研究課題
本研究ではFe/MgO磁気トンネル接合界面(Au/Fe/MgOサンドイッチ膜)における磁気コンプトンプロファイルの電場効果および磁場効果を測定し、電場誘起磁化反転に関与する波動関数の対称性を実験的に抽出することを目的とし、①Au/Fe/MgO多層膜の磁気コンプトンプロファイルの電場効果および磁場効果の測定②理論的に指摘されているFe3d電子の磁気量子数|m|=0と|m|=2の対称性に着目した解析を行うこととした。平成24年度は、Au/Fe(001)/MgO(001)/Feのシークエンスで多層膜を作製し、Fe(001)/MgO(001)界面の結晶方位制御した多層膜の作製に成功した。平成25年度は磁気コンプトンプロファイルの磁場依存性を測定し、スピン選択磁化曲線(SSMH)と軌道選択磁化曲線(OSMH)を求めた。さらに、磁気コンプトンプロファイルの解析から、Fe3d電子の磁気量子数|m|の対称性別SSMHを求めた。平成26年度は、それらの結果を詳細に検討した結果、スピン磁気モーメントと軌道磁気モーメントの磁化反転挙動が異なることを見出した。さらにスピン磁気モーメントと軌道磁気モーメントの磁化反転挙動が異なる原因は、軌道の対称性によって磁化反転特性が異なるためであり、軌道磁気モーメントの磁化反転挙動は磁気量子数|m|=2の対称性に支配され、スピン磁気モーメントの磁化反転挙動は磁気量子数|m|=0,1の対称性に支配されていることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
本研究ではFe/MgO磁気トンネル接合界面(Au/Fe/MgOサンドイッチ膜)における磁気コンプトンプロファイルの電場効果および磁場効果を測定し、電場誘起磁化反転に関与する波動関数の対称性を実験的に抽出することを目的とし、①Au/Fe/MgO多層膜の磁気コンプトンプロファイルの電場効果および磁場効果の測定②理論的に指摘されているFe3d電子の磁気量子数|m|=0と|m|=2の対称性に着目した解析を行うこととした。その結果、平成24年度は、Au/Fe(001)/MgO(001)/Feのシークエンスで多層膜を作製し、Fe(001)/MgO(001)界面の結晶方位制御した多層膜の作製に成功した。平成25年度は磁気コンプトンプロファイルの磁場依存性を測定し、スピン選択磁化曲線(SSMH)と軌道選択磁化曲線(OSMH)を求めた。さらに、磁気コンプトンプロファイルの解析から、Fe3d電子の磁気量子数|m|の対称性別SSMHを求めた。平成26年度は、それらの結果を詳細に検討した結果、スピン磁気モーメントと軌道磁気モーメントの磁化反転挙動が異なることを見出した。さらにスピン磁気モーメントと軌道磁気モーメントの磁化反転挙動が異なる原因は、軌道の対称性によって磁化反転特性が異なるためであり、軌道磁気モーメントの磁化反転挙動は磁気量子数|m|=2の対称性に支配され、スピン磁気モーメントの磁化反転挙動は磁気量子数|m|=0,1の対称性に支配されていることを見出した。したがって、本研究の最終目体である「理論的に指摘されているFe3d電子の磁気量子数|m|=0と|m|=2の対称性に着目した磁化反転挙動の実験的解明」は達成された。
直磁気異方性を有する磁気トンネル接合として実用化されている固体エピタキシーを利用したCoFeB(001)/MgO(001)多層膜についてもSSMH、OSMHを測定したところ、スピン磁気モーメントと軌道磁気モーメントの磁化反転挙動が異なることが見出された。これらの解析を進め、論文執筆の準備をしている。また、スピン磁気モーメントと軌道磁気モーメントの磁化反転挙動が異なり、それが軌道の対称性によって支配されるとすれば、磁気光学効果や磁歪などの磁場依存性に反映されているはずである。すでに磁気カー効果の磁場依存性の波長依存性を実験的に検討した結果、磁気ヒステリシス曲線の形状に波長依存性があり、スピン磁気モーメントと軌道磁気モーメントの磁化反転挙動の違いを反映している可能性がある。これらの結果について引き続き実験的に検討する。
CoFeB/MgO多層膜について、スピン選択磁化曲線および軌道選択磁化曲線を磁気コンプトン散乱を用いて測定した。その結果、垂直磁気異方性を有する磁気トンネル接合膜の磁気スイッチング軌道磁気モーメントが支配していることがあらたにわかり、成果を発表すべく至急論文にまとめるため未使用額が生じた。
成果発表を行うため、論文投稿料、英文校正料として未使用額を充てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (13件) 備考 (1件)
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http://www.st.gunma-u.ac.jp/electron/05.html