電解質水溶液表面を進展する進展性局部放電の発光スペクトルを取得し,発光種の分析を行った。また,窒素分子の発光スペクトル(N2 Second Psitive band)のスペクトル分布について,別途解析的に求めた分布曲線に対して,最小2乗法を用いてフィッティングを行い放電空間の温度の推定を行った。電解質の種類と電解質水溶液の抵抗率を変えて以上の観測を行った。電解質としては塩化ナトリウム,塩化カリウム,塩化マグネシウムを用い,電解質水溶液の抵抗率を変えることによって電流を変化させた。検討の結果次のことを明らかにした。 ①電解質水溶液の抵抗率が高く(81Ωcm)電流が小さい(10A程度)場合,電解質に起因する発光スペクトルは観測されず,放電空間の温度は2500~5000Kであると推定された。これらのことから,電流が小さい場合,進展性局部放電の放電形態はグロー状あるいはストリーマ状であると推定した。 ②電解質水溶液の抵抗率が低く(20Ωcm)電流が大きい(20A程度)場合,塩化ナトリウム以外の電解質の場合は電解質に起因する発光スペクトルは観測されなかったが,塩化ナトリウムの場合はナトリウムの発光スペクトルが観測された。また,水素の発光スペクトルも観測され,放電空間の温度は8000K以上であると推定された。これらのことから,電流が大きい場合,進展性局部放電の放電形態はアーク状であると推定した。
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