研究課題/領域番号 |
24560333
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
舩曳 繁之 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (60108123)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 太陽光発電 / 電力変動 / カオス / 予測 / 電力平滑化制御 |
研究概要 |
大学の屋上に設置している既設の日射強度及び太陽電池パネル計測システムを用いて、日射強度と太陽電池パネルの表面温度測定データの収集を行った。なお、このシステムでのデータ収集は引き続いて実施している。この収集したデータを用いて、太陽光発電電力変動のカオス性を検証するため、観測した時系列データをタケンスの埋込み定理を用いてn次元空間に埋込み、この埋め込んだベクトルがカオス性を有するかの検証を行った。データを埋め込むためには、埋め込む空間次元数と遅れ時間を決定する必要がある。これに、自己相関解析と相関次元解析により行った。決定した次元数と遅れ時間で埋め込んだベクトルのリアプノフ指数解析を行い、太陽光発電電力変動がカオスであることを明らかにした。これにより、局所ファジィ再構成法により700秒先の電力を予測し、20%以下の精度で予測できることを明らかにした。 また、太陽光発電システムの電力平滑化制御法として移動平均法と指数平滑化法の手法の比較を、シミュレーションソフトPSIMを用いて行い、エネルギー貯蔵装置低減効果は指数平滑化法の方が大きいことを明らかにした。 さらに、本研究費で導入した太陽光発電実験システムを用いて、実際の太陽光発電電力を観測しながら、実時間でカオス短期間予測が可能なことの実証試験を始めており、既にその一部成果を発表した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の実施計画の実施状況は以下のとおりである。「(1) 一サイトの日射強度、温度データの収集」は、屋上に設置している計測システムによりデータ収集を継続実施している。「(2) 太陽光発電電力変動のカオス性の検証」は、家庭用太陽光発電システムを対象に、収集したデータを用いて検証を行い、カオス性を有することを明らかにした。「(3) カオス短期間予測を用いた電力平滑化制御シミュレーションを実施」は、(2) で検証した結果に基づき、シミュレーションにより予測を導入した電力平滑化制御の有効性を明らかにした。このように、平成24年度の計画はすべて実施済みである。 また、大規模太陽光発電の電力変動のカオス性についても、800kWの太陽光発電サイトのデータを入手し、この発電所サイトでの電力変動解析、カオスを用いた短期間予測のシミュレーションを始めており、その研究成果は本年3月に開催された電気学会全国大会で一部報告をした。本研究費で導入した太陽光発電実験システムを用いて、実時間での太陽光発電電力カオス短期間予測の検証を開始し、その研究成果の一部を本年3月に開催された電気学会全国大会で報告した。さらに移動平均法以外の電力平滑化制御法として、指数平滑化を用いた手法の評価も始めている。
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今後の研究の推進方策 |
太陽電池パネルが大面積に配置されるメガソーラや大規模団地に広く設置された場合、電力変動は1サイトでの電力変動が時間的および空間的に重なり、この均し効果により変動周波数帯域が低周波領域に推移する。そのため、1サイトで検討したカオスパラメータを再び同定する必要が生じる。そこで、以下の手順に従って研究を進める。 (1)一サイトの日射量、PVパネル温度のデータより時間的および空間的広がりを考慮したメガソーラや大規模団地での太陽光発電電力データを作成する。作成したデータは、県や電力会社が建設しているメガソーラでのデータと突き合わせることにより、作成したデータの検証を行い、大規模発電電力データの作成方法を確立する。 (2)確立した手法で作成した太陽光発電電力データを、平成24年度と同様の手順に従ってカオスでの予測可能性を検討する。この場合は、周波数領域が低周波に推移しているため、予測時間はより長くなることが期待できる。そして、設置するPVパネルの広がりと予測時間との関係を明らかにする。 電力平滑化システムは家庭用に比較してより大規模になるが、発電電力の予測時間も長くなる。したがって、このような場合にはエネルギー貯蔵装置として何が適しているのか、また平滑化する周波数帯域は幾らにすべきかを検討する必要がある。そこでメガソーラサイトでの電力平滑化を目指して、エネルギー貯蔵装置、平滑化制御法(予測時間)をどのように決定するかの考え方を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果の公表を行うための海外出張旅費(カナダ・バンクーバー)と国内出張旅費、研究を進めるための謝金、および研究成果の学会誌掲載のための費用として使用する予定である。
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