研究課題/領域番号 |
24560368
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
赤堀 誠志 北陸先端科学技術大学院大学, ナノマテリアルテクノロジーセンター, 准教授 (50345667)
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キーワード | InAs / ナノワイヤ / MBE / 選択成長 / スピン |
研究概要 |
平成25年度は前年度に引き続き、まず高アスペクト比ナノワイヤ(NW)形成とex-situ法によるFe系FM成膜を進めた。 NW形成について必要な要素技術は、マスク基板作製と分子線エピタキシー(MBE)選択成長の2点である。マスク基板作製に関しては、従来検討してきた(110)マスク基板と異なる、(211)Bマスク基板を検討した。これは、(211)B上では{111}Bが面内1方向・面外1方向となり、NW方向制御性の向上が見込めるためである。(211)Bマスク基板を用いてMBE選択成長の成長条件依存性を調べたところ、条件範囲は狭いながら従来の(110)マスク基板よりも収率とアスペクト比が改善される成長条件を見出した。また、電界効果トランジスタ(FET)の試作も行い、(110)と同程度のFET動作を確認した。しかしながら、目標とするアスペクト比(~10<)を得られる成長条件の探索には至らなかった。そこで新たな試みとして、ウェットエッチングを利用したNW径の微細化技術を導入し、検討を進めた。その結果、100 nm以下のNW径の実現に到達し、10以上のアスペクト比を得ることに成功した。 ex-situ法によるFe系FM成膜については、所属部署に新たに導入された電子サイクロトロン共鳴(ECR)式スパッタ装置による検討を行った。これは、ECR式スパッタがリフトオフ性に優れているためである。しかしながら、現在までのところ、ECR式スパッタで成膜したCoFeは従来のRFスパッタで成膜したものと比べ保磁力が低く、NWではなく従来の2次元電子系をもちいた場合でも、非局所配置によるスピン蓄積の電気的検出に至っていない。 なお、当初は平成25年度に進める予定だったNW/Fe系強磁性体複合構造形成およびin-situ法によるMnAs系FM成膜については、上記の検討を優先したために未だ着手していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要でも述べたように、平成25年度も前年度に引き続き、高アスペクト比NW形成およびex-situ法によるFe系FM成膜の検討に注力した。高アスペクト比NW形成に関しては、新たな試みとしてウェットエッチングを利用した微細化技術により、一定の成果を収めた。しかしながら、Fe系FM成膜に関しては、所属部署に新規導入されたスパッタ装置による検討を行ったが、未だ不十分であった。また当初は平成25年度に計画していた、NW/Fe系強磁性体複合構造形成やin-situ法によるMnAs系FM成膜に結果的には着手できなかった。しかしながら、高アスペクト比NW形成に関して一定の成果を収めたことと、Fe系FM成膜に関して従来技術(高周波スパッタ)の利用が可能なことを踏まえると、NW/Fe系強磁性体複合構造形成に関しては、すぐに取り掛かれる準備ができている。また、in-situ法によるMnAs系FM成膜に関しても、必要なMn材料を充填したセルは既にMBE装置に設置されており、すぐに取り掛かれる準備ができている。したがって、以上を総合し、現在までの達成度としてはやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの達成度でも述べたように、当初計画では平成25年度に進める予定であった、ex-situ法によるNW/Fe系強磁性体複合構造形成およびin-situ法によるMnAs系FM成膜に速やかに着手する。いずれにおいても、既にすぐに取り掛かれる準備ができているため、さしあたって障害はないと考えている。またNW/Fe系強磁性体複合構造形成に関しては、遅れを取り戻すべく、同時に電気的計測を進めてスピン伝導の評価を行っていく。MnAs系FM成膜に関しては、遅れを取り戻すべく、薄膜成長と選択成長の検討を同時に進め、InAs NWコアとMnAsシェルの複合構造形成にできるだけ早く展開できるように努力する。MnAs微細加工も課題となるが、上記のうち薄膜成長試料を利用して、主に希釈酸によるウェットエッチング技術を用いて速やかに検討を進める。この他、MBE成長・デバイスプロセス・電気的計測の全ての項目において最適化を進め、最終的にはex-situ法・in-situ法の相互比較可能となるように、スピン注入デバイスの形成と計測を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、その他として計上している学会等の参加費が多くかからなかったことに加え、基板・MBE用原料・レジスト材料などの消耗品費が多くかからなかったためである。 次年度使用額は全体の10%以下であり、使用計画に大きな変更は必要でないと考えている。達成度の遅れを取り戻すべく、特に複数の半導体デバイスプロセスが必要となるex-situ法によるNW/Fe系強磁性体複合構造形成とMnAs微細加工に関して、効率的に研究が進捗するよう、関連する消耗品費として次年度使用額を優先的に使用する予定である。
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