研究課題/領域番号 |
24560327
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
矢野 浩司 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (90252014)
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研究分担者 |
山本 真幸 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (00511320)
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キーワード | パワーエレクトロニクス / パワーデバイス / ワイドバンドギャップ半導体 / SiC |
研究概要 |
炭化珪素(以下SiC)を材料とした静電誘導型トランジスタ(Static Induction Transistor : SIT)すなわちSiC-SIT において、素子活性領域に「少数キャリアの弱い注入」を発生させ、従来のバイポーラトランジスタと電界効果トランジスタの中間的な新たな動作モードを実現することで、従来のSiC-SITと同等の定常オン損失と高耐圧性能を維持しながら、同素子の課題であった製造歩留まりの低下及び遅いスイッチング速度の問題を克服するとともに、同トランジスタの産業機器用インバータ応用への展開を想定し、電圧定格の拡大を目指している。 本年度は、まずターンオン入力電圧レベルVonを調整して弱い少数キャリア注入を起こさせたSiC-BGSIT の動作原理および性能解明のためにシミュレーションを行った。その結果、同デバイスは埋め込みゲート構造であるため、埋め込み領域に寄生する抵抗および容量成分のためにVonを増加すると電流導通路よりもゲート電極直下に多量の少数キャリアが注入されることが予測できた。少数キャリア注入をチャネルに効果的に施すためには、埋め込みゲート長を適切に設計する必要性が示された。 またSiC-SITにおける電圧定格を、現状の1.2kVから3.3kVまで拡張させた設計指針の構築を行い、この設計指針に基づき3.3kV定格素子の試作を行った。その結果、試作素子の降伏電圧は3.3kVには達しなかったものの3.0kVであり、特性オン抵抗は9.16mΩcm2のノーマリーオフ型の特性を示した。この性能は同程度の電圧定格のパワーデバイスの中でも世界最小のオン抵抗である。同時にオン抵抗やゲート閾電圧の温度依存性、オン抵抗の素子構造寸法依存性も明らかにした。また降伏特性は1500Vからリーク電流が増加し始める減少が見られ、製造プロセスとの関連性についての課題が顕在化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画である素子の設計指針の確立および試作の目標がほぼ達成されたため。特に確立した設計指針に従って3.3kV素子を試作した結果、同程度の降伏電圧を示し、特性オン抵抗もは同定格の競合素子の中で世界最小という顕著な特性を得ることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
25年度では当初の研究計画はほぼ達成したが、上記研究実績の概要で示したとおり、素子設計および試作においてそれぞれ課題が顕在化したため、26年度はそれを解決する方策を検討する予定である。また同時に競合デバイスとの性能を比較し、提案デバイスの利点や応用分野を明確化し総括する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では国際学会ICSCRM2013(宮崎で開催)に参加する予定であったが、大学の業務のため参加できず、そのため次年度使用額が発生した。 H26年度は本研究の総括や成果公表をする必要があることを考慮し、この使用額は連携研究者との打ち合わせのための国内旅費、学会参加、論文投稿に関連する費用に充てる予定である。
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