本年度は,前年度に引き続いて,作動流体を水とした模型実験を実施し,絞り部下流の円管噴流に対して,環状パルス噴流を用いた流れの操作を行い,円管噴流とパルス噴流の干渉場を詳細に調べた。円形噴出孔直径は6 mmで,測定用円管の内径は38 mm,長さは270 mmであり,噴出孔基準のレイノルズ数は600~1300である。流れの可視化には蛍光染料法を,流れ状態の測定には熱線法をそれぞれ用いた。また,前年度までの結果より,本研究で対象とする流れ現象の理解には,流れ場の時空間解析が重要であることが分かり,後方ステップ背後に形成される大規模な流れ場における多点同時測定を実施し,流れ場時空間解析法に関する研究を行った。以下に本研究で得られた結果の要点を示す。(1) 円管内噴流に環状パルス噴流を印加した実験から,(a) 印加直後の噴流コラム外周面における渦の巻きあがり,(b) 巻きあがった渦輪による噴流コラムの局所的な乱流化,(c) 乱流塊の流下と回復という一連の事象形成を確認した。(2) 熱線センサを用いた実験から,臨界レイノルズ数を前後する出力波形に大きな差が現れることを示した。さらに,環状パルス噴流を印加した際に生じる一連の事象を捕捉することができた。(3) 後方ステップ背後の速度の多点同時測定結果を用い,流れ場の時空間解析を実施したところ,POD法によって空間モードを効率的に捕捉することができ,同定された低次空間モードから大規模変動の時間変動を示すことができた。
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