流れの乱流化:円管内流(臨界レイノルズ数約2300),(2) 不安定流れ:絞り部下流(円管噴流,噴流レイノルズ数,面積比),(3) 流体力学的振動:配管分岐部等,(4) 機械力学的振動:系全体(軸受剛性等)。(1)と(2)は,設計段階で十分な注意を払うことで,ほぼ回避することが可能であるのに対して,(3)と(4)を適切に予測し排除することは困難である。ただし,(1)に関する従来の知見は豊富であるが,(2)の臨界現象についての研究は十分に行われていない。本研究では,管内流の流動状態を検出するためのセンサ技術を開発し,模型を用いた実験から,センサ出力信号と流れの可視化観察像との対応付けを行う。そして次の段階として,センサ技術を油静圧軸受内の管路に適用し,センサ情報に基づくフィードバック制御により軸受低振動化の実現を目標としている。 これまでのところで作動流体を水とした模型実験を実施し,絞り部下流の円管噴流についてレイノルズ数による流れ状態の変化を把握することができ,さらに,熱線センサを用いた測定技術を水ループにおいて概ね確立することができた。したがって,研究計画に従い,概ね予定通りに研究を遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究スケジュールは次のとおりである。(1) 動作安定化のための熱線センサ駆動方法の定電流法への変更,(2) 絞り部上流に攪乱を印加した場合の流れの可視化観察と熱線センサ測定,(3) 絞り部下流の円管内壁に設置予定のアクチュエータの開発,(4) 流体フィードバック制御に関する情報収集とLabVIEWによるプログラム開発,(5) 油静圧軸受内において使用可能なセンサの開発。制御アクチュエータの駆動源としては,計画当初よりピエゾアクチュエータの利用を念頭においており,軸受内管路への印加圧力パルスを制御するよう進める。 計画最終年度においては,熱線センサ設置箇所およびアクチュエータ設置箇所を前年度までの結果に基づき検討し,取得データに基づいたシミュレータを作成し利用する。そして,油静圧軸受試験機への適用実験に着手し,測定点数および制御点数の最小化を進めるとともに,試験機の軸受すき間,潤滑油粘度等を変更し,制御試験を実施して知見を積み重ね,一般の流体静圧軸受に適用できるよう,軸受能動的制御法の一般化を考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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