研究課題/領域番号 |
24560375
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
浅田 裕法 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (70201887)
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研究分担者 |
仙波 伸也 北九州工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (40342555)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スピンフィルタ / 強磁性半導体 |
研究概要 |
今年度はEuSの保磁力差を得るための成長条件や手法の検討、および、InP基板上へのEuSの成長を中心に研究を行った。保磁力差を得るための手法として、MnTeとの積層を試みたが、ヘテロ成長が困難であった。そこで、新た手法としてEuTeが反強磁性であることに着目し、Teを供給することでEu(S,Te)の作製を行い、磁気特性について検討した。その結果、BaF2(111)基板上にTe濃度0.19 (x線ピークのシフト量より算出)までのEu(S,Te)のエピタキシャル膜の成長に成功した。キュリー温度は約10 Kと低くなったものの強磁性を示し、保磁力はEuS(20 Oe)に比べ、110 Oeと増加しており、保磁力差が得られた。 InP(100)基板上へのEuS膜の成長については、サーマルクリーニングや成長温度について検討を行った。成長温度を上げるにつれ多結晶から単結晶成長したものの(111)面の成長が優先であり、かつ、AFMによる観察においては表面に突起がみられた。そこで、バッファー層についての検討を行ったところ、Teをバッファ層とすることで(100)面のエピタキシャル膜を得ることができた。また、InP(100)基板についてもEu(S,Te)の作製を試みた。その結果、(100)面のエピタキシャル膜の成長に成功しており、(100)基板方向への成長に有効であることがわかった。しかしながら、表面に突起がみられることから結晶性のさらなる改善が必要である。また、InP基板上へのGeTe/EuS多層膜の作製を行っており、今後、磁気特性について検討を行う。電気伝導特性の評価については、現在、試料作製を行っており、プロセス条件の構築を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
BaF2(111)基板においてEu(S,Te)を成長することで保磁力差を得ることに成功した。また、バッファ層の導入やTe供給によりInP(100)基板においてエピタキシャル膜が得られるなど、EuSならびにEu(S,Te) の成長条件について多くの知見が得られた。しかしながら、積層膜の成長は行っているものの、プロセス条件の検討のためとSQUIDによる磁化測定ができなかったことから、積層構造における電気伝導特性や磁気特性の解明が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、EuS障壁層の成長条件のさらなる検討およびEuS(またはEu(S,Te))/GeTe/EuS(またはEu(S,Te))構造の作製と磁気特性、電気伝導特性評価および磁気輸送特性の評価を行う。 (1) EuSおよび Eu(S,Te)の成長 H24年度の結果から保磁力差を得るのにEu(S,Te)が有望であることがわかった。しかしながら、劈開性を持ち機械的強度に劣るBaF2(111)基板に比べ、微細加工が容易なInP(100)基板上にトンネル接合素子を作製するにはよりEuS薄膜の結晶性の向上が必要である。そこで、新たなバッファー層(GeTe、ZnTe)についての検討など、成長条件をより詳細に詰めることで、結晶性、特に表面平坦性の向上を図る。また、InP(100)基板上でのEuSの成長において(111)面が優先であったことを考慮し、InP(111)基板への成長についても試みる。 (2) 二重障壁構造の作製と磁気および電気伝導特性評価 EuS/GeTe/EuS構造について層間結合力について調べるとともに電気伝導特性について検討する。このとき、EuSをEu(S,Te)にした積層膜についても作製を行う。井戸幅に加え、障壁層の厚さについても検討する。これにより、積層膜において磁化の反平行状態の実現を目指す。このとき、積層膜における作製条件をフィードバックさせながら、適宜、単層膜の作製条件の再検討を行う。以上の検討から、磁化制御がなされた素子を作製し、磁気輸送特性についての評価を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
液体Heの問題からH24年度後半にSQUIDによる磁化測定が行えなかった。このため、今年度、行う予定である。
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