研究課題/領域番号 |
24560351
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
花岡 良一 金沢工業大学, 工学部, 教授 (90148148)
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キーワード | 交流高電圧 / 沿面放電 / ストリーマ進展 / 植物系絶縁油 / 鉱油 / トラッキング / 溶解ガス解析 |
研究概要 |
植物油系絶縁油中の交流沿面放電特性について詳細な研究を行い,これまでのガス成分分析結果も踏まえて,沿面放電の振る舞いを明確にした。 パームヤシ脂肪酸エステル油(PFAE油),菜種油,鉱油中の沿面放電が,針電極と背後電極を有する油/プレスボード系を用いて,60 Hz交流45 kVrms までの印加電圧で研究された。 沿面ストリーマは,一定印加電圧の下で,多くの枝を持つ様相でプレスボード表面上をゆっくりと進展する。ストリーマの先端では,電離領域を示している輝点を持つ。菜種油と鉱油中における輝度はPFAE油中よりも明るい。ストリーマは,背後電極に垂直方向より平行方向に進展し易い。菜種油と鉱油中のストリーマ速度は,PFAE油中よりも速く,ストリーマの成長は同じ放電時間でPFAE油中よりも長くなる。また,菜種油と鉱油中のストリーマは,多くの小さな輝点を持つ多くの細い枝分かれがあるが,PFAE油中では,太い枝分れになる。プレスボードの貫通破壊は,ストリーマの進展中に突然起こる。貫通破壊が起こるまでの時間は,印加電圧が上昇すると減少する。 溶解ガス解析(DGA)から得られたC2H2ガスの生成は,沿面ストリーマチャンネル上またはその近くの局部領域で,少なくとも500℃以上の温度上昇をもたらすことを暗示した。放電様相に似たプレスボード表面上の白い痕跡が,ストリーマ成長と同期して現れた。これは,電気的,熱的効果による乾燥プロセスによる。沿面放電は,プレスボード表面上に導電性の炭化を含む黒い枝状トラッキングを残す。このようなトラッキング損傷は,交流沿面放電の進展を大いに促す。これらの成果は,1通の研究会論文,2通の国際会議論文,および1通のIEEE Full Paper(掲載決定)として纏められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物油系絶縁油中の沿面放電現象は、不明な点が多く十分に理解されていなかった。本研究の遂行によって、交流電圧印加時の沿面放電特性が明らかにされた。さらに、放電の進行によって、プレスボード表面に残されるトラッキンングの発生メカニズムが、溶解ガス解析によるC2H2ガスの検出から、明確にされた。 これらの成果は、今後、鉱油の代替絶縁油として、環境に優しい植物油系絶縁油を適用した電力機器の絶縁設計に大きく貢献するものと期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
植物油系絶縁油中の沿面放電現象について、雷サージを模擬したインパルス電圧による特性の明確化、および劣化絶縁油中の沿面放電現象の明確化が必要であり、研究を続行して遂行する。特に、インパルス電圧による沿面放電現象は、超高速度カメラを用いた時間分解的考察を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、絶縁油および固体絶縁材料の導電率(抵抗率)、誘電損失(tanδ)など、絶縁材料の物理定数計測、並びに絶縁油の電気的挙動計測のために用いるシュリーレン装置の光源改良を予定しており、装置の改良費が見込まれる。 油中の沿面放電現象は、介在する固体絶縁材料の物性値に大きく左右されるので、物性値と放電の関連性を明確化する。また、放電が発生した時、ストリーマの進展に伴う流動や放電挙動を光学的に計測する。
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