研究課題/領域番号 |
24560304
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
甲斐 義弘 東海大学, 工学部, 准教授 (00320119)
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キーワード | ロボット / 人間共存型ロボット / 安全装置 |
研究概要 |
少子高齢化などを背景に,医療・福祉をはじめとする様々な分野で,安心・安全な人間共存型ロボットの開発・実用化が望まれている.しかし,ロボットの制御用コンピュータが破損した場合(以下,ロボット暴走時と表現する),ロボットは制御不能となり,人にとって非常に危険な機械になってしまうため,ロボット暴走時の安全性を向上させることが重要である.これまでに,本研究代表者らは,人に対するロボットの安全性の向上を目指し,ロボット暴走時に予め設定しておいたレベルの速度・加速度が発生した場合,機構的にロボットの関節をロックし停止させるメカニカル安全装置(以下,旧型安全装置)を提案してきている.しかし,旧型安全装置では,ロボット暴走時に予め設定しておいた速度あるいは加速度が発生すればそれを検知することが可能であるが,設定値以下でロボットが暴走・誤動作した場合は検知することができず,人に過大な力が作用する可能性がある.そこで,本研究では,旧型安全装置をベースとして,さらにロボット暴走時に予め設定しておいたレベル以下の低速度・低加速度でロボットが人と接触しても予め設定しておいたレベルの力がロボットに加わればロボットを停止させることが可能な機能も加えたメカニカル安全装置(新型安全装置)を提案し,それを用いた従来よりも安心・安全な人間共存型ロボットを開発することを目的とする.予め設定する速度・加速度・接触力の値はロボットに行なわせる作業に合わせて設定変更可能にする.平成25年度は,(i)平成24年度に設計した新型安全装置を用いた人間共存型ロボットを実際に製作し,(ii)製作した人間共存型ロボットを用いた実験を行い,実験結果に基づき新型安全装置の有効性を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した本研究目的を達成するため,平成24年度研究開始当初に,平成24年度では,(i) 本研究で提案する「速度・加速度・接触力に基づくメカニカル安全装置」(新型安全装置)の詳細設計・製作, (ii) 新型安全装置を搭載した1自由度ロボットの製作およびそのロボットを用いた実験,(iii) 新型安全装置を用いた人間共存型ロボットの構造の検討・設計を行うことを計画した.平成25年度では,(i) 平成24年度に設計した新型安全装置を搭載した人間共存型ロボットの製作,(ii) 製作した人間共存型ロボットにおける新型安全装置の動作実験を行うことを計画した.上記計画に沿って,平成24年度では,まず,本研究で提案する新型安全装置の詳細設計・製作を行った.次に,製作した新型安全装置を搭載した1自由度ロボットを設計・製作した.さらに,設計・製作した1自由度ロボットを用いて実験を行い,本研究で提案する新型安全装置を1自由度ロボットに搭載した場合に新型安全装置が目的通り動作するか否かについて検証を行った.1自由度ロボットにおける実験結果を踏まえて,「新型安全装置を用いた人間共存型ロボット」の構造の検討・設計も行った.次に,平成25年度では,平成24年度に設計した「新型安全装置を用いた人間共存型ロボット」を製作した.また,製作した「新型安全装置を用いた人間共存型ロボット」を用いて実験を行い,その実験結果から新型安全装置の有効性を検討した.以上のことから,おおむね当初計画通り本研究を実施しているため,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策は,以下のとおりである. 平成26年度も.平成24年度25年度に引き続き,平成24年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付申請書に入力したとおりの実施計画で実施する予定である.すなわち,平成24年度・25年度の実験結果を踏まえ,本研究で提案する新型安全装置およびそれを搭載した人間共存型ロボットにおいて改良すべき点について検討を行い,改良を行う.さらに,改良した人間共存型ロボットを用いて平成25年度に実施した実験に関して再実験および追加実験を行う.最後に,本研究で得られた成果のまとめを行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,主に,「人間共存型ロボットの製作」と「製作した人間共存型ロボットを評価するための実験」に研究費を使用するよう計画した.「製作した人間共存型ロボットを評価するための実験」において,専用の力センサを購入する計画であったが,この力センサを大学予算で購入することが出来たため,その分の予算も「人間共存型ロボットの製作」や「人間共存型ロボットを評価するための実験の消耗品」にあて研究の質的向上をはかった.また,「人間共存型ロボットの製作およびその評価実験」においても,研究室所有の部品で転用可能なものは転用した.以上のように,製作するロボットおよびそれを評価する実験環境を充実し研究の質的向上をはかりつつ,研究室所有の部品で転用可能なものは転用したため,次年度への助成金の繰り越しが生じた. 次年度の研究費は,当初の計画どおり,主に,平成25年度に製作した人間共存型ロボットの改良,人間共存型ロボットを用いた実験(追実験・再実験),成果報告(旅費含む)に使用する予定である.平成25年度に生じた繰越金は,次年度が本研究の最終年度であるため,当初計画していた成果報告のための旅費に追加して使用する予定である.
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