研究課題/領域番号 |
24560348
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
中川 聡子 東京都市大学, 工学部, 教授 (70134898)
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キーワード | エレベータ / 制御ダンパ / ブレーキシミュレータ / 非線形制御 / 衝撃緩和効果 / 安心安全 |
研究概要 |
本研究の2年目となる平成25年度は,申請時の実施計画に寄れば,(1)Eダンパの製作と小型実験装置への実装,(2)加振器等によるEダンパの減衰特性の測定,(3)提案する非常止め装置の衝撃緩和を目的とした制御系設計の3点である。以下,これら3項目に関し,得られた成果と意義についてまとめる。 (1) Eダンパの製作と小型実験装置への実装:非磁性かつ非導電性の材料で削りだしたシリンダに磁性流体を封入し,その外周にコイルを巻いて通電することで,実際のエレベータシステムに実装可能な,非常にコンパクトなEダンパが製作できた。コイル電流の制御で磁性流体に磁界を加え,Eダンパの減衰比を測定したところ,この様なコンパクトな構造でも十分な範囲の減衰特性がリアルに実現できたことは,実用性の観点から大きな意義がある。また,初年度に製作したエレベータ非常停止装置のブレーキ特性を出力できる小型実験装置は,初年度(昨年度)の製作当時に比べ,本年度,大幅な特性の改善が達成でき,ほとんど既存のブレーキが模擬できるところまで改良できた。この装置にEダンパやバネ,エレベータかご相当部を繋ぎ,エレベータの非常停止動作の模擬実験装置が完成した。 (2) 加振器等によるEダンパの減衰特性の測定:本年度,測定を終了した。コイル電流の制御によって得られるEダンパの減衰比は0.2~0.75まで自在に調整できることがわかったことは大きな成果である。 (3)提案する非常止め装置の衝撃緩和を目的とした制御系設計:上記の減衰比データを用いて設計した非線形制御系を基に,実機仕様でのエレベータ非常停止動作シミュレーションが行われ,従来の非常停止装置に比べ大きな衝撃緩和効果が得られることがわかった。この結果をまとめたものが,最終年度である平成26年度の5月に開かれる国際会議に採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の2年目となる平成25年度は,申請時の実施計画に寄れば,(1)Eダンパ本体の製作と小型実験装置への実装,(2)加振器等によるEダンパの減衰特性の測定,(3)提案する非常止め装置の衝撃緩和を目的とした制御系設計の3点である。 (1)に関しては,Eダンパ本体の製作と小型実験装置への実装は完了している。Eダンパは,非磁性のシリンダに磁性流体を封入しシリンダ側面にコイルを巻くことで,コンパクトな設計とすることができた。また初年度に製作した「エレベータ非常停止装置のブレーキ特性を模擬する小型実験装置(ACサーボモータ使用のシミュレータ)」は,初年度(昨年度)の製作当時に比べ,本年度は大幅な特性改善が達成できたことから,現在,この成果を公表すべく論文に纏めている。以上,この項目はクリアできたと考える。 (2)の 「加振器等によるEダンパの減衰特性の測定」に関しては,本年度測定を終了し,そこから得られた制御可能な減衰比の範囲内で,以下(3)に記載する論文の非常停止動作をシミュレーションしている。以上,この項目についてもクリアできたと考えている。 (3)の「提案する非常止め装置の衝撃緩和を目的とした制御系設計」に関しては,上記の減衰特性を基に設計された非線形制御系を用い,実機エレベータ仕様でのエレベータ非常停止シミュレーションが行われ,最終年度である平成26年度の5月に開かれる国際会議に採択されている。以上,この項目についても,クリアできたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の進め方については,平成25年度の研究が当初の予定通りに進んでいることから,最終年度となる平成26年度では,実施計画通りに進める予定である。 具体的には,(1)非常停止模擬実験を行い,本研究で提案するEダンパの衝撃緩和効果の検証を行うこと,(2)エレベータの非常停止時における挙動を模擬した力学モデルを用いて行う「計算機シミュレーション結果」と,(1)で得られた「実験結果」との比較を行うことの2点を中心に進められる。 さらに,研究の最終年度であることから,設計と検証のPDCAサイクルを回し,得られた知見を基に制御系の再設計および修正を繰り返し,より良い制御系の構築に繋げる予定である。 また,平成25年度で得られた研究成果を学会発表等を通じて公開し,専門家との議論を重ね,最終年度で得られた知見を速やかに論文に纏めるなどして完成度を高めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に使用した物品費が約30万円,旅費が約30万円,人件費・謝金が約80万円,その他が約1万円未満である.25年度の予算額が約220万円であったことから,最終年度である次年度に繰り越す額が約80万円となった.この繰越金は主に,当初,申請者自身が参加を予定していた2件の国際会議(釜山・ウィーン)が学内の業務と調整がつかず参加できなかったことと,高精度位置センサ(かご部落下距離測定用および非常停止装置摺動距離測定用)2基の購入をひとまず見合わせたことによるものである。 なお国際会議については,研究協力者が代わりに参加し,資料の収集や他の研究者との議論を行っている。また高精度位置センサに関しては,大切な予算であるため,保有している加速度センサ信号の処理で代替できないものかと模索したことから,購入を慎重に判断したものである。検討の結果,加速度信号の処理では対処が難しい事が判明し,次年度購入する予定である。 以上のことからトータルとして,約80万円の繰り越しが生じたことになるが,これは次年度の各費目の申請配分額(物品費10万円,旅費40万円,人件費30万円,その他20万円;合計100万円)のうち,上記の高精度位置センサ2種(2基)購入のための物品費,および,最終年度に急ピッチで行われる実験における人件費に振り分ける予定である.したがって,最終年度である次年度の各費目については,物品費約50万円,旅費約40万円,人件費約80万円,その他約10万円の計約180万円で行うこととする.
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