研究課題/領域番号 |
24560365
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
土方 泰斗 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (70322021)
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キーワード | 炭化ケイ素半導体 / 熱酸化 / 酸化界面 |
研究概要 |
前年度作製したHfO2/Si(18)O2/SiC構造に対し、二次イオン質量分析法(SIMS)による酸化膜深さ方向分析を分析業者に依頼し、SiCから放出されたSiおよびC格子間原子の検出とその密度分布の測定を試みた。その結果、作製した試料の膜構造は「Si(18)O2/HfO2/Si(18)O/SiC」であることがわかった。すなわち、酸化界面においては酸化とともにSiO分子を放出し、それが膜表面に向かって拡散していく。Si0分子が膜表面に到達すると、気相の酸素と速やかに反応し、SiO2膜を形成することが実験結果から実証された。今回の結果を以て、酸化速度の再現という傍証による立証であったSiC酸化中のSi原子放出現象が、初めて直接観察された。すなわち、今回の成果は、研究代表者らの提案したSiC酸化モデル「Si及びC原子放出モデル」の妥当性を裏付けるものとなった。 次に、一般的な酸素分圧である100kPa(常圧)を選び、SiO2/SiC界面でのSiO2成長を促す酸化条件で試料を作製して酸化膜深さ方向分析を行った。得られた分析結果から、成長速度は桁違いに低下し、SiO2/SiC界面付近での成長が促進されたことが確認された。 以上の実験と平行し、前年度に発見した「酸化によって拡張する積層欠陥」において、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて原子サイズレベルでの断面観察を行った。その結果、前年度ではフランク型積層欠陥(結晶面の挿入あるいは抜けによって生じる積層欠陥)と思われた欠陥は、実はショックレー型積層欠陥(結晶面の滑りによって生じた欠陥)であることが判明した。さらに、この欠陥の周囲にレーザ照射によって形成していた積層欠陥も同じくショックレー型積層欠陥であるが、こちらは基底面転位(BPD)を含まないタイプであり、酸化拡張タイプとは構造が同じでも性質が大きく異なることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度では、本研究の目標である「酸化中にSiやC原子が酸化界面から酸化膜に放出されるか」という命題に対し解が得られたという意味では目標は達成されたと言える。 また、昨年度に未解決であった「酸化によって拡張する積層欠陥の種類」についても特定し、当該欠陥に関する新たな知見が得られた。以上より、このような自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、HfO2/SiC基板の常圧酸化実験において、酸化時間を拡大することでSiO2/SiC界面でのSiO2膜の成長を確認する。 また、当初の研究計画に基づき、様々な基板面方位に対する酸化過程をその場観察し、面方位による酸化過程の違いをSiおよびC原子放出モデルによって説明することを試み、SiC酸化メカニズムの更なる理解に努める。 さらに、酸化後アニーリングによるSiおよびC格子間原子の掃き出し効果を実験的に確認することを試みる。すなわち、格子間原子の掃き出し効果が発現した場合、アニーリング後の酸化速度はアニーリング前と比べ増加するはずである。このことを、SiC酸化速度の実時間測定において酸化途中にアニーリング処理を施し確認する。
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