研究課題/領域番号 |
24560379
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
野見山 輝明 鹿児島大学, 理工学研究科, 助教 (60274859)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光蓄電池 / 太陽光発電 / 蓄電地 / 多孔膜 / 酸化物半導体 / 導電性高分子 / イオンドーピング / ナノ複合体 |
研究概要 |
本研究の最終目標は「蓄電機能を持つ太陽電池:光蓄電池」の開発である。本課題ではp型半導体的性質を持ち,光によって陰イオンを脱離して光蓄電するp型光蓄電極の開発に取り組んできた。その電極材料として銅酸化物多孔膜と導電性高分子の複合膜を用いている。平成24年度は,1) Cu2O多孔膜の形成技術の確立と2) Cu2Oによってイオンを吸蔵する高分子材料の探索を目的とした。 1) Cu2O多孔膜の形成技術の確立:Cu2O多孔膜は,Cu2O粉末が分散したペーストの塗布膜を焼成して作製することとした。市販のCu2O粉末を用いてペースト分散媒や焼成条件を変化させて最適な作製条件を探った。その結果,ペーストの分散媒は水のみで,空気中でホットプレートを用いて400度で焼成することで,基板から剥離しない電気化学的に安定なp型の銅酸化物の膜を得ることができた。得られた膜はEDX等の組成分析からCu1.7Oであり,更にCu2OとCuO由来の光学的吸収が見られることから,Cu2Oから局所的に酸化が進んだ状態の膜になっていることがわかった。このように安定な多孔膜が得られたが,多孔度の測定や調整までは至らなかった。 2) Cu2Oによってイオンを吸蔵する高分子材料の探索:先の1にて得られた多孔膜をベースにして,種々の導電性高分子を電着し,光電気化学的特性を評価した。その結果,ポリピロールと複合化したときに光による陰イオン(過塩素酸イオン)の脱離と思われる電位変化が見られた。 このように平成24年度内に,銅酸化物多孔膜を形成する技術を得て,試験した中ではポリピロールとの複合化によりp型光蓄電池が得られることがわかった。しかしながら,ポリピロールの電着条件と複合膜の膜厚の相関については十分なデータが得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の2つの研究の目的に対して 1) Cu2O多孔膜の形成技術の確立については,溶液中で安定にp型半導体的な振る舞いの1μm程度粒径からなる銅酸化物多孔膜が得られ,その組成もほぼわかっており,目的の8割は達成できた。未達となったのは,得られた膜の多孔度の調整である。これについては,すでに粒径30 nm程度のCu2Oペーストを入手し,評価にとりかかっている。 2) Cu2Oによってイオンを吸蔵する高分子材料の探索についても,ポリピロールとの複合化によりp型光蓄電池が得られることが示唆されており,探索についてはほぼ終えた状態である。未達となったのはポリピロールの電着条件と複合膜の膜厚の相関についてである。 これらの結果より,目的の8割り以上は達成されたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,まず銅酸化物多孔膜ーポリピロール複合膜の拡散反射スペクトルから,陰イオンのドープ量を定量し,光によりドープが起こっていることを明らかにする予定である。その後に前年度の積み残しである膜の多孔度の調整とポリピロールの電着条件と複合膜の膜厚の変化を明らかにする。 具体的には,H21-23基盤Cでの成果を生かして「Cu2O-高分子複合電極の高効率化」に取り組む。まず 1) 励起層と蓄電層の膜厚を変化させたCu2O-高分子複合膜の光蓄電性の評価,2) 各層厚を制御した複合膜の光蓄電性を評価する。この結果と先に行ったCu2O-高分子複合膜の光学的測定によるイオン吸蔵量の測定データを統合して,光蓄電反応における光電変換から蓄電 /放電までの物質収支を計算し,光蓄電量子効率が一番高くなるように各膜厚や電解質種,濃度等を最適化する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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