研究課題/領域番号 |
24560353
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
一柳 勝宏 愛知工業大学, 工学部, 教授 (80064955)
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研究分担者 |
雪田 和人 愛知工業大学, 工学部, 教授 (60298461)
後藤 泰之 愛知工業大学, 工学部, 教授 (70178458)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 太陽光発電 / 予測 / スマートグリッド / 雲画像 / 災害 / 燃料電池 / 水素発生 / 電力安定供給 |
研究概要 |
一昨年の東日本大震災以後,再生可能エネルギーの固定価格買取制度が実施され,自然エネルギーの有効利用に対する世論や政治機運がこれまで以上に高まっている。特に,太陽光発電(以下,PV)が広範囲に系統導入されることが予想され,その出力変動を把握,予測することが急務となっている。また,PVの大量導入に対して電力系統を安定化させるためにスマートグリッドの導入が要請される。一年のうちで,5月のゴールデンウィーク時期はPVによる発電量は最大となる季節ではあるが,一般のオフィスや工場での電力需要が少なく,余剰電力が発生しており,経産省ではできる限り多くのPV設備利用者が送電網に接続できるように稼働時間の抑制措置までも検討されるようになっている(日本経済新聞:2013年3月15日)。このような状況において,本研究テーマとしても,PV発電を中心とした自然エネルギーに基づく発電設備を活用し、平常時のみならず、災害時における孤立地域の電力自給機能を確保し、ライフラインの早期復旧を実現できるスマートグリッドネットワークを構築し,研究を進めた。研究の主な項目は以下の通りである。 1.新エネルギー利用による電源ネットワークシステムの構築:水素を燃料とする発電装置「1000W燃料電池システム」の導入による余剰電力の有効利用と設備利用率向上を図った。 2.電力安定の供給に関する研究:太陽光発電(または風力発電),二次電池(蓄電池),燃料電池,さらに水素発生・水素貯蔵設備によるネットワーク構成によるスマートグリッドシミュレータ装置を計画,準備した。 3.自然エネルギー予測手法の検討:全天雲画像による日射強度の相関性を検討し,PV発電出力予測手法の提案できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までに,PV発電を中心とした自然エネルギーに基づく発電設備を活用し、平常時のみならず、災害時における孤立地域の電力自給機能を確保し、ライフラインの早期復旧を実現できるスマートグリッドネットワークを構築し,研究を進めている。平成24年度に実施した研究概要と成果は以下の通りである。 1.新エネルギー利用による電源ネットワークシステムの構築に関して,水素を燃料とする発電装置「1000W燃料電池システム」の導入を行った。当初予定設備の購入不可能による発注,納期が遅れたものの代替設備「1000W燃料電池システム」が導入でき,24年度末の時点で,本システムの基礎的特性試験が可能となった。 2.電力安定の供給に関して,太陽光発電の模擬装置として直流安定化電源をプログラマブルによる出力可変型直流電源に改良した装置を用い,汎用パワーコンンディショナ(PCS)を介して,二次電池,燃料電池,および直流負荷(水素発生設備)とDC連系とたスマートグリッドを構築した。その結果,余剰電力の有効利用とPV設備の利用率向上による安定電力供給に関する翌年度(2年目)の実験的検討を可能としている。 3.自然エネルギー予測法に関して,簡便にデータ収集可能な予測手法として天空画像を用いるPV出力予測システムを提案し,全天雲画像装置による画像データと日射強度との相関性を調べた。その結果,雲画像の色彩(彩度,色相,明度)と日射強度との間に比較的相関性が認められ、天候推移に依存していることが確認した。これらの成果として,雲画像から日射強度ならびにPV出力の変動量を面的予測することが可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度(研究期間1年目)は,研究設備導入準備期間として経過し,2年目以降,本格的実験研究を行う。具体的な研究の進め方は以下の通りとなる。 1.新エネルギー利用による電源ネットワークシステムの構築に関する実験では,新たに水素発生システムを追加導入を予定している。DCネットワーク構成したミニチュアスマートグリッドに,PV発電模擬,燃料電池,DC負荷としての水素発生装置,蓄電池を導入連系接続する。燃料電池の等価回路とパラメータ同定,水素発生から燃料電池発電までの等価伝達関数表示の検討,水素発生,二次電池,燃料電池の協調制御,水素発生装置導入による二次電池容量削減など研究を進める。 2.電力安定の供給に関して,上記1.により構築したミニチュアスマートグリッドを用いることにより,「負荷の急峻変動によるグリッド電力安定供給」,「PV出力急峻変動による電力安定供給」,「PV発電,燃料電池および蓄電池の最適容量の検討」など,PV大量導入による余剰電力有効利用と設備利用率向上の実験的検討を進める予定である。 3.自然エネルギー予測法に関して,これまでの天空画像解析と日射強度との相関性の検討に加えて,天空画像による雲高,雲量の推定と予測手法の検討を行う。雲量は全天空領域に対する雲領域の割合[%]として雲画像から推定可能であり,また,雲高は2点での同時撮影による雲画像から簡単な三角関数計算から推定可能となることが分る。さらに,赤外カメラ導入により赤外天空画像による雲高,雲量の推定の検討を行う。赤外画像から雲の温度が推定可能であり,また,可視光に比べて雲のエッジが明確に把握できる特徴がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
余剰電力は水素ガスとしてエネルギー貯蔵可能であることに着目し,水素発生装置を購入する。これにより,将来のPV設備の大量導入による余剰電力抑制とPV設備の利用率向上が図れると考える。さらに,PV発電,燃料電池,DC負荷(水素発生装置),蓄電池をDC連系としたミニチュアスマートグリッドとするためにスマートグリッドシミュレータ設備を購入する。同設備はバッテリー,PCS(パワーコンディショナー),DC電源など,いずれも汎用品で構成され,比較的廉価な設備として購入可能である。 さらに,赤外カメラ画像は雲のエッジ明確化と薄い高層雲(可視光では撮影困難)の解析の容易化が可能となることから,魚眼レンズ付き赤外カメラの導入を計画し,購入費用の不足分は別予算(本学特別研究助成内定分)を予定している。
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