本研究では、超電導磁気浮上式鉄道の地上コイルに用いられている絶縁樹脂の劣化予兆現象の一つである部分放電を非接触で検出する電磁波センシング技術の開発を実施している。本年度は以下を実施した。 1.部分放電位置特定のための信号処理法の検討、2.欠陥を有する地上コイルの特定実験結果への提案信号処理法の適用 なお、上記2の実験は公益財団法人鉄道総合技術研究所との共同研究によるものであり、本申請時に「本研究を遂行する上での具体的な工夫」の項目で記載している。 上記1では、昨年度まで電磁波センシングシステムに短・長区間平均比率法(STA/LTA: the Short-term-average to Long-term-average Ratio Method)を組み込むことにより、部分放電から放射される電磁波の複数アンテナへの到達時間差を求めていたが、地上コイルの実運用配置(推進コイルと浮上・案内コイルを配置)とした場合に電磁波の到達時間差が算出できない場合があった。本システムでは電磁波の到達時間差から時間差曲線を作成し、その曲線が地上コイルを通過する場合、その地上コイルで部分放電が発生していると推定している。そこで、本年度はSTA/LTA法ではなく平滑化コヒーレンス変換(SCOT: the Smoothed Coherence Transform)を導入し到達時間差を求めた。上記2の実験では、屋外に設置されている模擬ガイドウェイ側壁に推進コイル、浮上・案内コイルを実運用と同様に複数組(3組)配置し、欠陥を有する推進コイルに電圧を印加した。同実験で得られた電磁波信号にSCOTを適用した結果、到達時間差をより正確に算出でき、欠陥を有する推進コイルを特定することができた。 本研究期間全体を通じて、部分放電が発生する地上コイルを非接触で特定できる車載型電磁波センシングシステムを実現した。
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