研究課題/領域番号 |
24560366
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
山野 芳昭 千葉大学, 教育学部, 教授 (90134791)
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研究分担者 |
飯塚 正明 千葉大学, 教育学部, 教授 (40396669)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 電気・電子材料 / ナノ材料 / 複合材料 / 高分子絶縁材料 / 耐トリーイング性 |
研究概要 |
本研究の目的は、長期間にわたる耐トリーイング性を発揮する絶縁材料を、複合ナノコンポジットを用いて実現することにある。そのため、現在までに本研究実施者によって得られた成果をもとに、複合ナノコンポジット絶縁材料にとして、アゾベンゼン(Ab)系物質と無機のナノ粒子(Al2O3)を低密度ポリエチレンに添加したものについて検討を行った。 6種類のアゾベンゼン(Ab)系物質を用いて、PE複合ナノコンポジトを作製し、ブリードアウトの有無を観測した。その結果、Ab系物質として4'-hydroxyazobenzene-2-carboxylic acid(hc_Ab)を添加した試料は、ブリードアウトせず、材料の電気伝導特性や誘電特性も、Ab添加試料と比較して劣る結果は見いだせなかった。このような結果に基づいて、hc_Abを用いたナノコンポジット絶縁物を作製し、作製時における耐部分放電特性ならびに室温における耐トリーイング性の試験を行った。使用したナノ粒子は平均粒度が約40nmのAl2O3である。 耐部分放電特性については、電圧印加後約1000h後の部分放電の発生数が、(hc_Ab)ナノコンポジット((hc_Ab+Al2O3)試料)の場合、PE試料(無添加試料)と比較すると約30%以下に抑制されることがわかった。 耐トリーイング特性については、(hc_Ab+Al2O3)試料のトリー発生電圧が、無添加試料と比較して、約2~3倍の上昇が見られた。また、トリー潜伏期間(印加電圧一定の状態で、電圧印加からトリー発生までに要する時間)が、(hc_Ab+Al2O3)試料の場合、無添加試料と比較すると100~1000倍程度長くなることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に、本研究の実施計画としてあげた3つの項目、すなわち、(1)”耐トリーイング性評価を行う複合ナノコンポジット(試験候補材料)の組成の決定“、(2)”試験候補材料の基本的電気的特性の評価”、(3)”試験候補材料の室温における耐トリーイング性評価“ について、それぞれ目標とする耐トリーイング特性を実現させることができた。成果としては、今後の発展につながる想定外の結果も得ることができたが、研究の進捗については当初の計画どおりに進んでいるので、「おおむね順調」という評価を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に得られた結果を基にして、平成25,26年度は「1.複合ナノコンポジットの熱的耐久性試験」および「2. 複合ナノコンポジットが耐トリーイング性を発揮する機構の解明」という課題を中心に検討を行う。 平成25年度は以下の計画で研究を実施する。 1.複合ナノコンポジットの熱的耐久性試験; 前年度の室温での試験によって候補として取り上げた複合ナノコンポジット(試験候補材料)について、高温下での時間経過とTIVおよびTDRの関係を求め、それをもとにアレニウスプロットを作成し、RTE(Relative Thermal Endurance Index)を求める。測定手順はIEC60216-5 Ed.3に準拠して行う。 2.複合ナノコンポジットが耐トリーイング性を発揮する機構の解明; 予備的研究の成果を基に進める。予備的研究によって得られた成果によると、耐トリーイング性は、電圧印加から初期トリー発生までの間において顕著に現れる。また、トリー発生電圧以下の印加電圧で添加したアゾベンゼン物質の励起に基づく発光が検出されている。これらの成果を基に、電圧印加からトリー発生に至るまでの発光スペクトルの時間変化を求め、アゾベンゼン物質が耐トリーイング性の向上に果たす役割を明確にしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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