研究課題/領域番号 |
24560336
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
花本 剛士 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 教授 (30228514)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | パワーエレクトロニクス / マトリックスコンバータ / ディジタルハードウェア制御 / FPGA |
研究概要 |
交流電源から大きさや周波数の異なる交流電源を直接変換する回路であるマトリックスコンバータ(MC)の静止機器への適用の拡大を行うことで電力の有効利用・高効率運転を行うことを目的とし、以下の成果を得た。 1.三相‐三相MCを電力系統の補償装置に適用できることをコンピュータシミュレーションにて示した。ここでは係数図法(CDM)と言われる、制御器を含む特性多項式の係数からゲインを設計する手法を、MCを中核とした電力系統補償装置(UPFC)へ適用するモデルを作成した。MCを制御可能な理想可変電源としてモデル化し、これと制御器とを含めて、1入力1出力系(SISO)となるように工夫した特性多項式を導出した。設計すべきゲインは4個であり、式中では和や積が混在した形で構成されているため、解析的な導出が困難である。そこでPSO(粒子群最適化)を用いて最適解を探索した。PSOの評価関数は係数図が標準形となるよう設定した。提案手法は、MATLAB/Simulinkを使用してその有効性を確認した。 2.出力を単相高周波にしたMCを静止機器に適用するためのディジタルハードウェア回路及び制御回路を構築し、実験機にて有効性を確認した。ここではFPGAを用い、電流形PWMコンバータのスイッチングパターンを基本動作とし、制御周期毎に極性を切り替える方式で稼働させた。電流制御系で出力側電流振幅及び電源側位相制御を行えるような制御器を実装した。 また、MCの出力を高周波交流のまま使用するような装置の場合には、負荷側の時定数が大きい場合に電流の強制転流が生じると主回路素子が損傷する恐れがある。そこで、サンプル周期1マイクロ秒での電流取込と平均値演算をFPGAによって実現することで回生モードを組み込んだ高周波MCの制御系を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画は主に2つであり、1つはCDMを用いたMC制御器ゲインの設計である。これについては、申請書では三相-単相MCから始める予定であったが、シミュレーションを基にした電力系統の補償装置への適用についても同時進行で行っており、三相-三相の制御手法を思いついたため、こちらから取り組んだ。申請者が有している技術の1つであるPSOでのゲイン設計を組み合わせることで出力変化に対する高速応答が実現でき、負荷外乱についても満足できる結果を得ることができたため、計画を概ね達成できたと判断した。 また、制御系のFPGAへの実装についても、単相高周波のMCに対して実施し、3組のPI(比例-積分)制御器を組み込むことで出力電流と入力位相が制御できることを実験装置にて確認できたこと。回路時定数が大きい回路の高周波出力を実現する方法を提案、実装まで行えたため計画は概ね達成できたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず、三相-単相高周波のMCの制御手法の確立のため、実験機の作成および制御器ゲインの設計チューニングを推進していく。実験機では、高周波トランスで負荷回路と電源側とを絶縁することで実機と同一環境下でのデータ収集・解析を行う。ディジタルハードウェア制御の実装に関してはスイッチング損失の軽減や出力波形から直接パターンを生成でき、適用範囲が広がると考えられる直接変調方式PWM(DDPWM)を検討することを考えている。実装の際はFPGAのコード生成をMATLAB /Simulinkで行うことで開発効率の向上を目指す。 さらに三相-三相MCについても電源側フィルタの設計やゲート駆動回路の作成により実験機で提案手法の有効性が確認できるよう推進していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度については、現有の実験装置を改良せずに成果を得ることができたため電子回路基板製作費の一部が未使用となったが、次年度以降の装置製作に使用する予定であり、以下のように考えている。次年度の研究費の使用計画としては、推進方策に記載したように現有している高周波単相出力のMCを基にして、新に三相-三相MCを製作するために必要な材料や部品を購入する。制御機能部は共通して使用できるが主回路及びゲート駆動回路は新規作成が必要となる。また、現有の装置も含めて提案手法の有効性を確認するために変換器入出力の効率や電力測定が必要と考えパワーアナライザ(日置3390)を購入計画としている。また研究成果を公表するために旅費についても計画している。
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