研究課題/領域番号 |
24560331
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
白井 康之 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (60179033)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 配電系統 / 分散電源 / 系統安定度 / 負荷モデル / 動特性 |
研究概要 |
電力系統における負荷は、昨今の分散型エネルギーの普及などに伴い非常に複雑化しており、これまでの静的な負荷が主とする負荷モデル化手法では不十分となってきている。そのため動的な特性まで模擬可能な新たな負荷モデル化手法が求められている。手本研究で提案している微小擾乱注入手法は、電力系統に影響を与えない微小な擾乱を配電系統に注入し、その応答特性から負荷の特性を推定する手法である。 この提案する分散電源を含む負荷系統の動特性測定法の模擬負荷系統による有用性検証実験を目的とし、本年度は、まず実験室スケールの模擬電力系統(2kVA,220V:同期発電機とリアクトルを用いた配電線モデル)を構築し、この系統に任意の微小な有効無効電力変動、高調波電流を注入できる装置を製作した。これを用いて,簡易模擬系統に微小擾乱を注入し、系統応答を解析して負荷特性を求める基礎実験を実施し、提案手法の基本的な動作を確認した。 あわせて、多くの負荷や発電機を含んだ実負荷電力系統に近い模擬系統を,系統シミュレーションツールを用いて構成し、これにより提案手法の実用性について検証した。 さらに、計算機シミュレーションによって、求めた負荷動特性モデルを用い電力系統安定度計算を行って、その妥当性・問題点を抽出し、その特性の妥当性の検証・系統運用への利用法の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度で予定していた、模擬負荷系統における動特性測定の基礎実験に関しては、発電機モデルと模擬送電線用リアクトルを用いて模擬配電系統を構築し、有効電力/無効電力の微小モジュレーションを注入装置も製作した。モジュレーションのパターン(例えば正弦波状(周波数可変)、チャープ状、三角波状など)の選択、有効無効電力の同時注入、各相独立注入などについて測定手法の基本検討実験が実施できた。その結果、各部の電圧・電流・電力に現れる応答を測定し,これからシステム同定を行い、それぞれの状態変数間の伝達関数を導出することができた。(今年度論文発表予定) さらに、電力系統シミュレーションツールを用いた種々の分散電源を含む負荷系統のオンライン動特性測定実験についても、回転機系分散電源、定インピーダンス・定電流・定電力負荷の割合を変えた混合負荷や、誘導機負荷などから、より実系統に近い種々の特性を持つ負荷系統を構成し、その動特性を提案手法によるオンライン計測からシステム同定を用いて求めるシミュレーション実験を実施した。(電気学会全国大会で報告済) 求めた動特性モデルを用いて、系統擾乱時の動特性、安定度シミュレーションを行い、その有用性を検討した。 以上、おおむね予定していた研究計画を少し前倒して、順調に進捗しており、成果が出てきている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画の目的は、分散電源などの導入が進んできた負荷系統の動特性のオンラインデータからの系統的な測定手法の提案・開発を行い、その有用性評価と負荷状態の把握・監視、保護、制御の可能性について、具体的なハードウェア構成を明らかにしつつ、モデル実験および計算機シミュレーションによって検証を行うことにある。 モデル実験系統とシミュレーションコードの整備がほぼ整ったので、今後、提案手法の有用性を検証するため、太陽光発電や燃料電池を想定したインバータ電源を含む負荷モデル系統を実験室レベルで構築し、種々のパターンの電力外乱や高調波電流を注入したときの応答から、動特性を推定する基礎実験を行う。さらに、より実負荷系統に近い複雑な系統構成での、提案手法の検討を行うため電力系統シミュレーションツールを用いて、種々の構成の負荷電力系統を構築し微小外乱による動特性のオンライン測定とこれによる運転状態監視の検証を行う。 任意の時点での負荷系統の動特性の把握が可能になれば、瞬時電圧低下などの任意の擾乱に対する負荷系統全体の応答が予測出来る。より詳細な安定度計算が可能となる。また、変電所側から見た負荷側の分散電源の連系状況、運用状況が推定できる。潮流制御機器,エネルギー貯蔵機器の負荷電力系統への導入評価、新しい利用法の開発、分散電源の導入形態やその制御法の確認、各機能に必要な機器容量などの評価、新しい監視・制御システム技術の開発につなげることを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
モデル実験系統とシミュレーションコードの整備がほぼ整ったので、今後、提案手法の有用性を検証するための負荷モデルの製作、計測・解析装置の整備を随時行っていく予定である。そのため、電子部品などの購入を計上している。 また、成果発表のための国内および海外旅費、論文投稿費用を計上している。
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