研究課題/領域番号 |
24560349
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
湯本 雅恵 東京都市大学, 工学部, 教授 (10120867)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ガス絶縁 / 六フッ化硫黄 / 窒素 / 初期電子 / 電子付着 / 脱励起 |
研究概要 |
地球の温暖化の対策として、電力機器の絶縁ガスとして不可欠となっている六フッ化硫黄(SF6)ガスの使用低減のため、窒素を主体とした混合ガスの使用を提言している。しかし、窒素は一度放電が発生すると多くの内部エネルギーを長時間保持する活性種が発生し、空間に蓄積する性質がある。その結果、放電が停止した後、長時間経過しても空間から電子が発生してしまい、電圧の印加によって放電が誘発されてしまう危険性が高い。そこで、活性種を短時間で効率的に脱励起するために微量のガスを混合してその効果を確かめる取り組みを行っている。 これまでの研究では、窒素に一酸化窒素(NO)や二酸化炭素(CO2)あるいはSF6を混合すると、窒素中に比べて発生する電子数を大幅に低減できることが確かめられている。しかし、発生する電子数の減少するメカニズムは十分に把握できていない。 そこで、本研究では、電圧を印加した後に放電が発生するまでの放電遅れ時間を測定することによって、発生する電子数を算出し、放電停止後に発生する電子数の減少の推移を測定した。また、混合するガスの粒子数をパラメータにして同様の特性を得た。その結果、電子を付着する性質の大きいSF6と内部エネルギーを開放する作用の大きいNOあるいはCO2とでは発生電子数の抑制機構に違いがあることを実験的に明らかにすることができた。さらに、NOは秒オーダ以上の時間領域においては電子数の抑制効果は非常に大きいが、1秒以下の時間領域ではむしろ電子数が多くなることが明らかとなった。以上の結果から、内部エネルギーの解放による効果は電力機器の絶縁ガスに使用するには適さないことが明らかとなった。 以上の結果から、初年度の成果として窒素を主体とする絶縁ガスを利用する場合には、窒素の脱励起を促す分子の混合は適さず、電子を付着する性質を有するガスの選定が有用であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
SF6代替ガスの選定が本研究の目的である。その際に、自然ガスの選定が環境問題を視野に入れれば重要な条件となる。炭酸ガスの使用も検討されているが、総合的には窒素の選択が妥当と判断している。その場合、本研究で取り組んでいる、内部エネルギーを蓄積する窒素の活性種による問題を解決する必要がある。そこで、問題を解消するガス分子を混合する方法が考えられてきたが、ガスを選定することが初めに必要である。当初の研究計画では、複数のガス分子を選定し、実験的に比較検討することを想定していた。 しかし、今年度の研究では、内部エネルギーを解放する作用の大きいガスは、短時間領域では大きな問題を引き起こす危険性が大であることが明らかとなった。この事実はガスの選定をする上で、選定条件を一つ減らすことになり、大きな成果と判断している。今後は、付着性の大きなガス分子に絞った実験を進めることができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
密閉空間中で窒素を主体とするガスを封入して、電圧を繰り返し印加して放電を行う実験手法は今年度と同様である。混合するガスとして、電子を付着する性質がある自然ガスとして、まず酸素に着目する。また、地球温暖化ガスではあるが、二酸化炭素も電子を付着する性質を有するので、微量の混入をした測定を行ってみる。 混入するガスの種類の選定対象は狭めることができたが、混入する比率の決定とあわせて、使用する圧力条件を実験的に確かめる必要がある。これは、反応が粒子間の衝突頻度に支配されるためであり、混入するガス分子の数密度と窒素の数密度の割合に支配される可能性が大だからである。 一方、NOの脱励起作用が効果的でなかった理由を並行して検証する実験に取り組む。具体的には、内部エネルギーが放出される際の微弱な発光を検出し、平成24年度に得られた結果の妥当性を確かめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
使用頻度が極めて高く、1年に一回程度の置き換えが必要となる、高電圧を高速でスイッチングすることが可能なリードリレーの納期が想定以上に長かったため、H24年度の予算を約3万円繰り越すことになった。新年度が始まり、前年度中に入手する予定であったリードリレーを手配し、当初の実験計画通り、繰り返し放電特性の測定を進める。
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