研究課題/領域番号 |
24560332
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三浦 友史 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90354646)
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研究分担者 |
伊瀬 敏史 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00184581)
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キーワード | パワーエレクトロニクス / モジュラーマトリックスコンバータ / モジュラーマルチレベル変換器 / マトリックスコンバータ / 低周波送電 / 大容量電力変換器 / 周波数変換 |
研究概要 |
モジュラー化されたH-ブリッジセルを直列接続することによって大容量化が容易な交流/交流直接変換形変換器であるモジュラーマトリックスコンバータ(MMxC)の低周波送電への適用を検討している. 平成25年度は,マトリックスコンバータを流れる電流が一部の経路に集中してしまう同一周波数の交流/交流変換においても,各H-ブリッジセルのキャパシタ電圧平衡制御によって,安定的な運転を継続できることを9レベル(4段構成)のMMxCの回路シミュレーションによって確認するとともに,1 kWの試験装置においても運転を実証した. 一方,連系する2つの系統間に零相電流が流れることも確認されたが,これを補償する制御方法も提案し,その効果を回路シミュレーションによって確認した.さらに,同一周波数の電力変換においてはキャパシタ電圧平衡制御と干渉することが明らかになったが,双方のトレードオフ関係においてバランスよく制御する方法を提案した. 試験装置については,主回路をこれまでの1段構成から2段構成に改造し,計18個のH-ブリッジセルの制御系をDSPおよびFPGAを用いて構築した.商用周波数における1 kWの周波数変換を実証するとともに,5レベルの階段状の電圧波形の出力を確認した.また1段構成の場合に比べて,電圧・電流波形の総合ひずみ率がそれぞれ改善されることを示した.さらに各セルのキャパシタ電圧も十分な精度で平衡して制御できることを実証した. これらの成果については,PEDS'13,ECCE Asia 2013,電気関係学会関西連合大会,パワーエレクトロニクス学会第201回定例研究会,電気学会半導体電力変換・モータドライブ合同研究会,電気学会全国大会において,それぞれ発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モジュラーマトリックスコンバータの電力制御,キャパシタ電圧平衡制御,零相電圧補償制御などの基本的な制御方法はほぼ提案し実証できた.また,新たに明らかとなった同一周波数変換におけるキャパシタ電圧平衡制御と零相電圧補償制御の干渉についても解決策を提案できた.これらの制御法は4段構成の回路のシミュレーションや試験装置において実証されており,当初の計画以上に進んで実行できていると考えられる. 一方,実験装置についても,セルの2段構成への改造を終了し,またその制御系についても信号線を減らすなどの工夫を加えて構成することができた.5レベルのマルチレベル波形も実現でき,またそのため波形の総合ひずみ率の低減も可能となった.平成26年度は,主回路において各セルの直流コンデンサの容量の低減などの改造の可能性があるが,試験装置については種々の運転を試験できる環境がほぼ整ったといえる. 低周波周波数変換における電流経路の集中や,同一周波数変換における電流経路の集中および零相電流の抑制手法などについての理論的な考察に加え,可変周波数の風力発電などへの適用についても検討を進めており,研究は当初の計画通りに進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,モジュラーマトリックスコンバータの,(1)キャパシタ電圧平衡制御と零相電圧補償制御の干渉に関する理論的考察,(2)同一周波数の非同期系統連系用の制御およびキャパシタ電圧平衡制御の電力の流れの理論的考察,(3)瞬低・系統不平衡運転時の制御,等を検討する.またモジュラーマトリックスコンバータの応用として,(a)低周波送電への適用,(b)可変周波数・可変電圧発電機を用いた風力発電への適用,等についてさらに検討を進める. 実験回路については,キャパシタの容量を低減する改造を行うことを予定している.また,多目的三相電源を用いて瞬時電圧低下および不平衡などの条件を実現し,そうした事故や不平衡時の運転特性について試験を行う. シミュレーションおよび実験を通じて,低周波送電への適用に限らず,モジュラーマトリックスコンバータの制御に関わる課題を抽出しその解決策について検討する.またこれまで得られた成果については,論文誌に投稿することを予定している.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度において行った回路の2段構成への改造においては,素子の駆動回路上に論理回路を組み込むことによって,FPGAからの信号線を減らす工夫ができたことにより,FPGAボードを新たに購入する必要がなく,費用を当初の予算よりも少なくできた.また制御法をシミュレーションで十分に確認してから試験装置に実装したことにより回路の破損が少なく,保守にかかる費用を低減することができたため. 試験装置主回路の各セルのキャパシタをより小容量のものに変更する,素子の耐圧を低いものに変更するなどの容量低減・性能改善のための改造を予定しており,予算を使用する予定である.また,零相電流補償制御などを実証するため,零相電圧を測定するための新たな回路を付加する予定である. 得られた成果については,国際学会等で広く発表することを予定しており,参加費,投稿費などとして,使用することを考えている.
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