研究課題/領域番号 |
24560362
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松岡 隆志 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (40393730)
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研究分担者 |
花田 貴 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (80211481)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 窒化物半導体 / InGaN / MOVPE |
研究概要 |
今年度は、白色発光ダイオードを実現するための要素技術の確立とデバイスの試作を行った。まず、発光層となるInGaN結晶の成長を加圧型有機金属気相成長法を用いて試みた。より高In組成の結晶を得るため、結晶成長の面方位について着目した。従来の面方位である(0001)面と、反対の方位である(000-1)面を用いて、同一成長条件でInGaNを成長した。(0001)面ではInN組成で4%であるのに対し、(000-1)面では12%と高組成の結晶を得ることができた。これは再表面の構成原子の違いに起因する。すなわち、(0001)面ではIII族原子(Ga, In)で、Inが再蒸発しやすいのに対し、(000-1)面ではV族原子(N)で、表面を被覆することで脱離を防ぐためと考えられる。さらに表面モフォロジーはなだらかな凹凸を有するヒロック構造をとり、比較的平坦な結晶が得られることが分かった。 本研究の目的である赤色発光を有するInGaNを得るには、より高InNモル分率のInGaNが必要である。そこでまずはInNの結晶成長を試みた。図1にSEM像を示す。従来の(0001)面上に成長したInNはドット状の構造を示しているのに対し、(000-1)面上に成長したInNはプレート状で、平坦性に優れていることが分かった。つまり高InNモル分率InGaNを平坦に作製するには(000-1)面が適していることが分かった。 LEDおよび太陽電池の試作を行った。n型ドーパントとしてテトラメチルシランを、p型ドーパントとしてビスメチルシクロペンタジエニルマグネシウムを用い、伝導制御可能な成長条件を確立した。デバイス構造としては、p型およびn型層としてGaNを、活性層としてInGaN/GaN多重量子井戸を用いた。作製したLEDから発光波長467 nmの青色発光を示し、デバイス作製のための設備が整っていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、オール窒化物半導体による白色光源の実現である。これを実現するために必要な要素技術は青色、緑色、赤色発光層である。これらは組成の異なるInGaNで構成し、様々な発光層を得るためには広い組成域で高品質な膜を得る条件を模索する必要がある。特に緑色や赤色の発光を得るためには結晶成長が難しいとされている高InNモル分率InGaNを作製する技術を開拓する必要がある。そこで、平成24年度は当初からInGaN層の設計、成長を計画しており、順調に遂行している。特に狙いとしていた窒素極性面を用いることで、従来のIII族極性面と比較してもInを取り込みやすいことがわかり、緑色や赤色発光を得るために有用であることが分かった。またInNにおいても同様に、窒素極性面を用いることで高品質かつ平坦な膜が得られることが分かった。さらに加圧型MOVPE装置を用いて結晶相純度の高いInN結晶を作製するための最適条件を見出し、この成長条件にGaを添加することで、赤色発光に用いる高InNモル分率InGaNの実現が容易であると推測される。 デバイス作製技術も準備が完了しており、平成25年度は、白色LEDの構造設計と構造最適化を図るが、今年度の知見を利用して遂行可能な段階まで到達していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
窒化物半導体による白色LEDの構造設計と構造最適化を行う。特に、緑色の高輝度化と赤色発光に主眼を置く。光学評価によって、材料の物性定数を把握しながら、素子設計を行う。その後、エッチングなどの加工技術と電極形成技術等の素子作製プロセス技術開発を行う。最終的に、素子の作製を行う。本提案では、チップ一個で、複数の活性層の組成と膜厚を制御することにより三原色の発光が可能となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は結晶成長に用いる原料・基板と、発光特性の評価に用いる分光器を購入する。原料は、アンモニアガス、水素ガス、液体窒素ガスを購入する。成長用基板はサファイア基板を100枚程度購入する。さらに研究成果を国内学会にて発表し、論文投稿を1~2件程度行う予定である。
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