研究課題/領域番号 |
24560357
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研究機関 | 秋田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
安東 至 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (20212665)
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キーワード | AC/DCコンバータ / ロスレススナバ / インターリーブ / ソフトスイッチング / 高力率 / 高効率 / PFC |
研究概要 |
平成25年度は,提案する「ロスレススナバを組み入れたインターリーブ式完全ソフトスイッチング高効率AC/DCコンバータ」に関して,平成24年度末に試作した実機の動作において更なる回路調整を行い,(1)ソフトスイッチングの達成,(2) 3%程度の効率向上,(3)入力力率98%以上,(4)出力電圧変動率1%以下,(5)正弦波入力電流,(6)入力電流総合歪率5%以下,(7)電源電圧80V~220Vへの適用可能を負荷条件などを変更して確認し,効率以外の点においては予想通りの結果を得ることができた。効率については,ハードスイッチング時と比較したところ,低負荷時においてはIGBTの導通損が高く,ハードスイッチングを行った方が高い効率が得られた。しかし,重負荷になるにつれ相対的に導通損の影響が薄れ,1.5kW負荷においてはソフトスイッチングを行う本コンバータが1.5%程度だが高い効率が確認できた。なお,これについては素子にかかる電圧と電流波形を精査し,損失分離を行い損失の詳細な内訳の調査とその対策を検討中である。 また,本コンバータ回路はできるだけ追加補助回路を設けること無く高効率を達成するために,一つのスナバコンデンサに蓄えられたエネルギーを回収,活用してソフトスイッチングを達成している。そのため,入力電流の小さい範囲でスイッチング時に電流の上昇率が高く,電流指令値を超える電流が流れることにより入力電流に歪が生じる。そこで,ソフトスイッチングが達成可能な条件内で一時的にスイッチングを停止し,臨界モードの電流パルス密度を制御する入力電流波形改善制御回路を開発し,試作機に組み入れ,実験を行った。入力電流波形改善制御回路を組込むことで,入力電流高調波総合ひずみ率は7.3%から4.6%に低下し,目標の5%以下を達成するとともに良好な正弦波波形を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では,提案する「ロスレススナバを組み入れたインターリーブ式完全ソフトスイッチング高効率AC/DCコンバータ」において,試作機を作成するとともに,(1)使用するすべてのスイッチング素子でのソフトスイッチングの達成,(2)1kW負荷時において従来より3%程度の効率向上,(3)入力力率98%以上,(4)出力電圧変動率1%以下,(5)正弦波入力電流,(6)入力電流総合歪率5%以下,(7)電源電圧80V~220Vへの適用可能 について実験を行い確認する計画であった。 これに対し,平成25年11月時点で試作機による実験によりこれら計画事項のほとんどが確認でき,国際会議で報告している。さらに当初の想定以下の結果しか得られなかった効率などについては損失分離などの手法で妥当性と改善策などを検討できる状態に進展している。また,理論的見地からの一設計法についても検討を始めており,ほぼ計画通り進展しているといってよい。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は入力電流波形改善制御を含む提案AC/DCコンバータの制御,入力電流波形,損失について理論的見地から解析を行うとともに,素子における損失分離を行い,一層の高調波電流と損失の低減を探る。また,提案AC/DCコンバータは,インターリーブ接続による各相の電流位相差をできるだけ180degに近くずらすことで入力電流歪みの低減を可能にしている。その他,一つのスナバコンデンサによるソフトスイッチング動作の実現のためにも,スイッチング条件に他相の電流や電圧の情報を必要とする。そのため,リアクトルやスナバコンデンサの大きさによりスイッチング周波数の変動が生じ,これらの大きさ次第では提案AC/DCコンバータのメリットを生かした上で,目標とする特性を達成できない場合もある。そこで,目標特性に対する主回路設計方法を理論的に明らかにし,シミュレーションによりその妥当性を検証する。 提案したインターリーブ方式の回路にロスレススナバを組入れ高効率化と波形改善を可能にする手法は,平成25年度まで検討した昇圧型AC/DCコンバータのみならず,昇降圧型AC/DCコンバータや降圧型DC/DCコンバータに対しても有効であると考えられる。そこで,本高効率スイッチング手法を適用した昇降圧型AC/DCコンバータや降圧型DC/DCコンバータを検討し,主回路と制御回路を提案,開発するとともに,シミュレーションや実験を通じてソフトスイッチング動作や力率,歪み率などを確認し有効性を検討する。 研究費については,これら試作機製作のためのICや電力用半導体スイッチング素子,基板,ラックの購入を行う。また,提案している高効率スイッチング手法のその他電力変換器への応用についての打合せを連携研究者と行うとともに,学会での発表,情報収集のための旅費に活用する。 以上が終了しだい,研究結果をまとめる。
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