研究課題/領域番号 |
24560317
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岐阜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
北川 秀夫 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80224955)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 移動ロボット / 福祉 / 車椅子 / 障害物回避 / パワーアシスト / 全方向移動 |
研究概要 |
超高齢社会においては,日常生活で介護を必要とする高齢者及び加齢による障害者の増加が不可避である.申請者のグループでは,狭い屋内環境での移動,ベッドへの幅寄せ,作業を行いながらの横移動等に有効な全方向移動車椅子の開発を行っている.しかし,自由度の増加に伴う衝突の可能性をいかに回避するか,介助者が車椅子を押して動かす際に複雑な動作をいかに思いのままに実現させるかといった課題が残っている.本研究ではこれらの課題を解決し,搭乗者にとっても介助者にとっても操作性がよく,かつ安全な全方向移動車椅子を開発することを目的としている. 搭乗者自身が操作する自走モードにおいては,周囲360度の距離情報が取得できるようにし,搭乗者がジョイスティックを倒そうとした瞬間にその方向を検出して,移動方向の車椅子の速度成分及び障害物との距離からジョイスティックのインピーダンスを決定している.これにより,障害物のある方向に対しては移動指令を出すことが困難になった.さらに,測域センサを車椅子の前後方向の軸周りに回転させることにより,三次元の距離情報を得た.また,搭乗者を含めた車椅子全体の形状を考慮して,衝突の危険度を求めるとともに,車椅子の速度によるインピーダンスを変化させることで,遅い速度であれば(危険でない範囲で)ベッド,机等へ車椅子を寄せられるようにした. 介助者が操作する介助モードにおいては,実際に車椅子で前後,横,斜め方向並進,定点転回の動作を行い,加えられた力及びモーメントを学習させた.計測したハンドグリップ入力に応じて,ニューロファジィシステムにより介助者が意図する動作を求め,その運動を実現するよう,車椅子の駆動モータ入力を生成している.そして,介助者の操作性を評価するために,感応検査及び実際に加えられた力成分の解析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
製作した全方向移動車椅子において,交付申請書に記載した自走モード及び介助モードを実現している.さらに,三次元環境情報の獲得,車椅子の形状を考慮した衝突回避,介助入力の学習システムも実現しているため,当初の研究計画はほぼ計画通りに進んでいるといえる.
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今後の研究の推進方策 |
自走モードで開発した半自律障害物回避は,狭いドア等にぶつからずに通り抜ける操作支援にも適用可能である.車椅子を楕円体に近似することにより,まず二次元での通り抜け実験を行う.もしそれが困難な場合は,ジョイスティックを移動すべき方向に(操作の邪魔にならない程度に)動かすことにより,操作者(搭乗者)を誘導する制御を行う.なお,本手法は指定された目的地への誘導にも適用可能である.次に,前年度の研究で得られる三次元環境情報に基づき,この操作支援実験を三次元に拡張する.最後に,安全性の確認とともに,操作性の評価を行う.次に新たに全方位センサ(全方位カメラ)による三次元の全方位画像情報を統合することによって,環境認識能力を向上させる.また,カメラ等の情報と合わせた際により有効な測域センサの走査方法があれば,走査方法を変更する. 介助モードにおいては,自走モードで開発した障害物回避アルゴリズムを変形して適用する.障害物までの距離と車椅子の移動速度を考慮してパワーアシストゲインを変化させることにより,危険な方向へは車椅子を動かせないようにする.この際,急激に車椅子を止めるような動作になると,搭乗者の快適性・安全性,介助者の操作性・安全性に支障をきたすので,危険度に応じてスムーズな回避ができるようにする.次に,狭いドアの通り抜け等に有効な誘導制御を介助モードにも適用する.介助入力に対して少しの方向変化で安全な方向へ進めるようであれば,移動方向を変更する.ただし,大きく方向が変わると危険であるため,障害物までの距離と車椅子の移動速度を考慮することにより,最適な経路を計画する.さらに,全方向移動車輪をベッドに取り付け,上記と同様の介助モード実験を行う.車椅子とは縦横比が違うため,必要があればアルゴリズムの微修正を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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