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2013 年度 実施状況報告書

炭化ケイ素半導体の酸化誘因欠陥の形成メカニズム解明

研究課題

研究課題/領域番号 24560365
研究機関埼玉大学

研究代表者

土方 泰斗  埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (70322021)

キーワード炭化ケイ素半導体 / 熱酸化 / 酸化界面
研究概要

前年度作製したHfO2/Si(18)O2/SiC構造に対し、二次イオン質量分析法(SIMS)による酸化膜深さ方向分析を分析業者に依頼し、SiCから放出されたSiおよびC格子間原子の検出とその密度分布の測定を試みた。その結果、作製した試料の膜構造は「Si(18)O2/HfO2/Si(18)O/SiC」であることがわかった。すなわち、酸化界面においては酸化とともにSiO分子を放出し、それが膜表面に向かって拡散していく。Si0分子が膜表面に到達すると、気相の酸素と速やかに反応し、SiO2膜を形成することが実験結果から実証された。今回の結果を以て、酸化速度の再現という傍証による立証であったSiC酸化中のSi原子放出現象が、初めて直接観察された。すなわち、今回の成果は、研究代表者らの提案したSiC酸化モデル「Si及びC原子放出モデル」の妥当性を裏付けるものとなった。
次に、一般的な酸素分圧である100kPa(常圧)を選び、SiO2/SiC界面でのSiO2成長を促す酸化条件で試料を作製して酸化膜深さ方向分析を行った。得られた分析結果から、成長速度は桁違いに低下し、SiO2/SiC界面付近での成長が促進されたことが確認された。
以上の実験と平行し、前年度に発見した「酸化によって拡張する積層欠陥」において、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて原子サイズレベルでの断面観察を行った。その結果、前年度ではフランク型積層欠陥(結晶面の挿入あるいは抜けによって生じる積層欠陥)と思われた欠陥は、実はショックレー型積層欠陥(結晶面の滑りによって生じた欠陥)であることが判明した。さらに、この欠陥の周囲にレーザ照射によって形成していた積層欠陥も同じくショックレー型積層欠陥であるが、こちらは基底面転位(BPD)を含まないタイプであり、酸化拡張タイプとは構造が同じでも性質が大きく異なることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前年度では、本研究の目標である「酸化中にSiやC原子が酸化界面から酸化膜に放出されるか」という命題に対し解が得られたという意味では目標は達成されたと言える。
また、昨年度に未解決であった「酸化によって拡張する積層欠陥の種類」についても特定し、当該欠陥に関する新たな知見が得られた。以上より、このような自己評価とした。

今後の研究の推進方策

本年度は、HfO2/SiC基板の常圧酸化実験において、酸化時間を拡大することでSiO2/SiC界面でのSiO2膜の成長を確認する。
また、当初の研究計画に基づき、様々な基板面方位に対する酸化過程をその場観察し、面方位による酸化過程の違いをSiおよびC原子放出モデルによって説明することを試み、SiC酸化メカニズムの更なる理解に努める。
さらに、酸化後アニーリングによるSiおよびC格子間原子の掃き出し効果を実験的に確認することを試みる。すなわち、格子間原子の掃き出し効果が発現した場合、アニーリング後の酸化速度はアニーリング前と比べ増加するはずである。このことを、SiC酸化速度の実時間測定において酸化途中にアニーリング処理を施し確認する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2014 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Si emission into the oxide layer during oxidation of silicon carbide2014

    • 著者名/発表者名
      Yasuto Hijikata, Yurie Akasaka, Shuhei Yagi, and Hiroyuki Yaguchi
    • 雑誌名

      Materials Science Forum

      巻: 778-780 ページ: 553-556

    • DOI

      10.4028/www.scientific.net/MSF.778-780.553

    • 査読あり
  • [学会発表] Si emission into the oxide layer during oxidation of silicon carbide

    • 著者名/発表者名
      Yasuto Hijikata, Yurie Akasaka, Shuhei Yagi, and Hiroyuki Yaguchi
    • 学会等名
      International Conference on SiC and Related Materials (ICSCRM2013)
    • 発表場所
      Seagaia Convention Center (宮崎県宮崎市)
  • [学会発表] SiC-MOSキャパシタの電気特性のガンマ線照射線量依存性

    • 著者名/発表者名
      田中量也, 横関貴史, 藤田奈津子,牧野高紘, 小野田忍, 大島武, 田中雄季, 神取幹郎, 吉江徹, 土方泰斗
    • 学会等名
      第61回応用物理学会春季学術講演会
    • 発表場所
      青山学院大学(神奈川県相模原市)
  • [学会発表] Si及びSiC-MOSFETのI-V特性に対するガンマ線照射の影響

    • 著者名/発表者名
      横関貴史, 田中量也, 藤田奈津子, 牧野高紘, 小野田忍, 大島武, 田中雄季, 神取幹郎, 吉江徹, 土方泰斗
    • 学会等名
      第61回応用物理学会春季学術講演会
    • 発表場所
      青山学院大学(神奈川県相模原市)
  • [学会発表] ワイドギャップ半導体MIS界面の電気的評価

    • 著者名/発表者名
      土方泰斗
    • 学会等名
      SiC及び関連半導体研究 第22回講演会
    • 発表場所
      埼玉会館(埼玉県さいたま市浦和区)
    • 招待講演
  • [学会発表] 堆積と熱酸化による4H-SiC MOS 構造の作製(II)

    • 著者名/発表者名
      大谷 篤志, 八木 修平, 土方 泰斗, 矢口 裕之
    • 学会等名
      SiC及び関連半導体研究 第22回講演会
    • 発表場所
      埼玉会館(埼玉県さいたま市浦和区)
  • [学会発表] Co-60ガンマ線によるSiC-MOSFETのI-V特性の劣化評価

    • 著者名/発表者名
      横関貴史, 田中量也, 藤田奈津子, 牧野高紘, 小野田忍, 大島武, 田中雄季, 神取幹郎, 吉江徹, 土方泰斗
    • 学会等名
      SiC及び関連半導体研究 第22回講演会
    • 発表場所
      埼玉会館(埼玉県さいたま市浦和区)
  • [学会発表] ガンマ線照射後のSiC-MOSキャパシタ及びPiN ダイオードの電気的特性の変化

    • 著者名/発表者名
      田中量也, 横関貴史, 藤田奈津子,岩本直也, 牧野高紘, 小野田忍, 大島武, 田中雄季, 神取幹郎, 吉江徹, 土方泰斗
    • 学会等名
      SiC及び関連半導体研究 第22回講演会
    • 発表場所
      埼玉会館(埼玉県さいたま市浦和区)
  • [学会発表] In-situ分光エリプソメーターによるSiC酸化過程の面方位依存性測定

    • 著者名/発表者名
      後藤大祐, 八木修平, 土方泰斗, 矢口裕之
    • 学会等名
      SiC及び関連半導体研究 第22回講演会
    • 発表場所
      埼玉会館(埼玉県さいたま市浦和区)
  • [備考] 土方泰斗のWeb Page

    • URL

      http://www.opt.ees.saitama-u.ac.jp/~yasuto/index-j.html

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公開日: 2015-05-28  

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