研究課題/領域番号 |
24560300
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
玉置 元 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (60315752)
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研究分担者 |
吉村 卓也 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (50220736)
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キーワード | 人間機械システム / 人体振動特性 / モデル化 / 生物・生体工学 / 機械力学・制御 |
研究概要 |
将来的に日本人の成人標準振動特性を把握する事を最終目的に,本研究では大規模な日本人を被験者とした振動特性の測定を行い,人体振動特性を把握することを第一の目的とし,またその結果を元に人体モデルの雛形を構築する事を第二の目的とする.2年目の今年度は,大人数での測定を行う予定であったが,所属研究室の大型実験設備の導入により,主に実験を予定していた後半期はその影響で実験室の計画的な利用ができない状況となってしまった.そのため,すでに測定したデータの解析を進め,また追加で少人数の被験者での詳細な実験を行い以下のことが分かった. 詳細実験では,大人数の被験者を対象に行う比較的容易に測定でき被験者に負担の少ない頭部の加速度伝達率と座面での駆動点動質量の測定に加えて,加速度計を椎骨直上の皮膚上に張り付けることでいくつかの脊椎の加速度を測定し,脊椎系の加速度伝達率を同時に測定した.このとき,姿勢を直立とリラックスの2種類に加えその中間姿勢を複数含め細かく変化させて,頭部の伝達率,動質量,更に脊柱系の伝達率が着座姿勢に対応して徐々に変化することを確認した.また,これらの振動特性と初年度の検討によって決定した6つの姿勢の指標値(ISO(ISO/TR 10687)に基づく腰椎湾曲など3指標値と,本研究独自の骨盤傾斜など3指標値)との関係を重回帰分析し,それぞれの1次共振周波数は姿勢指標値である骨盤傾斜,腰椎湾曲,および被験者の個人的特徴を表す体重を用いて精度よく表現可能であることが分かった. 更に各部の加速度伝達率と動質量を用いてモード特性同定を行い,人体脊椎系の固有振動数や振動モード形といったモード特性を得た.これより,対象周波数範囲内に座位人体には3つの固有モードが確認され,姿勢変化によって,これらのモード形に変化はないが,その固有振動数が姿勢変化に対応して変化することが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年目の今年度は,大人数での測定を行う予定であったが,主に実験を予定していた後半期に所属研究室の大型実験設備の導入があり,その準備や作業等の影響で実験室を計画的に利用できない状況となってしまった.そのため測定の多くが次年度に繰り越しになってしまった. しかし,その分すでに測定したデータや,前述した細かい姿勢変化や脊椎の加速度伝達率測定も同時に行う詳細実験結果から,振動特性と姿勢変化の検討を深めた.これより,前年度に得られた「振動特性として1次共振周波数については骨盤傾斜や腰椎湾曲との相関が高く,本研究申請時に想定していたグループ化を行うと言う考え方より,むしろ相関の高い部位の形状により振動特性が決まるという考え方の方が有用である可能性がある」という知見を一歩進めて,振動特性と姿勢指標値の間の関係を多重回帰分析することで,姿勢指標値である骨盤傾斜と腰椎湾曲に加えて,被験者の個人差を表現するパラメータである体重を導入し,これら3つのパラメータで1次共振周波数が良く表現できることが分かった.また,脊椎系の振動モードを把握し,対象周波数範囲に座位人体は3つのモードを持つことがわかった.これらのモードは姿勢変化によりモード形は変わらないが,固有振動数は変化し,特に1次固有振動数は共振振動数と同様に3つのパラメータで良好に表現できることが分かった.順番は前後するが,次年度に行う残りの実験結果から,これらの特徴を確認する.
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今後の研究の推進方策 |
1. 加振実験:今年度やり残してしまった加振実験を行い,頭部の伝達率と動質量を測定する.その際に被験者の脊椎形状を一緒に測定する.得られた姿勢指標値と振動特性から,今年度検討した関係性の確認を行う.なお,研究室で新たに導入した大型加振機を用いて実験可能か現在検討中である.新加振機は加振力が大きく安定した加振力が得られ,従来加振機より信頼性のある実験が出来ることが期待できる.反面大型であるため,被験者から測定者までの距離が離れてしまうため,従来の測定機器類が利用可能であるかなどの検討が必要である. 2. モデルの構築:得られた振動特性(駆動点動質量,頭部加速度伝達率など)の特徴を表現可能なモデルを構築する.当初我々が既に作成した脊椎系モデルを利用することを考えていた.このモデルは,各部を剛体とし,各剛体間を椎間板を模擬する回転ばね・ダンパで接続し,また背筋,腹部を考慮した座位人体脊椎系のモデルで,腰椎部の負荷に着目して各腰椎骨の動きを再現できる様に考えてある.しかし,今年度の検討から,姿勢指標値として骨盤傾斜と腰椎湾曲,および被験者の個人差を表すパラメータである体重から,姿勢によらず1次の共振振動数が良く表現でき,また共振振幅もある程度同様に少ないパラメータで表現できることが分かったため,振動特性の特徴を限定することで,より簡易なモデルで重要な振動特性だけを表現する方が有用であるとも考えられるため,これらを検討し適切なモデルを提案する.
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次年度の研究費の使用計画 |
主に実験を予定していた後半期に所属研究室の大型実験設備の導入があり,その準備や作業等の影響で実験室を計画的に利用できない状況となってしまった.そのため測定の多くが次年度に繰り越しになり,それに伴い予定していた被験者への謝金を繰り越したため. 今年度やり残してしまった分の頭部の伝達率と動質量を測定する加振実験を行い,その際,繰り越した助成金は当初の予定通り被験者へ謝金として支払う.当初次年度は,実験結果の各種検討に充てていたため,助成金配分が少なかったが,この分の検討内容の多くを今年度検討したため,次年度と一部内容が前後し,それに伴った助成金も前後してしまったが,当初予定通りの目的(被験者謝金)に使用する.
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