研究課題/領域番号 |
24560294
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
土谷 茂樹 和歌山大学, システム工学部, 教授 (30283956)
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研究分担者 |
菊地 邦友 和歌山大学, システム工学部, 助教 (20588058)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Self motion / Autonomous motion / Marangoni effect / Ionic liquid / Surface activity |
研究概要 |
本研究は、化学エネルギーを直接機械エネルギーに変換する機構を動力源とする高効率の微小運動装置の実現を目指し、特にイオン液体を燃料とし、水面を走行する自発運動装置に関する。平成24年度は、推進メカニズムの解明、推進特性に及ぼすイオン液体種の影響に関する評価、及びイオン液体と水との接触状態と推進特性との関連に関する評価、を行った。 イオン液体の貯蔵部とノズルを設けたプラスチック回転子に3種類のイミダゾリウム系イオン液体([BMIM][PF6]、[BMIM][BF4]、[EMIM][BF4])を搭載し、水面での推進力及び回転速度の時間変化に及ぼすイオン液体種の影響を評価した。また、マイカ粉を水面に分散させ、水面での対流の様子を観察した。その結果、推進力はイオン液体の界面活性度、推進時間はイオン液体の水への溶解時間で決まり、疎水性のイオン液体([BMIM][PF6])の方が推進時間が長いことが分かった。また、回転子の推進中にノズルから遠方に流れる水流(約170mm/s)が観察できた。さらに、中性界面活性剤の水溶液面上でイオン液体を搭載したプラスチック片の運動状態を観察した結果、界面活性剤濃度が増加し表面張力が低下すると運動速度が低下し、濃度があるしきい値以上では運動が起きなかった。以上より、イオン液体を燃料とする自発運動の推進力は両親媒性構造を有するイオン液体の水面への拡散により生じた表面張力勾配に起因する(マランゴニー効果)と考えられる。 推進中におけるイオン液体貯蔵部の顕微鏡観察の結果、疎水性イオン液体ではイオン液体と水との接触部が少しずつ移動しイオン液体は徐々に消費されたが、親水性イオン液体([BMIM][BF4]、[EMIM][BF4])では水との接触が急速に起き、短時間で水に覆われた。これより、推進力の時間変化はイオン液体と水との接触状態の時間変化に支配されると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した平成24年度の研究計画は、(1)推進力発生メカニズムの解明、(2)微小運動装置の推進特性に及ぼすイオン液体種の影響に関する評価、(3)微小運動装置の推進特性に影響を及ぼす形状的要因関する評価、であった。 (1)、(2)に関しては当初の計画を達成し、その成果を論文にまとめて学術雑誌に投稿し、掲載された。(3)に関しては、ノズル部の形状を固定した状態でノズル内でのイオン液体の形状(塗布状態)を変化させ推進特性への影響を評価したが、ノズル形状や濡れ性を変化させての評価には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まず、平成24年度の当初計画における「微小運動装置の推進特性に影響を及ぼす形状的要因関する評価」のうち、未実施のノズルの形状や濡れ性を変化させ推進特性に及ぼす影響を評価する。その際、推進特性(推進力の時間変化)の評価のみでなく、推進時における水流(マランゴニー対流)の流速や分布を評価することにより、使用するイオン液体種、ノズル形状や濡れ性が推進に及ぼす影響をより詳しく評価する。 その結果に基づき、微小運動装置の構造、形状、寸法と材料の設計、装置外面の表面処理(水に対する濡れ性の改善)の最適化、ノズル形状の最適設計及び表面処理(イオン液体や水に対する濡れ性の改善)の最適化、及び製作プロセスの設計を行う。 その後、微小運動装置の第1次試作を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
各種イオン液体を含む薬品類、微小運動装置作製のための高分子材料など材料及び部品類、そして微小運動装置加工のための微細加工プロセス用及びエキシマレーザー加工装置用の消耗品、の購入に充てる。また、水面の流速分布を評価するため、流体解析ソフトウェアも購入する。
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