交流電源から大きさや周波数の異なる交流電源を直接変換する回路であるマトリックスコンバータ(MC)の静止機器への適用の拡大を行うことで電力の有効利用・高効率運転を行うことを目的とし、最終年度の成果として以下を得た。 1.前年度に引き続き三相‐三相MCを電力系統の補償装置(UPFC)の制御器設計手法を検討した。本年度は新たにFRIT(Fictitious Reference Iterative Tuning)を適用することを提案した。FRITを用いれば初期ゲインを用いた1組の入出力データを用いるだけで、UPFCの出力及び位相を同時に制御するpq軸ゲインをオフラインにて独立して設計することができる。また、目標値応答と外乱応答を同時に満足するため2自由度制御器を採用した。この場合設計するゲインが6~10個と多くことがあるが、提案手法を用いることで適切な応答が得られることをコンピュータシミュレーションであるMATLAB/Simulinkを用いて確認した。採用した2自由度制御器は、従来より用いているPI型を基本としているため実装しやすいことも特徴といえる。 さらに、DDPWM(Direct Duty Ratio Pulse Width Modulation)の特性を利用して、交流・直流混合出力を実現する独立型電源システムをMCで構成し、提案手法の有効性をシミュレーションで確認した。 2.FPGAを用いたディジタルハードウェアへの実装については、前年度よりMCのスイッチングパターンとして、出力電圧を用いて直接変調率を計算できるDDPWMのロジック回路を設計・実装しており、本年度は三相-三相型のMCに拡張し、転流回路を含めたハードウェアを製作、その動作を確認した。最終的には三相-三相MCの制御器を含めた全回路をFPGAに実装しP型制御器を用いて正常に制御できることを確認した。
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