研究実績の概要 |
この研究の目的は、耐トリーイング性を長期間にわたって発揮する絶縁材料を、複合ナノコンポジットを用いて創成することにある。具体的には、複合ナノコンポジット(4hydroxy-Azo-2Carboxylic acid ('hc_Ab')とAl2O3のナノパーティクル('Al')を複合添加したLDPEナノコンポジット)の熱的耐久性試験による実証を行うことである。 87 °C, 92 °Cそして 95 °Cの3つのオーブンに試料を入れて熱的耐久性試験を行った。試験試料の種類は、無添加PE("PE")、'Al'添加PE("PE/Al")、'hc_Ab'添加試料("PE/hc_Ab")そして複合ナノパーティクル試料("PE/(hc_Ab+Al)")である。評価項目は、重量変化、体積抵抗率、誘電正接、UV吸収スペクトルである。試験は14000hまで行った。"PE(hc_Ab+Al)"と"PE/hc_Ab"の重量、体積抵抗率、誘電正接の経時については、"PE"と比較して極めて安定した特性を示した。"PE(hc_Ab+Al)"と"PE/hc_Ab"の間では、重量変化では後者の方が大きな変化率が観測されたが、体積抵抗率と誘電正接では両者に大きな差異は見られなかった。一方"PE/Al"については、それらの特性は無添加PEとほぼ同じで'Al'のみの添加による大幅な寿命向上は観測されなかった。 UV吸収スペクトルに関しては、14000h経過後も'hc_Ab'の代表的な吸収波長である345 nmにおける吸光度で評価する限り、初期値との変化がほとんど見られなかった。 測定の結果を基に相対耐熱指数(RTE)を算出した結果、複合添加のナノコンポジットである"PE/(hc_Ab+Al)"のRTEは、重量変化、体積抵抗率、誘電正接においてもおよそ70となり、"PE"より20程度向上することがわかった。
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