研究課題/領域番号 |
24560372
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
植田 研二 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10393737)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ダイヤモンド半導体 / ハーフメタル / ホイスラー合金 / スピントランジスタ / スピン注入 / ショットキー接合 |
研究概要 |
本研究では、スピントランジスタ実現の為の最重要課題である、強磁性体から半導体への高効率スピン注入に関して、長いスピン拡散長等の優れた特徴を持つ「ダイヤモンド半導体」と、大きなスピン分極率を有する「強磁性ハーフメタル」を組合せ、その界面特性を精密制御する事により実現し、ダイヤモンドスピントランジスタを創出する事を目的としている。その為には、高品質界面を有する強磁性ハーフメタル/ダイヤモンド半導体接合の作製が必須となる。 今年度の主たる成果としては、強磁性ハーフメタルCo2MnSi (CMS)がダイヤモンド半導体上にエピタキシャル成長する事及び、~400℃以下の低温でのCMSの結晶成長が良質な界面形成の為の鍵となる事を見出した。以下にその内容について記載する。 イオンビームスパッタ(IBS)法によりダイヤモンド上へのCMS薄膜の作製を試みた所、X線回折測定から、600℃付近の狭い成長温度でのみCMSがエピタキシャル成長することが分かった。しかし、このCMS薄膜の飽和磁化は400 emu/cc程度と小さく、またダイヤモンド/CMS接合のI-V測定で整流性が見られなかった事から、高温成長によりダイヤモンド/CMS界面で反応や拡散等が生じていると考えた。高温での界面反応、拡散等を防ぐためにイオンビームアシストスパッタ(IBAS)法を用い、より低温での成長を試みた。IBAS法により、400~500℃の成長温度でもダイヤモンド上にCMS(220)配向膜が作製でき、低成長温度化が可能である事が分かった。これらのCMS薄膜の飽和磁化は1100 emu/ccとなり、バルク値と同等の値が得られた。また、この薄膜を用いて作製したCMS/ダイヤモンド接合のI-V特性では明瞭な整流性が得られ、IBAS法を用いた低温成長により、CMS/ダイヤモンド界面特性が良くなる傾向が見られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、スピントランジスタ実現の為の最重要課題である、強磁性体から半導体への高効率スピン注入に関して、ダイヤモンド半導体と強磁性ハーフメタル」を組合せ、その界面を精密制御する事により実現し、ダイヤモンドスピントランジスタを創出する事を目的としている。 研究は3段階で進める計画となっており、本年度の主目標は、強磁性ハーフメタル/ダイヤモンド積層構造を作製し、界面の高品質化を行う事とした。本年度の主要な結果として、強磁性ハーフメタルCo2MnSiをダイヤモンド上にエピタキシャル成長し、界面の急峻なCo2MnSi/ダイヤモンド積層構造を用いたショットキー接合の作製に成功している事から本年度の目標は達成されたと見なせる。
|
今後の研究の推進方策 |
上述の様に、急峻な界面特性を有する強磁性ハーフメタルCo2MnSi/ダイヤモンドショットキー接合の作製に成功した為、この積層構造を用いてスピン注入を試みる。また、作製が容易なNiやCo等の通常の強磁性体とダイヤモンドとの接合も用い、スピン注入の高効率化に関して比較検討を行う。これらの実験で得られた知見を参考に、強磁性ホイスラーハーフメタル/ダイヤモンド接合界面への絶縁層や高濃度ドープ層の挿入についても検討し、その有効性について確認を行う。 また、NiやCo等の通常の強磁性体(P= ~0.5)と強磁性ハーフメタル(P= ~1)を用いた場合の結果を比較から、強磁性体のスピン分極率がスピン注入の高効率化に現実的にどの程度の有効性を持つかについても検討を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度の時点で本研究に必要な主要設備(有機金属ドーピングシステム)の購入は済んでいる。その為、次年度は研究を進めていく為に欠かす事の出来ないランニングコスト、即ち、ダイヤモンド半導体や強磁性体の結晶成長の為の基板、ガス、真空部品及び研究成果発表の為の旅費、研究成果出版の為の出版費、を主な使用用途として研究費を用いる予定である。
|