研究課題/領域番号 |
24560336
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
花本 剛士 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 教授 (30228514)
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キーワード | パワーエレクトロニクス / マトリックスコンバータ / ディジタルハードウェア制御 / FPGA / DDPWM方式 |
研究概要 |
交流電源から大きさや周波数の異なる交流電源を直接変換する回路であるマトリックスコンバータ(MC)の静止機器への適用の拡大を行うことで電力の有効利用・高効率運転を行うことを目的とし、今年度の成果として以下を得た。 1.前年度に三相‐三相MCを電力系統の補償装置に適用できることを提案し、コンピュータシミュレーションであるMATLAB/Simulinkを使用してその有効性を確認しており、今年度は外乱や目標値応答への速やかな追従を行うため制御器をPI(比例-積分型)制御器から、近似微分先行型PI-D制御器に変更した。制御系の設計は、試行錯誤的に行いゲイン探索を行った結果良好な応答を得ることができた。制御器設計手法については、幾つかの方法を用い、引き続き検討中である。 2.MCのスイッチングパターンとして、所望する出力電圧指令値より、出力電圧を用いて直接変調率を計算できるDDPWM(Direct Duty Ratio Pulse Width Modulation)に着目し、FPGAを用いたディジタルハードウェアへの実装を行った。回路構築は、まず既存の三相-単相型のMCを対象に行い、同時に三相-三相MCのハードウェア製作に着手した。DDPWMを用いることで出力を直流から任意の交流まで自由に変換できることを実機にて確認した。同時に、DDPWM方式を拡張することで、可変電源からでも一定周波数の交流を取り出せることや、バッテリー等への直流機器への充電ができることをコンピュータシミュレーションにて確認した。新規MCハードウェア作成に関しては、主回路はほぼ完成させた。FPGAを用いた三相出力用DDPWM方式のスイッチングパターン作成は未完のため動作確認は単相用に作成した回路で行った。三相出力の一部を使用した回路で正常に出力されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度については、DDPWM方式を用いたスイッチングパターンのFPGAへの実装、動作確認については概ね達成できたと判断した。実装に際してシミュレーションでの動作をFPGAに落とし込む部分とシミュレーション中には考慮していなかった転流動作の実装にやや時間がかかったが、最終的には単相出力装置にて直流出力から交流出力までを確認できている。単相出力が実現できたことについては、MCの使用用途として新たに、交流出力と蓄電装置への充電を同時に行うことを示すことができ、そのためにDDPWM方式が有用であることを見出したため、本方式の実現は意義があると考えている。 制御系の構築に関しては、電力系統補償装置(UPFC)に関しては、係数図法(CDM)を用いて、PI制御器から近似微分先行型PI-D制御器のゲインを構築することを試みていたが設計が困難であり現状は試行錯誤的な結果を用いているが、伝達関数に着目した方法や新規の方法についても検討を続けている。一方で、実機に関しては、簡単なフィードバック系を構成しDDPWM方式の単相交流出力の制御が行えることが確認できており、順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、最終年度でありDDPWM方式を用いた三相-三相MCの実現と、制御系の構築を行う。本研究目的であるMCの静止機器へ適用を拡大するために、三相-単相混在出力装置の開発を行う。本方式を進めていくことは、特に自然エネルギー発電を用いた独立型電源や、交流負荷と蓄電を含めた電源構成を考える場合に有効であると考えらえる。この際に、単相交流の制御と直流の制御を1つのMCで行えるような制御構成を考えていく。平成25年度より、検討しているFPGAのコード生成をMATLAB /Simulinkで行う方式については、Simulink上での確認がほぼ完成しているので、FPGA側に変換し、実装の実現を目指す。この独立電源型電力変換装置については現在海外の大学と共同して検討を進めており、電力が不安定な地域への安定電力供給の実現について研究を進めていくことを検討中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
三相-三相MCを完成させるために必要な材料を購入したが、一部の測定器購入分に余りが生じた。 研究費の使用計画としては、三相-三相MCを完成させるために必要な材料や部品を購入する。また研究成果を公表するために旅費についても計画している。
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