研究課題/領域番号 |
24560294
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
土谷 茂樹 和歌山大学, システム工学部, 教授 (30283956)
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研究分担者 |
菊地 邦友 和歌山大学, システム工学部, 助教 (20588058)
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キーワード | Self motion / Autonomous motion / Marangoni effect / Ionic liquid / Surface tension / Surface activity |
研究概要 |
本研究は、化学エネルギーを直接機械エネルギーに変換する機構を動力源とする高効率の微小運動装置の実現を目指し、特にイオン液体(IL)を燃料とし、水面を走行する自発運動装置に関する。平成25年度は以下の3研究を実施した。 1.両親媒性を有するILが水面と接触すると水面でのILの濃度分布に応じた表面張力勾配に起因するマランゴニー対流によりILが水面を拡張し、同対流の反作用により推進力が生じると推定される。推進メカニズムに関する基本的知見を得るため、3種類のイミダゾリウム系ILを水面に滴下し水面でのIL膜の拡張状態のIL種依存性を評価した。拡張は同心円状に進行し、時間経過と共に周辺部に周期的な凹凸(不安定領域)が生じた。拡張半径の時間変化、及び粒子画像流速測定法を用いた不安定領域における対流の評価を行い、これらの現象を説明する物理化学モデルを提案した。 2.当初提案した運動装置では、ノズル部へILの搭載状態(ILと水面の接触状態、ノズル内のILの形状)が推進力の時間変化に大きく影響する。これらの影響を受けにくい運動装置実現のため、ノズル部底部に水が浸入し、ノズル部表面に対するイオン液体の濡れ性の影響を受けない新たなノズル部構造を提案し、同構造を作製して3種類のイミダゾリウム系ILを用いて推進力の時間変化のIL種依存性を評価した。 3.運動特性(推進力、運動方向)の能動的な制御機構の実現をめざし、磁場と相互作用することが知られている磁性ILを水面に滴下した際の水面での拡張状態や、同ILの水面での濃度勾配によるマランゴニー対流に及ぼす外部磁場の影響を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した推進力発生メカニズムの解明、及び微小運動装置の推進特性に及ぼすイオン液体種の影響に関する評価については当初の計画を達成した。当初計画では、運動装置の推進特性(推進力の時間変化)を決定するノズル部へのILの搭載状態に影響を及ぼすノズル形状やノズル表面に対するイオン液体の濡れ性が推進特性に及ぼす影響を評価する予定であったが、同搭載状態がノズル部表面に対するイオン液体の濡れ性に影響されない新たな構造のノズル部を有する運動装置を作製し、その評価を先行して実施した。また、平成26年度に実施予定の運動特性の能動的な制御機構に関する(当初計画には無かった)新たな案を検証するため、同研究を前倒しで実施した。
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今後の研究の推進方策 |
1.平成24、25年度における研究から得られた基本的な知見をベースに、構造、形状、寸法、及び表面状態を最適化したノズル部を設計、作製する。さらに、同ノズル部を搭載した微小運動装置を微細加工技術を用いて作製すると共に、その構造、形状、寸法、材料、及び装置外面の表面処理を最適化し、作製した装置の運動特性を評価する。 2.運動特性の能動的な制御機構実現のため、磁気的、電気的な作用による水面でのILの拡張の制御を試みる。 3.運動装置を最適化するための基礎的知見を得るため、ILの水面での拡張現象に関する理論的考察を深める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度交付金及び同年度分として請求した助成金による。 自発運動装置作製のための薬品類、微細加工装置用消耗品、材料・部品(高分子、金属材料他)やプロセス用消耗品を購入する。また、作製した自発運動装置評価のための薬品(イオン液体など)や材料・部品を購入する。さらに、研究成果発表(248th ACS National Meeting & Exposition, San Francisco, USA;日本機械学会2014年度年次大会, 東京電機大学 東京千住キャンパス)のための参加費及び旅費に充てる。
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