研究課題/領域番号 |
24560348
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
中川 聡子 東京都市大学, 工学部, 教授 (70134898)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | エレベータ / 非常停止装置 / 衝撃緩和 / 磁気粘性流体 / セミアクティブダンパ / 非線形制御 / 磁界制御 |
研究概要 |
1.研究の意義・重要性 ビルの高層化に伴うエレベータの高速化は,システムを構成する電気・機械要素に過酷な負担を強い,異常運転の遠因となる場合がある.また我が国が地震頻発国であることを勘案すると,異常運転時や地震などの強い揺れに際して作動するエレベータ「非常止め装置」は,安心安全のためには欠かせない装置である.しかし本装置の急激な停止特性により,利用者が皮肉にも負傷するケースが発生している.本研究では機械摩擦力によってかごを停止させる従来の「非常止め装置」に,エレベータ非常停止用制御ダンパ(以後,Eダンパと呼ぶ)を付加した新しい装置を提案し,人体衝撃緩和の観点から安心安全なエレベータシステムを構築することを目的とする. 2.H24年度の実施状況 本研究の初年度となる平成24年度は,(1)エレベータ装置に許容される衝撃力を定量的に評価すること,(2)エレベータ非常停止を模擬する小型実験装置を製作すること,(3)衝撃緩和のための非常停止用制御ダンパ(Eダンパ)の製作準備を行うことの3点を中心に進められる.(1)に関しては,「人体衝撃」および「エレベータの非常止め装置性能基準」に関する文献調査を行い,あるべき制御仕様の決定に至っている.(2)に関しては,エレベータ小型実験装置を製作し,機械摩擦を利用した従来の非常止め装置の動きを模擬するシミュレータを,ACサーボを用いて製作した.最後に(3)に関しては,Eダンパの本体となる磁性流体封入用非磁性シリンダ・ピストンの設計,ならびにEダンパに併設されるばねの選定を行った.これらの成果は,国際会議で発表された後,予稿集論文として1件,電気学会研究会で発表された後,研究会論文として2件,すでに公表している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度となる平成24年度は,(1)エレベータ装置に許容される衝撃力を定量的に評価すること,(2)エレベータ非常停止を模擬する小型実験装置を製作すること,(3)衝撃緩和のための非常停止用制御ダンパ(Eダンパ)の製作準備を行うことの3点を中心に進められた. (1)に関しては,「人体衝撃」および「エレベータの非常止め装置性能基準」に関する文献調査を行い,あるべき制御仕様の決定に至っている. (2)に関しては,エレベータ小型実験装置を製作し,機械摩擦を利用した従来の非常止め装置の動きを模擬するシミュレータを,ACサーボを用いて製作した.ただし,自由落下部(エレベータかご部)を垂直ガイドするローラにガタつきが観測されたため,このローラ部を,摩擦の非常に小さいリニアベアリングとリニアガイドに置き換え,特性を改善する予定である.また非常止め装置のシミュレータは製作完了したものの,周波数特性のみが測定されている段階なので,今後は,従来の非常止め装置の挙動を再現するためのサーボ動作の確認を行う予定である. (3)に関しては,Eダンパの本体となる磁性流体封入用非磁性シリンダ・ピストンの設計,ならびにEダンパに併設されるばねの選定が完了している. 以上,遅れを生じている部分もあるが,他方,次年度に予定していた「強い非線形性をもつ非常止め装置の制御系」および「エレベータ系」で構成される統合システムの定式化が前倒しで行われ,すでに非線形制御器の設計に着手している.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については,先に記載したように,一部遅れの生じた作業を急ピッチで進めるとともに,前倒しで着手している項目については,作業を確実に完了させる予定である. (1)遅れている研究項目;エレベータ小型実験装置のローラ部の補修については,リニアガイドとリニアレールの購入により,ガタつきなく落下実験が可能となるよう,ガイド部の変更を行なう.また,落下部(エレベータかご部)の運動を計測するために画像センサを取付け,位置や加速度センサの出力と共にLABVIEWに取り込み,処理するプログラムの開発を行なう予定である. (2)前倒しで進めている研究項目;実験装置がほぼ完了し,その諸元が確定したので,制御系の設計とシミュレーションによる特性確認を行ない,より効果の期待できる制御器を決定する予定である. (3)外部への情報発信;初年度に得られた知見を国際学会などに投稿し,外部の技術者との意見交換の中で,研究の深度化を図っていく予定である. 以上の3点について,次の1年間で完遂することにより,最終年度に行なう検証実験につなげる予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度である平成24年度に使用した物品費が約40万円,旅費が約5万円,人件費・謝金が約50万円,その他が約5万円である.24年度の申請額が150万円であったことから,次年度に繰り越す額が約50万円(48万5,548円)となった.この繰越金は主に,実験装置製作時の金属加工や加振機の購入をとどまり,学生の「ものづくり力」で対処したことによるものである.反面,この作業を行なう上で,装置の設計および加工などに専門知識の提供を受けたことによる謝金が若干増えている.また,研究成果の発表を行った国際会議が札幌で開催されたため,旅費が大幅に軽減されたことも繰り越しの発生した要因となっている. 以上のことからトータルとして,48万5,548円の繰り越しが生じたことになるが,これは次年度の各費目の申請配分額(物品費70万円,旅費50万円,人件費30万円,その他20万円;合計170万円)のうち,参加を予定しているIECON-2013(オーストリア)とICEMS-2013(韓国)で開催される国際会議の旅費と研究補助に要する人件費に振り分ける予定である.したがって,次年度の各費目については,物品費70万円,旅費60万円,人件費68万5,548円,その他20万円となる.
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