研究課題/領域番号 |
24560363
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
石井 清 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30134258)
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研究分担者 |
佐久間 洋志 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40375522)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究では、新しく工夫したガスフロースパッタ法(GFS法)により、いままで他に報告例のない、いがぐり状やサイコロ状の純鉄(Fe)の微粒子を、再現性よく作製できることを実証し、微粒子作製法として新たな技術を確立することを第一の目的としている。その研究と合わせて、それらの磁性微粒子の応用、例えば、高機能な磁性流体の実現、高効率な磁気分離(ドラックデリバリーなど)の実現、“急速変換磁場細胞膜開孔法”と呼ばれる新しいガン治療法の開発、などに供するために、作成した磁性微粒子の物性評価と磁界応答解析を行う。いがぐり状やサイコロ状のFe微粒子は、大きな磁化と大きな形状磁気異方性を持つので、磁界に対する運動が特異なものとなり、前述の応用上極めて有用と考えられ、電子材料分野における『新しいコンセプトの微粒子作製法の確立』『非球形磁性微粒子の応用』という二つのイノベーションを期待している。 本年度は、主に作製条件と得られる鉄微粒子の性質(主に、形状と粒径)との関連性を実験的に詳細に調べること、また、粒子成長に大きな影響を持つスパッタガスの流れについて計算機シミュレーションを行い、実験結果との対応を検討することを目指した。 その結果、実験的には作製条件と微粒子の形状の関連性について多くの事実を明らかにできた。すなわち、どのような作製条件においていがぐり状やサイコロ状の粒子を作り分けできるか傾向を明らかにした。一方、スパッタガスの流れに対するシミュレーションにおいて、様々な機構(ガス出口の形状、および圧力等)を設定することによりガスの渦を生じさせることができることが推察された。ガスの渦は微粒子の粒径や形状に大きな影響を与えることを期待していたが、現時点では、実験との対応が明確になっていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、1000Paの高い圧力で高速スパッタが可能なガスフロースパッタ法(GFS法)を用いることにより、いままで他に報告例のない、いがぐり状やサイコロ状の純鉄(Fe)微粒子を、再現性よく作製することを第一の目的としている。我々の先行研究において、それらの粒子成長とスパッタ条件の関連性がある程度知られていたが、十分な理解が得られていなかった。また、粒子形状制御を的確に行い、しかも効率良く作製するためには、スパッタガスの流れに渦を作り粒子成長を完了させる必要性が明らかになっていた。 今年度の研究においては、スパッタ条件を大きく変化させて粒子成長を行い、粒子形状と成長条件の関連性を明確にできた。この点は、ほぼ計画通りの実験が進められたと考えている。 一方、スパッタガスの流れに対するシミュレーション結果では、様々な機構(ガス出口の形状、および圧力等)を設定することによりガスの渦を生じさせることができることが推察された。ガスの渦は微粒子の粒径や形状に大きな影響を与えることが考えられ、スパッタ蒸気がスパッタガスにより移送されるときに渦を作ることができれば、スパッタ蒸気の成長が完了するとともに生成した粒子が容器に付着することなく捕集器に回収することが期待される。そこで、その状態において粒子作製を行った結果、残念ながら期待した結果が得られていない。その原因について、シミュレーター(計算機プログラム)の原因が考えられる。用いているシミュレーター「ペガサス」は広く用いられており、信頼性が高いが、使用方法に問題があることが考えられる。 今年度は、実験とシミュレーション結果の対応を明確にすることが最重要課題であったので、以上の理由により、この評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、1000Paの高い圧力で高速スパッタが可能なガスフロースパッタ法(GFS法)を用いることにより、いままで他に報告例のない、いがぐり状やサイコロ状の純鉄(Fe)微粒子を、再現性よく作製することを第一の目的としている。そのためには、形状の異なる粒子の成長メカニズム(ミクロな成長条件)を明確にすることが重要である。 ガス中蒸発における微粒子成長の研究は古い歴史をもっているが、原子レベルの凝縮過程と移送中の成長過程を同時に扱うことは非常に難しいとされている。その理由は、両者の生ずる時間が10の4乗以上の差があることが大きな原因である。本研究で扱うGFS過程では移送距離が20cmから70cmと非常に長い点が特徴であり、そのことが様々な形状の粒子を得ることができる理由と考えている。そのため、従来のガス中蒸発と異なり、移送中のガスの流れが粒子のサイズや形状に大きな影響を与えることが考えられる。特に、スパッタ蒸気がスパッタガスにより移送されるときに渦を作ることで、粒子成長を完了させ、た粒子が容器に付着することなく回収できるものと期待される。 24年度は実験とガス流に対する計算機シミュレーションとの対応を明確にし、様々な粒子の作り分け条件を確立することを目指したが、前項で述べたように、残念ながら期待した結果が得られていない。その原因について、シミュレーター「ペガサス」使用方法に問題があることが考えられている。25年度は改めてシミュレーションの信頼性について検討し直して、当初の研究計画を進める予定である。 実験的には粒子の作り分けについて多くの知見を明らかにしているので、期間内に目的の成果を得ることができると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
我々の先行研究におけるガス流に対する計算機シミュレーションによると、ガスの流量を大きく増加することにより、目的とするガス流を生じさせることができ、また鉄粒子の形状制御と作製効率を上げることが可能であると予測していた。ところが、24年度の詳細な実験により、シミュレーション結果に対する信頼性に疑問が生じた。その詳細は前項までに述べた。 そこで、24年度購入を予定していた大容量排気ポンプの導入を見合わせた。25年度のシミュレーションと実験の対応を明確にした後に最適な排気量を有するポンプの導入を考えたい。
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