研究課題
基盤研究(C)
新規反応管の開発とその効果の検証既存石英反応管の改造により、触媒温度を基板温度とは独立に制御できる触媒内蔵型石英反応管を2種類作製した。その効果を、窒素(N2)キャリアガスを用いて600℃で成長させたGaN膜中の炭素(C)混入量(SIMSにより測定)から検討した。すなわち、このような条件で成長させた通常のGaN膜中には1E20cm-3程度のCが混入するが、もしアンモニア(NH3)が効果的に分解されてHやH2が生成されておれば、膜中へのC混入量が低減されることが期待される。(1) タイプI: 触媒-基板間距離が70~200mmの範囲に可変で、Pt触媒を外部から500~900℃に加熱できる触媒傍熱型の反応管を作製した。Pt触媒-基板間距離が最短の70mm、Pt触媒加熱温度900℃、反応管内ガス圧70Torrの条件でも、NH3の予熱効果による結晶粒の大型化は確認できたが、明確なC混入量低減効果はみられなかった。この結果から、NH3分解種の活性状態での移動距離は70mm以下であることが推測される。(2) タイプII: タイプIでの検討結果を受けて、Pt触媒-基板間距離がさらに低減できる構造の反応管の作製を検討した。そのために、Pt触媒は通電加熱方式とし、さらに、Pt触媒に触れたNH3を基板面に垂直に吹き付ける新しい構造を採用した。その結果、Pt触媒加熱電力500W、反応管内ガス圧150Torrの条件で、 GaN成長膜中のC混入量が5E19 cm-3まで低減できることを見出した。また、結晶粒の大型化も確認できた。ただし、問題点として、原料ガス同士の気相中反応による紛体状生成物の発生がみられ、原料ガスの水平方向流と垂直方向流の混合方式、混合条件に改善の必要性があることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
既存石英反応管の改造により2種類の反応管を作製し、特に、タイプ2の反応管においてNH3分解効果がみられたことは評価できると思う。その効果をさらに高める必要があるが、そのためには、NH3流量の最適化はもちろん、分解効果を高めるための触媒用Pt線の巻き方、配置方法の改善、通電加熱電力の最適化等の検討が必要である。これらの最適化が実現できれば、新しい反応管として特許出願を行いたいと考えている。一方、NH3の分解種の生成は原料ガスの反応性を著しく高めることであり、原料ガスの気相反応を促進することになり、結晶の成長反応の制御がより難しくなることを意味している。そのため、水平方向流と垂直方向流の原料ガスの混合方式と混合条件についても改善すべき課題がある。
1.タイプII反応管における成長条件の最適化: 二元系半導体GaN、InNの成長におけるNH3分解効果の増大を実現するために、(1)触媒用Pt線の巻き方、配置方法の改善、(2)NH3流量、通電加熱電力の最適化、(3)水平方向流、垂直方向流原料ガスのバランスの最適化、について検討する。2.三元系半導体InGaN、InAlNのMOCVD成長におけるNH3分解効果の確認: In-rich InGaN, InAlN の低温(600℃)成長において、NH3分解触媒の導入により、活性窒素不足に基づく窒素空孔関連欠陥の大幅低減を図り、成長結晶の高品質化を図る。3.NH3原料使用量低減効果の確認: NH3利用率の大幅増大によるNH3使用量の大幅低減について検討する。4. 反応管構造のさらなる改良: 上記1~3の検討を基に、タイプII反応管を改良した新規反応管の開発を行う。
1. 物品費(880,000円): 有機金属等原料ガス(500,000円)、触媒金属・石英ガラス部材(130,000円)、サファイア等基板類(250,000円)2. 旅費(450,000円):窒化物半導体国際会議ICNS-10(米国, 300,000円)、国内学会(秋季及び春季応用物理学会150,000円)3. その他(170,000円): GaN成長膜忠のC分析(SIMS分析の外部委託170,000円)
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 81 ページ: 044704
2012 DOI10.1143/JPSJ.81.044704