研究課題
最終年度はGaN表面上へのグラフェン形成に注力した。これまではSiC上に昇華法により堆積したグラフェンを、金属膜を蒸着して剥離し、GaN表面に転写する手法を取っていた。しかし、転写後に金属膜を溶液で除去する際に、GaN表面が疎水性のためグラフェン膜も溶液中に流れ出てしまうという問題点があった。今回はグラフェン塊を購入し、粉砕後、揮発性の高い溶液にグラフェンを分散し、GaN表面に塗布する手法を取った。グラフェン塊としてHOPG(高配向グラファイト)、及びキッシュグラファイトの使用を試みた。大まかにこれらのグラフェン塊を機械的に砕き、テトラヒドロフラン(THF)溶液中で超音波処理により更なる粉砕を行った。超音波処理は最長150時間以上行ったが、10時間程度で粉砕された粒子の細かさは飽和する傾向がみられた。遠心分離により上澄み液を採取し、ラマン測定を行った結果、大多数は3層上のグラファイトであるが、ごく一部に3層以下のグラフェンが存在することが分かった。この上澄み液をGaN表面上に滴下し、THFを蒸発させ、Ni電極を蒸着した。このショットキー電極の2次元評価を行うと、界面に介在したグラファイト、およびグラフェンの形状を光電流の像として確認することができた。しかし、グラフェンの存在確率が小さいため、電気的特性との対応は明確に出来なかった。本研究のもう一つの軸である電極界面の2次元評価においては、Au/Ni/n-GaN構造の熱劣化過程を評価し、その結果がレター誌(Applied Physics Express)に採択された。また、この手法はSiC上に形成した電極にも有効であり、ワイドギャップ半導体一般の評価に有望であることを示した。
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