研究課題/領域番号 |
24560358
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 豊田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
安藤 浩哉 豊田工業高等専門学校, 情報工学科, 教授 (30212674)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ワイヤレス電力送電 / ミリ波 / マイクロ波 / 移動体 / 暗号化 |
研究概要 |
マイクロ波送電技術は,エネルギー問題や地球環境問題を解決し得る宇宙太陽発電システムの基幹技術であるだけでなく,離島等への電力伝送や,電気自動車へのワイヤレス給電などに用いることのできる技術であるが,送電者や受電者が一対一に特定できない,強い電力に曝露されることによる人体への影響がある,などのことが懸念されるため,本研究では,給電側に指向性のあるパラボラアンテナ等を用い,マイクロ波電力信号を,暗号化情報を重畳させたマイクロ波電力信号を,移動物体に送電する,ミリ波電力送電システムの開発を目的としている。 そこで,本研究では,初年度の平成24年度に,一次放射器の給電装置や支持柱が電波の通路を遮ることがないオフセットパラボラ・アンテナ(有効開口径750mm,開口効率75%)から構成される給電アンテナを組み上げた。また,電磁界解析ソフトを導入し,これを用いて設計中心周波数が3GHz, 6GHz, 8GHz, 10GHzの一次放射器の設計を行い,3GHzの一次放射器の製作をおこなった。次に,設計・製作した一次放射器と前述のオフセットパラボラ・アンテナを組み合わせたものを2組準備し,これらを1m~4mの距離を隔て対向させて,伝送性能を評価した。その結果,2つのアンテナ間の距離を離しても,パラボラアンテナの主ビームの電力半値幅を考慮した分の低下は見られるものの,それ以上に電力が大きく低下することはないことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オフセットパラボラ・アンテナ(有効開口径750mm,開口効率75%)から構成される給電/受電アンテナを組み上げ,これらをそれぞれ単独で使用したり,これらを互いに対向させて実験目標である数m~数十mの距離のマイクロ波送電に関する実験評価が行える環境を整えることができた。また,電磁界解析ソフトを導入し,アンテナ(1次放射器)のフィールドパターンがシミュレーション上評価できるようになり,今回のマイクロ波送電システムに必要な一次放射器を設計・製作することができた。また,レクテナとして動作させるのに欠くことが出来ない,単純な整流回路の製作は勿論ではあるが,平面回路型平衡不平衡変換器を含んだ新しいタイプの整流回路の提案を計画しており,このための検討を開始している。しかしながら,1次放射器の放射特性が充分ではなく,送電電力に対する受電電力の比が1/100以下で,壁掛け時計等を駆動するのに充分な受電電力が得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
パラボラアンテナの一次放射器として,ホーンアンテナ等を用い,マイクロ波電力を広帯域でかつ効率よく伝送する方法の検討を行なう。また,移動物体へのミリ波送電に偏波面が及ぼす影響についても考慮して,直線偏波による電力伝送のみならず,円偏波による電力伝送についても検討する。また,今回の研究では,受電側(レクテナ側)の整流回路でのRF/DC変換効率の向上が欠かせないため,使用するダイオード等の選定,最適な回路構成についても検討する。 さらに,指向性を変えることのできる制御装置を備えたパラボラアンテナとミリ波送受信機を組み合わせて,小電力マイクロ波送電システムを開発し,ミリ波送信器から送信される電力のみで動作する壁掛け時計へ送電してデモンストレーションを行なう。10 畳(16.562m2)のリビングでの使用を想定して,4m×4m 四方の部屋の壁にかけた複数の壁掛け時計に個別に給電することができるかを検証する。 最終年度には,こうして作られた小電力マイクロ波送電システムの電力信号に,IEEE 802.11i に準じた暗号化情報を重畳させることで,送電側と受電側(制御対象物)とが1 対1 に結び付けられたセキュリティの高い電力伝送システムを実現する。また,複数の無線制御ロボットを使ったマイクロ波送電システムの実証実験として,複数のラジコンカーに,暗号化制御信号を重畳したマイクロ波で給電・制御を行う実証実験を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
パラボラアンテナの一次放射器として用いるホーンアンテナを購入し,マイクロ波電力を広帯域で扱うための高周波部品を購入する。また,ミリ波送電に偏波面が及ぼす影響について考慮するために偏波分離器を購入または製作する。そして,受電側(レクテナ側)の整流回路で使用する,RF/DC変換効率の向上に寄与するような低電圧で動作するダイオードや,チャージポンプ回路に必要なコンデンサ等の高周波部品を購入する。さらに,ミリ波の照射方向を変えるために,パラボラアンテナを駆動するアクチュエーターを購入し,0.1~1W程度のミリ波を得るのに必要な送信装置を製作または購入する。そして,電力のワイヤレス送電のデモに必要な壁掛け時計や研究の進展具合ではラジコンカー等を購入する。 システムの開発に必要な議論や研究成果の発表を行うための国内出張旅費(名古屋⇔東京,名古屋⇔大阪 等),研究成果の発表のための海外出張旅費(日本⇔米国 等)としても使用する。
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