研究課題/領域番号 |
24560364
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
櫻井 浩 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80251122)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 電場誘起磁化反転 |
研究概要 |
本研究ではFe/MgO磁気トンネル接合界面(Au/Fe/MgOサンドイッチ膜)における磁気コンプトンプロファイルの電場効果および磁場効果を測定し、電場誘起磁化反転に関与する波動関数の対称性を実験的に抽出することを目的とし、①Au/Fe/MgO多層膜の磁気コンプトンプロファイルの電場効果および磁場効果の測定②理論的に指摘されているFe3d電子の磁気量子数|m|=0と|m|=2の対称性に着目し、DV-Xα法理論計算利用した解析を行う。今年度は、Fe/MgO多層膜の磁気コンプトンプロファイルの電場効果および磁場効果を測定の準備を行うために、Au/Fe/MgO サンドイッチ膜(Maruyama et. al., Nature Nanotech. 4, 158 (2009))の作製を行った。電場効果はAu/Fe/MgO サンドイッチ膜におけるFe(001)/MgO(001)界面で生じるとされる(R. Shimabukuro et. al., Physica E42, 1014 (2010))ので、界面の数を増やして電場効果を増強させるため多層膜の作製を行うことを試みたが、単純なAu/Fe/MgO サンドイッチ膜の繰り返しではFe(001)/MgO(001)界面の結晶方位制御を行うことができなかった。Fe(001)/MgO(001)界面の結晶方位制御を行うためには、MgO(001)上Feを積層する必要があるが、Au上ではMgO(001)が配向しないためである。そこで、AuとMgOの間に薄いFe層のバッファーレイヤーを加え、Au/Fe(001)/MgO(001)/Feのシークエンスで多層膜を作製した結果、Fe(001)/MgO(001)界面の結晶方位制御に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実施計画ではFe/MgO磁気トンネル接合界面(Au/Fe/MgOサンドイッチ膜)における電場誘起磁化反転に関与する波動関数の対称性を実験的に抽出するために以下の研究を行う。①DV-Xα法による理論計算利用したFe/MgO磁気トンネル接合界面の電場効果の検討。②Fe/MgO多層膜の磁気コンプトンプロファイルの電場効果・磁場効果の測定③DV-Xα法理論計算と磁気コンプトンプロファイルの電場効果および磁場効果の実験と比較して電場誘起磁化反転に関与する波動関数の対称性を実験的に抽出。平成24年度はDV-Xa法を用いた磁気コンプトンプロファイルの電場効果のシミュレーションと理論的検討、Au/Fe/MgO多層膜、Au/Fe/Al2O3多層膜の試料の作製、極カー効果を利用した電場誘起磁場反転効果評価システムの構築、磁気コンプトンプロファイルの電場磁場効果測定システムの構築などを計画している。このうち、多層膜試料作製はは完了している。今後、極カー効果を利用した電場誘起磁場反転効果評価システムの構築、磁気コンプトンプロファイルの電場磁場効果測定システムの構築を至急進める必要がある。一方、並行してDV-Xa法を用いた理論計算を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
作製した試料の電場誘起磁化反転効果の確認にはMaruyamaらの先行研究に従い、極カー効果測定(既存設備)を利用する。電場印加電源は既存設備を利用する。電場印加電源と極カー効果測定装置を計測制御するシステムを構築するためLabVIEWを購入する。また、制御用の計算機が必要であるので購入する。 磁気コンプトンプロファイル測定装置と試料に対する電場印加電源を計測制御するシステムを開発する。上記で購入したLabVIEWと制御用計算機を用いてシステムを開発する。システムの開発には放射光施設の担当者との打ち合わせが必要でが、すでに研究協力者(櫻井、伊藤(高輝度光科学研究センター))と打ち合わせを開始しており、試験的実験実施のため放射光施設(SPring-8)の申請が採択されている(電場誘起磁化反転に関与する波動関数の対称性を測る:2013A1270)。 さらにDV-Xa法を用いた電場効果を計算する手法を開発する。例えば作製した界面のクラスターモデルの外部にイオンを配置し、マーデリングポテンシャルとして電場効果をとりこむ方法で検討する(Makino et. al., Electron structure of amorphous SiO2 under strong electric field using DV-X alpha, J. NON-CRYST. SOLIDS, 259, 121-126(1999))。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の方針で指摘した通り、作製した試料の電場誘起磁化反転効果を極カー効果測定(既存設備)を利用して測定する。電場印加電源は既存設備を利用するが、電場印加電源と極カー効果測定装置を計測制御するシステムを構築するためLabVIEWが必要であるため購入する(昨年度購入予定で未購入300千円)。また、制御用の計算機が必要であるので購入する(昨年度購入予定で未購入100千円)。なお、評価用に液体ヘリウムが必要であるが、高騰影響も考慮する(600千円)。並行して研究協力者(櫻井、伊藤(高輝度光科学研究センター))との打ち合わせ行う(2回X80千円)。以上合計1160千円を当初予定していた平成25年度予算に加えて使用する予定である。その他は予定通り当初申請した通り平成25年度予算を使用する。
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