3次元集積回路が注目を集める中、シリコン貫通ビア(Through Si via: TSV)の役割が極めて重要となってきた。現在、TSVプロセスをどの段階で行うのかについては、3次元集積回路の構成等によって様々であるが、一般的にはLSIプロセスを行った後で、TSVプロセスを行うのがLSIの歩留まり等の点で有効である。しかしながら、LSIを作り込んだ後でTSVプロセスを行う場合、一旦形成したLSIを劣化させないため、プロセス温度の低温化が必須となる。 多くのプロセスの中で、成膜に関して言えば、絶縁膜とその上のバリヤメタルが比較的高い温度で形成されているため、その両者を少なくとも200℃以下で成膜することが切望される。しかしながら、これらの膜を低温プロセスで成膜した場合、絶縁性あるいはバリヤ性が劣化し、所望の特性を得ることが難しい。 一方、我々は、バリヤメタルにおいては既にスパッタ法とラジカル窒化を併用することにより、200℃以下で良好なバリヤ性を持つ膜を成膜できることを実証している。本研究では、絶縁膜であるSiNx膜の低温プロセスに着手し、低温成膜が膜の特性に与える影響について検討した。その結果、200℃以下のプロセスにて良好な特性を有するSiNx膜の作製に成功すると共に、低温化により起こる膜質の劣化の要因を定量的に評価することができた。
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