研究課題/領域番号 |
24560328
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
佐藤 敏郎 信州大学, 工学部, 教授 (50283239)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | パワーエレクトロニクス / LSIパッケージ / パッケージレベルDCパワーグリッド / DC-DCコンバータ / パワーインダクタ / 金属磁性微粒子 / 複合材料磁心 |
研究概要 |
本研究は、LSIの次世代パワーデリバリーの基盤技術としてLSIパッケージへの電源集積化の基盤技術の確立を目的に行っているものである。平成24年度の研究実績は以下の通りである。 1.複合材料磁心の開発;ガラス/エポキシ系インターポーザへのインダクタ集積を目的として、金属磁性微粒子分散複合材料磁心の作製プロセスの検討を行った。本研究では、金属磁性微粒子として平均粒径1.1μmの非還元系カルボニル鉄粉を採用し、二液性エポキシ樹脂をバインダに用いたカルボニル鉄粉/エポキシ複合材料磁心を開発した。二液性エポキシ樹脂を採用することでスクリーン印刷後の焼成温度を150℃程度に低温化でき、インターポーザとの熱プロセス互換性を実現した。非還元系カルボニル鉄粉は20nm程度の微結晶構造を有するため保磁力が小さく、磁気モーメントがうず型にCurlingし、表面に磁極を生じない特異な磁気構造を有するためエポキシ樹脂中に分散した場合の微粒子間の静磁結合が小さく、微粒子分散性に優れる複合材料磁心を実現できることを明らかにした。 2.複合材料磁心を用いたプレーナパワーインダクタの試作;パッケージレベルDCパワーグリッドのメイン電源用の大電流インダクタへの適用を目的として、厚さ35μmの電気メッキ銅スパイラルコイルをカルボニル鉄粉/エポキシ複合材料磁心で埋め込む疑似閉磁路型のプレーナパワーインダクタを試作した。100MHzでのインダクタンスは5.5nH、Q値は15であり、5.5Aの直流電流でもインダクタンスが低下しない大電流インダクタ実現の目途をつけた。 3.その他;複合材料磁心とフェライトめっき磁心を組み合わせたハイブリッド磁心がインダクタの高周波Qの向上に大きく寄与することをデバイスシミュレーションにより明らかにした。これは、コイル導体間への複合材料の充填により、疑似的な閉磁路構造を実現できるためである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属磁性微粒子分散複合材料磁心の開発については、磁性微粒子の分散性の向上が重大な課題として挙げられた。 金属磁性微粒子として用いた非還元系カルボニル鉄粉の磁気モーメントは粒子内でうず型にCurlingし、表面に磁極を生じない特異な磁気構造を有し、エポキシ前駆体溶液中に混合撹拌した際、微粒子間の静磁結合が小さいため、微粒子の凝集を起こしにくく、微粒子分散性に優れる磁性ペーストを実現できた。これにより、微粒子間の電気絶縁性が向上し、高周波においても損失の少ない磁心を実現できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、複合材料磁心とフェライトめっき磁心を組み合わせたハイブリッド磁心型プレーナパワーインダクタを試作するともに、CMOSスイッチDC-DCコンバータのパッケージ集積化を目指す。 磁心装荷インダクタは高透磁率磁心によるデバイスサイズの縮小だけでなく、磁気シールド性に優れるため近傍配線やグランド層との相互作用を抑制でき、パッケージ内部にインダクタを三次元的にレイアウトする際に大きな利点を有することを電磁界シミュレーションにより明らかにしている。 上記の利点を検証する目的で、磁心材料を用いない空心インダクタを適用したDC-DCコンバータと比較することによって、複数の電源を集積するシステムインパッケージ用パッケージレベルDCパワーグリッドを構成するに必要な技術として、本技術の優位性を最終年度までに実証する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費の使用は以下のとおりである。 1.インダクタ作製に必要な消耗品;152万円 化学薬品、高圧ガス、フォトマスク、メタルマスク、ガラス基板、カルボニル鉄粉など 2.その他;8万円 旅費等で支出する。
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